太平洋に点在するマーシャル諸島は冷戦期に米国の実験場となり、67回の核実験が行われた。1954年3月、マーシャル諸島北西部にあるビキニ環礁で米国の水爆実験を行われた。この水爆実験は「第五福竜丸事件」としても知られているが、広島の1千倍に相当する15メガトンの「ブラボー」の死の灰は、ロンゲラップ島の人々に降りかかった。公式には「偶然に風向きが変化」したということにされてているが、その結果、風下になったロンゲラップ島の人々の健康を害し、多くの人ががんなどで亡くなっている。
『ニュークリア・サベージ 死の灰をあびせられて』は、若いころにロンゲラップの人びとの救援活動に従事したホロヴィッツ監督の回想と、ロンゲラップの人びとの証言、被害を伝えるニュース映像、植民地化されたマーシャル諸島の歴史を軸に、戦うことをやめないマーシャル諸島の人びとを描いている。
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アフリカの数少ない遺伝子組み換え(GM)作物栽培国であったブルキナファソは2016年、モンサントの害虫抵抗性GMワタの栽培をやめ、従来の品種に戻した。こうした国はまだまだ数少ないが、EU加盟国のルーマニアもそうした国の一つだ。EU加盟直前のルーマニアは2006年、それまで数十万ヘクタールで栽培していた遺伝子組み換え(GM)大豆の生産を止めた。『ユーターン』は、このルーマニアのGM大豆からGMでない大豆への転換=「ユーターン」を、中止賛成派と反対派の双方のインタビューを交え描き出している。
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戦後の高度経済成長は、耕運機やトラクターなどの農耕用機械が広くいきわたった結果、千年以上つづいてきたであろう、牛や馬を使って耕運する馬耕・牛耕は、わずか数十年で廃れた。同時に林道整備と作業の機械化により、馬を使って山から木を運び出す馬搬(ばはん)も廃れた。馬搬の馬方(うまかた)は、もはや全国に数名を残すのみという。岩手県にはわずか二人。遠野の馬方の見方芳勝さん(74歳)と、弟子の岩間敬さん(38歳)の二人に焦点を当てたドキュメンタリーが完成し、この3月公開された。
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『バナナの逆襲』の試写を観た。妙な既視感が漂う。「あったこと」を「なかったこと」にしようと画策する多国籍企業ドールの姿は、近くは『美味しんぼ』の「鼻血騒動」に重なる。それはまた、キャスター降板が相次ぐ日本のマスコミの姿とも重なる。「なかったこと」したい勢力は、場所や時代を超えて跋扈している。しかし、あきらめずに戦い、勝利を得た弁護士や監督に希望を見る。
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2007年ごろから『いのちの食べ方』や『キング・コーン』などの「食」をテーマとする“告発型”の作品が公開され、ブームとなった。山形県出身の渡辺智史監督は、こうした作品に違和感を覚えたという。そんなとき出会い感動したのが、故郷の在来野菜に光をあてた『どこかの畑の片すみで』だった。
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「森は海の恋人」とは言い得て妙だが、海によって生かされているかのように見える海辺の暮らしが、実は森にその大元があったことを一言で言い表している。アジア太平洋資料センター(PARC)の新作ビデオ『海と森と里と つながりのなかに生きる』は、この一言を、その背後にある戦後の農業政策と林業政策の破たんと、それと闘う人たちの証言で多面的に描き出している。
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このほど山形在来作物研究会の編集による『どこかの畑の片すみで −在来作物はやまがたの文化財−』が発刊された。これは、同研究会のメンバーが2005年から地元紙の山形新聞に掲載してきた「やまがたの在来作物」をまとめたもの。初めに「在来作物のお話」と題して在来作物の多面性を解説している。新聞に掲載された記事のほか、“根ほり葉ほり探し”た130種近い山形の在来作物リストと分布地図などがまとめられている。
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マイケル・ムーアの新作『シッコ SiCKO』が8月25日、一般公開された。“医療先進国”であるはずの米国で、その先進医療を受けられなかった911の消防士らはキューバに向かい、無料で治療を受ける。なぜキューバなのか。キューバは“後進国”ではなかったのか。この疑問を解き明かした『世界がキューバ医療を手本にするわけ』がこのほど出版された。なぜマイケル・ムーアはキューバを目指したのか。ひとつの回答がここにある。
