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■全般
GM小麦がヒトの遺伝子を沈黙させる可能性
このほどNZの科学者が、豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)が開発中の遺伝子組み換え小麦について、特定の小麦の遺伝子を沈黙させる組み込み遺伝子が、ヒトの遺伝子も沈黙させる可能性があるとの懸念を表明した。この問題を発見したハイネマン教授は、この遺伝子組み換え小麦について厳しい長期試験を行う必要があるとしている。[1]
豪州では干ばつ耐性の遺伝子組み換え小麦の試験栽培が始まっている。10年8月には豪州最大の小麦種苗企業に、干ばつ・耐病性GM小麦開発を目的にモンサントが資本参加している。日本の輸入小麦6百万トンの22%を豪州から輸入している。米国から54%、カナダから24%を輸入している。
日本の3大小麦輸入先である米加豪3ヵ国の小麦生産者団体は09年5月、共同声明で遺伝子組み換え小麦生産推進を表明している。日本を含む世界の消費者の「GM小麦はいらない」という反対の声が、04年のモンサントの除草剤耐性GM小麦の商業栽培断念をもたらしている。
ETC Group:[新レポート]進む種子の寡占体制
ETCグループは3月7日、種子の寡占化に関する新しい分析レポートを公表した。モンサントなど6大種子企業は、商業的種子の60%、農薬の76%、研究開発費の76%を占めると分析している。
3大種子企業(モンサント、デュポン、シンジェンタ)のシェアは、1996年の22%から、2011年の53.4%(売上高約226億ドル)へと約2.5倍にアップ。
3大種子企業(モンサント、デュポン、シンジェンタ)は、1982年から2007年の間の栽培作物に関する米国特許のおおよそ4分3を占め、2007年から201年に6大種子企業は、育種とGM技術に、毎年22億ドルを支出した。
3大農薬企業(シンジェンタ、バイエル、BASF)の農薬シェアは、1996年の33%から、2011年の52.5%へと約1.6倍にアップ。76%を占める6大企業の売上高は約335億ドルに達している。
- Gene Giants Seek "Philanthrogopoly" (ETC 2013-03-07)
住民投票でGM禁止へ
10月6日に米国大統領選挙に合わせて実施された住民投票で、米国ワシントン州サンファン郡では、61%の賛成を得て、研究を除き、微生物を含む遺伝子組み換え生物の栽培、飼育の罰則付き禁止(3回の違反で5千ドルの罰金と1年の懲役)が成立した。
除草剤使用量を増大させるGM作物
遺伝子組み換え作物の神話がまた一つ崩れた。除草剤耐性GM作物は除草剤使用量を増大させている。ワシントン州立大学ベンブルック教授が9月28日、米国政府資料を分析し、Environmental Sciences Europe誌に査読付論文を発表した[1]。
ベンブルック教授の研究で、ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え作物は、スーパー雑草を誘発し非GM作物と比較して20%以上除草剤使用量が多い。GM作物栽培開始から16年間で約20万トン増大させた。コストも上がっとしている。
農薬使用量を減少させたかに見える害虫抵抗性Bt遺伝子組み換え作物も、Bt抵抗性を獲得したスーパー昆虫の登場で使用量を増加させている。増加するBt毒素についても、新たな健康リスクとなる可能性について研究が必要としている[2]。
グリホサート(ラウンドアップ)耐性スーパー雑草は世界で確認された21品種のうち13品種が米国で確認されていて、コーンベルト地帯を中心に増加している。 米国・スーパー雑草地図(2012年春 GM種子企業のパイオニア社の資料より作成)
- [1] Herbicide-resistant crops / More weed resistance means more pesticide used (WSU 2012-10-02)
- [2] Summary of Major Findings and Definitions of Important Terms (WSU 2012-10-02)
除草剤耐性GMダイズの健康影響が明らかに
モンサントのラウンドアップ耐性遺伝子組み換えコーンとラウンドアップによる2年間のラットへの長期給餌試験の結果、肝臓、腎臓の腫瘍と早期の死亡を確認。挿入遺伝子の過剰発現がホルモンをかく乱。90日試験は不足。
ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えコーンとラウンドアップの長期給餌試験では、ごく少ないラウンドアップだけでも腫瘍ができることが明らかになった。ラウンドアップにより内分泌系のかく乱と説明。腫瘍のできたラットの写真あり。
- "CRIIGEN Study Links GM Maize and Roundup to Premature Death and Cancer"(Sustainable Agriculture 2012年9月19日)
- "Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize"(Food and Chemical Toxicology 2012年9月)
- GMコーンの長期給餌試験 早期死亡と多発する腫瘍[有機農業ニュースクリップ No.545]
ポーランド:GM作物管理不十分で処分へ?
