最終更新日:2007年1月28日
『食品の裏側』

 『食品の裏側』
  安部司(あべ・つかさ)著
  東洋経済新報社刊 2005.11 発行
  価格:\1,470 B6判 / 244p
  ISBN:9784492222669

気になる本
2005.12.29 / No.104
■開発側が書いた 裏に隠された怖い話

 食品添加物商社に就職した著者は、「日本一の添加物屋になってやる」という“志”を持つ。朝4時に起きてカマボコ屋で仕事をしたりして、現場をよく知る「歩く添加物辞典」「食品添加物の神様」とまで言われるようになる。「困ったときの安部頼み」ともいわれ、添加物の危険性など頭になく、添加物を使えば簡単に安くできると「悪魔のささやき」でもって職人の仕事をだめにしていく。しかし、スーパーの特売用に開発したミートボールを3歳の娘が夕食に食べるのを見て頭を抱える。そのミートボールは、どろどろの屑肉を、30種類もの添加物で仕上げたものだった。怖くて娘には食べさせられない。家族も消費者だったと思い至り、翌日、著者は退職することになる。

 著者は、添加物を使うことで、屑レンコンが真っ白でしゃきっとしたレンコンに化けるといった、添加物まみれの裏側をみせ、「なぜ、安いのか考えろ」と問いかける。安いのには訳がある。食品パックの裏の表示を見て、台所にないものが添加物と知り、その数の少ないものを求めるようにとアドバイスする。しかし、「一括表示」という隠し技がある。数種類の同じような添加物は一括して「調味料(アミノ酸等)」などと表示できるのだ。その上、現実的な対応についてもページを割いている。

 末尾の「加工食品のウソ・ごまかしを見抜く「安部式」添加物分類表」が簡便にまとめてあっていい。ほとんどがメーカーの都合で使われていることがよく判る。添加物の毒性についても、単独試験であって、複数の添加物摂取による試験がなされていない点も指摘している。

 文章は平易で、化学の知識がなくても、十分に理解できる。1時間半あれば完読。開発の裏も知る立場からの本は貴重である。一読の価値あり。

  キャッチコピーは、
   廃棄寸前のクズ肉も30種類の「白い粉」でミートボールに甦る。コーヒーフレッシュの中身は水と油と「添加物」だけ…。食品添加物の元トップセールスマンが明かす、食品製造の舞台裏。知れば怖くて食べられない!

 ・参考:農業情報研究所, 2005-12-22