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1953年、今では中学生でも知っているDNAの構造が二重ラセンであることが、若き研究者のワトソンとクリックによって“発見”される。著者は、このDNAがなぜ「生命」を規定しているかを説く。「生命」とは自らの複製を作り出す能力(自己複製)を持つシステムだとする。著者の若いころのニューヨークとボストンでの研究生活を重ね合わせ、行きつ戻りつ、このDNAの二重ラセン構造の発見の光と影をたどり、なぜそれが自己複製を可能にしているかを俯瞰し、整然とした秩序体系としてのDNAシステムをみせる。しかし、この本の本当の価値はこの後にある。
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著者の岩崎さんは、長年、雲仙のふもとで有機農業を続けてきた生産者。忙しい農作業の合間に、毎年、何十種類と在来種や固定種のタネを自家採種している。この新著では、こうした岩崎さんの自家採種の品種を中心に54種類(巻末の索引では134種類)の野菜を取り上げ、栽培の仕方と食べ方をわかりやすく解説している。
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2005年年6月29日、突如、クボタが同社社員や関係会社社員が中皮種や肺がんで死亡していたと発表したことで、日本中が「アスベスト」や「中皮種」を知ることになった。しかし、アスベスト禍は突然に起きた出来事ではなかった。
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長野県の伊那谷を中心に30年以上野生動物を追ってきた写真家の宮崎学さんは、「騒音も人も恐れない新生代のツキノワグマが、毎年誕生しながら、現代の自然界に着実に定着し、その数をふやしている」と、著書『ツキノワグマ』で、クマとの接し方に警鐘を鳴らしている。
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本書『ノンコンプライアンス・レコード』は、米国のパブリックシチズン(代表ラルフ・ネイダー)が情報公開法を使って公開させた食肉加工施設における違反記録(ノンコンプライアンス・レコード)のうち、副題にもあるように日本向けの施設に限定し、紙智子議員事務所が訳出、編集したものである。
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秋、列車が東北へ入ると車窓からは、刈り取りの終わった田んぼに何本も並んでいる1本立ちの稲架(はざ、はさ)を見ることができる。85年から10年ほど、仕事の関係で秋田、青森、岩手へと通っていた。その都度、この1本立ちの稲架が気になっていた。
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ファーストフードの国である米国は、一方では有機農業も盛んであり、需要も急増している“不思議な”国でもある。「食育」でも先駆的な取り組み、実践が行われてもいる。日本の「食育」のに多くのヒント、示唆を与える、米国での実践の記録がこの6月始めに、『食育菜園』として出版された。
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60年代高度経済成長に伴い、かつての農的生活の基盤は一挙に崩壊した。農具のみならず、生活のあらゆる面で、それまで営々と引き継がれてきた手わざや生活用具から衣類にいたるまでが様変わりした。そして、そのほとんどが途切れてしまった。
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食品添加物商社に就職した著者は、「日本一の添加物屋になってやる」という“志”を持つ。朝4時に起きてカマボコ屋で仕事をしたりして、現場をよく知る「歩く添加物辞典」「食品添加物の神様」とまで言われるようになる。
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稲垣栄洋著・三上修イラストの前著『身近な雑草のゆかいな生き方』に続くコンビの2作目である。キャベツ、タマネギ、ゴボウ、トマトなど44種類の野菜を取り上げ、それぞれの知られざる野菜としての生き方を論じている。
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『もう牛を食べても大丈夫か』(文春新書)の著者の福岡伸一さんが、狂牛病の原因はほんとうにプリオンなのか、と疑問を呈した新著を発刊された。もし、原因が非常に微細で未知のウイルスであったら、という仮定に立ってプリオン原因説の妥当性を検証している。
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