ポーランドのNaturalne Genyによれば、ポーランドが遺伝子組み換え作物の管理に関するEU指示を遵守せず、ポーランド国内でのGM作物の管理がなされていないとして、EU委員会は欧州司法裁判所に委ねるよう決定を用意中。
- "Poland accused of not monitoring and controlling GMOs"(ORGANIC-Market.info 2012年9月13日)
GMゴールデンライスで人体実験
グリーンピースは8月31日、遺伝子組み換えのゴールデンライスを使った人体実験が6歳から8歳の児童24人に、2008年に中国・湖南省衡陽市で行われたと発表。問題の論文は7月に、アメリカの専門誌で発表された。
湖南省政府の担当者は9月1日、米国の研究者は関与していないと否定。衡陽市のスポークスマンは、この実験には遺伝子組み換えの「ゴールデンライスや他のGM食品を使ったもので」ではないと語った、と新華社が報じた。
どちらの言い分に分があるかを問題とする以前に、被験者とされた子供たちに健康被害が出ていないか、そこを明らかにすべきである。
ゴールデンライスはコメにスイセンの遺伝子を組み込み、β−カロテンを産生するようにした遺伝子組み換えのコメ。ビタミンAの不足による健康障害には、そもそも野菜などのおかずが満足に食べられないような経済的な問題だと批判。食料危機のなか、依然としてこの批判は生きている。
遺伝子組み換え品種を持ち込む必要もない。ナイジェリアでは、β−カロテンを75%強化したトウモロコシが実用化されている。他にも、β−カロテン強化のサツマイモなどが実用化されている。
シンジェンタ社は、ゴールデンライスの特許を“非営利”と自称する Golenrice Project に供与し、IRRI(国際イネ研究所)とともに、商業栽培へ向け活動している。ちなみに、IRRIの開発チームの責任者はモンサント出身。
遺伝子組み換えゴールデンライスの商業栽培へ、IRRIなどは2011年、ゲイツ財団などから補助金を得て、バングラデシュとフィリピンで試験栽培を実施。ゴールデンライスの形質を「コシヒカリ」のような流行りのコメに導入し、2013年度からの商業栽培を目論んでいる。
- "Chinese children used in US-backed GE food trial"(Greenpeace 2012年8月31日)
- "China Denies Greenpeace GM Rice Test Claims"(新華社 2012年9月1日)
- GMコーンの長期給餌試験 早期死亡と多発する腫瘍[有機農業ニュースクリップ No.545]
資料:科学に基づくGM安全性
オーストラリアのOrganic Federation of AustraliaによるGM安全性の関連資料
- GMO Safety Issues based on Science (Organic Federation of Australia 2012年7月7日)
EU:GM動物解禁へ影響評価ガイダンスを公表
EUは6月21日、遺伝子組み換え動物の商業的な販売解禁へ向けて、環境影響評価に関するガイダンスを公表し、意見募集を始めた。対象はGM動物(鳥獣、魚類、昆虫)全般。
現在のところ #遺伝子組み換え 動物の商業的な販売解禁を行っている国はないが、このEUのガイダンス公表により米国、日本などが続く可能性がある。Friends of the Earth Europeは7月4日、批判のコメントを公表した。
先ごろ公表された農水省の「家畜クローン研究の現状について」によれば、クローン牛は年間数頭に減少するも、食肉用の遺伝子組み換えの体細胞クローンブタが増加。後代も含めると7割強がGMクローンのブタ。いずれ商業販売が俎上に上がってくるだろう。
- Guidance on the environmental risk assessment of genetically modified animals EFSA Panel on Genetically Modified Organisms (GMO)(European Food Safety Authority (EFSA) 2012年6月)
- EU food authorities pave way for meat and milk from GM animals(Friends of the Earth Europe 2012年7月4日)
- 後代家畜について(2)体細胞クローン豚について (農水省 2012年6月29日)
9割に達した米国のGM栽培面積
米国農務省の公表データによれば、米国の遺伝子組み換え作物の栽培面積は2011年、大豆の94%、コーンの88%、ワタの90%を占めるまでに拡大している。非GM大豆もコーンも米国からの輸入は難しくなる。
- Recent Trends in GE Adoption(米国農務省 2012年6月11日)
- Genetically engineered varieties of corn, upland cotton, and soybeans, by State and for the Unites States, 2000-11 [Excel file](米国農務省 2011年7月1日)
ピンポイントの遺伝子挿入技術か?
