最終更新日:2007年1月28日
『明日をください −アスベスト公害と患者・家族の記録』

 『明日をください
  −アスベスト公害と患者・家族の記録』
  今井 明写真・文
 『明日をください』出版委員会編集
  アットワークス刊 2006.7初版
  価格:¥1,500+税 B5判 / 108p
  ISBN:9784939042201

気になる本
2006.11.25 / No.372
■アスベスト禍は終わっていない

 2005年6月29日、突如、クボタが同社社員や関係会社社員が中皮種や肺がんで死亡していたと発表したことで、日本中が「アスベスト」や「中皮種」を知ることになった。しかし、アスベスト禍は突然に起きた出来事ではなかった。アスベストを吸い込んでから発症するまで数十年、長い場合には30年以上がかかるというこの病気は、アスベストが野放図に使われてきた結果、多くの患者を生んでいた。そして、その多くがアスベスト禍であるともわからず“隠されて”いた。知人の一人は、1970年ごろ、建築現場のアルバイトが原因で、中皮腫の前兆といわれている胸膜肥厚の認定を受けているが、多くの労働者やアルバイトが、それとも知らずに発症を待っているに違いないと、医者に言われたという。

 神奈川県では10数年前から、米軍横須賀基地や住友重工業浦賀造船所などで働き中皮腫を患った労働者の掘り起しがあり、本人や遺族が国や住友重工を相手取って損害賠償を求める裁判が闘われていた。その原告の何人かは裁判中に亡くなっている。フリーのカメラマンの今井明さんは、中皮腫患者と家族を取材し撮り続けてきた。

 このほど、その写真集『明日をください−アスベスト公害と患者・家族の記録』が発刊された。今井さんは、「孤立・分散している一人一人の被害者がつながり一つの思いの下にという意味で「明日をください!」というタイトル」が付けられれたという。「静かな時限爆弾」アスベスト禍は、まだ終わっていない。始まったばかりかもしれない。誰もが、先の知人のようにいつ中皮腫を発症するかはわからない。他人事ではないのがアスベスト禍でもある。今井さんは、「被害の現場が突き付ける重い現実にたじろぐ方がいるかもしれません。でも、そこから決して目を背けないでもらいたいのです」ともいう。

 ・アスベストセンター

 ・毎日新聞, 2006-11-25
  ひと:今井明さん アスベスト被害者を撮り続ける写真家


 『明日をください
  −アスベスト公害と患者・家族の記録』

目 次

      労働災害からアスベスト公害
  第1章 国を相手にアスベスト訴訟
      米海軍横須賀基地石綿じん肺訴訟
  第2章 造船と基地の街・横須賀のアスベスト
  第3章 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会
  第4章 証言を始めたアスベスト被害者
  第5章 証言●クボタ・ショック
  第6章 クボタ・ショックから石綿健康被害救済新法
  第7章 アスベストQ&A

  連絡先 社団法人 神奈川労災職業病センター
   TEL:045-573-4289 FAX:045-575-1948


 『明日をください!』の著者の今井明さんはフリーのカメラマンとして住民運動、市民運動、労働現場などの写真を撮ってきた。真面目が服を着て歩いているかのような人でもある。そうだからこそ、黙って通り過ぎることが出来なかったのだろう。彼は「この本を是非、買って、読んで、そしてあなたの家族に、あなたの親しい友人に勧めてください」とも呼びかけている。ぜひ、1冊どうぞ。