中国新聞によれば、広島大学の研究グループが、ピンポイントで組み換え可能な遺伝子組み換え技術を開発。遺伝子修復作用を抑えるタンパク質を加え、狙った遺伝子を酵素で切断し、切断箇所に別の遺伝子を挿入することに成功したとしている。研究グループは、6月18日付けで米国科学アカデミー紀要電子版(PNAS)で発表した。
これまでの遺伝子組み換え技術は、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の出たとこ勝負。組み込み遺伝子がどこに組み込まれるのか、いくつ組み込まれるのかも、やってみなければわからない、というもの。成功率はコンマ数%以下といわれてきた。広島大の成功率は、PNASでの発表(要約)では「実現可能性を示した」となっている。
従来のGM技術は主に、組み込みたい遺伝子の運び屋にバクテリアを使うアグロバクテリウム法、小さな金属粒の表面に付着させて細胞に打ち込むパーティクルガン法、電気刺激で細胞壁に小さな穴をあけ挿入するエレクトロポーション法の3つ。 組み込みが“成功”したとしても、“適当”に組み込まれた遺伝子が狙った作用しか引き起こさないという保障はない。それまで“眠っていた”遺伝子が“起きる”可能性もあり、「未知の毒物は測れない」という指摘もある。
- Zinc-finger nuclease-mediated targeted insertion of reporter genes for quantitative imaging of gene expression in sea urchin embryos(PNAS 2012年6月18日)
- 遺伝子組み換えの酵素開発(中国新聞 2012年6月19日)
ブラジル:ターミネーター解禁へ動き
ブラジル・リオデジャネイロで開催のリオ+20/ピープルズ・サミットに参加している印鑰氏は6月17日、現地からのツイッターで「ブラジルの労働者党政権は種を作れないターミネーター種(自殺する種)の合法化に向けて動き出している。合法化は小農民のジェノサイドであり、食料の企業による支配、食料主権の崩壊につながる。国際的なキャンペーンが今必要となっている」と伝えている。[twitter @tomo_nada]
これまで、カナダなどを前面にしたターミネーター種子合法化の動きは、国際的に”阻止”されてきた。2006年3月、ブラジル・クルチバで開催された生物多様性条約第8回締約国会議では、「一時的禁止」を継続する決議がなされている。
この遺伝子組み換え技術の一つであるターミネーター種子の特許は2007年5月、開発したデルタ・パインランド社の買収によりモンサントが所有することになった。この買収に際して米国司法省は、独禁法上の寡占状態解消のために、3億ドル相当のデルタ・パインランド社の一部のワタの品種の売却を条件としている。
米国:ロシアのWTO加盟にGM栽培規制解除を要求
ロシアのWTO加盟にあたって米国は、ロシアに対して、遺伝子組み換え作物栽培の禁止解除を要求。近くロシア議会で規制解除へ向けた審議が始まるが、解除は不可避と見られる。ロシアのGM混入規制は、EU並みの0.9%。
- Russia lifts restrictions on GMO to ease entry into WTO(AllAboutFeed.net 2012年6月8日)
「実質同等性」導入から20年
20年前の1992年5月29日、米国・食品医薬品局(FDA)は、除草剤耐性や殺虫成分が含まれていても、他の成分が変化していなければ、遺伝子組み換え作物を元の作物と同じとみなす「実質同等性」を策定した。これにより、組み込み遺伝子の配置を制御できない不確実な技術であるGM作物の安全性承認を容易とする政策転換が行われた。この政策転換には、1989年に設立された米国政府の大統領競争力評議会による「2000年までにバイオテクノロジー産業の規模を500億ドルまで引き上げる」という「国家バイオテクノロジーに関する報告書が」があった。同評議会はFDAに対してその促進を指示した。
指示を受けたFDAのケスラー長官は、1991年に政策担当次長にM・テイラーを起用した。M・テイラーは、1994年までGM表示問題の最高責任者であったが、FDAの多くの専門家の反対を退けて「実質同等性」を策定した。M・テイラーはそれ以前7年間、モンサント社の法律顧問であったことが、のちに暴露される。こうした企業幹部と政府幹部の“交流”関係を「回転ドア」という。現米国農務長官ビルサックもモンサント社との関係を取りざたされ、就任には反対の声が上がった。
遺伝子組み換え作物の安全性審査を容易にする「実質同等性」に対して毒物専門家からは、「分かっている毒物はチェックできるが、未知の毒物はチェックできない。組み換え遺伝子の配置を制御できないので、未知の物質ができる可能性がある」と指摘されている。
一方、遺伝子組み換え技術の推進派は、GMの安全性に対して「実質同等性」を拠り所の一つにしている。
- - Statement of Policy - Foods Derived from New Plant Varieties(FDA 1992年5月29日)
欧州:減少するGM試験栽培
欧州の遺伝子組み換え作物の試験栽培は、100件を超えた2009年をピークに、2012年には約40%の41件にまで減少した。そのうち30件がスペインで実施されている。除草剤耐性、病害虫耐性のトウモロコシ、ワタ、テンサイなどで、新規開発は少ない。
6大遺伝子組み換え企業の一つであるBASFが、GM開発の拠点をドイツからアメリカへ移転したことに象徴されるように、欧州でのGM作物・食品が伸びない理由の一つは、表示にあるだろう。表示のない米国では、州レベルでの“攻防戦”が起きてきている。モンサント社などが訴訟をちらつかせて牽制するのは、彼らの危機感の現われ。一方、GM食品に対する米国の「NON GMO」の自主ラベル運動の売り上げは、すでに10億ドル規模に達している。GM食品への表示がカギである。根本には「知る権利」がある。中途半端とはいえ日本の表示制度も、TPP参加で米国並みが予想される。
- Plant research in Europe: Few new GM plants (GMO Safty, 2012年5月18日)
カナダ:リッチモンド市、全域のGM栽培禁止を決議
カナダ・リッチモンド市議会はこのほど、遺伝子組み換え作物・植物・樹木の同市内での栽培禁止を全会一致で決議した。
- Richmond passes ban on genetically engineered crops(The Vancouver Sun 2012年5月22日)
タイ:拡がる違法GMコーン栽培
東京新聞は4月29日、「バイオ燃料 トウモロコシ栽培拡大/タイ奥地 森林破壊/収入増も 地滑り、洪水多発」と題して、タイ北部でのバイオ燃料向けの遺伝子組み換えトウモロコシ栽培と実態の一部を報じている。この記事によれば、地元民による国有森を違法伐採して開墾した畑でGMトウモロコシを栽培。保水力が低く、雨で表土が流され数年で地力が衰え、収穫できなくなったところも出てきている。その結果、はげ山が広がり、雨期の地滑りや洪水が多発。収入が増えた農家からも山枯れや農薬の影響を心配する声が出ている。ここ数年、種子と肥料、農薬の三点セットを売る店があちこちに増えた。タイ西部でも増加。その一方で、持続農業へ果樹への転換も始まっている。
この記事では触れていないが、タイは公式にGM作物栽培が承認されているわけではない。国際バイオ事業団(ISAAA)でもリストに入れていない。
- GM作物の世界的状況:2011 (ISAAA)