朝日新聞は5月9日、「21・23カ月BSE牛、感染性確認できず 国の研究班」と題して23ヶ月齢(8例目、非定型BSE)と21ヶ月齢(9例目、若齢型)の2頭の若齢BSE感染牛による感染性試験の結果を報じた。この研究についての報告書が5月31日開催された食品安全委員会プリオン専門調査会で参考資料として公表された。これによれば、特殊なマウス(ウシ型PrP過発現マウス)を使った実験で、83ヶ月齢(6例目、定型BSE)では感染性が確認されているが、若齢の2例のどちらからも感染性は確認できないとしている。
・食品安全委員会プリオン専門調査会, 2007-5-31・朝日新聞, 2007-5-9
今回試験されている若齢2例の異常プリオンのレベルは、いずれも通常の500分の1以下であったとされている。したがって、この程度のレベルでは感染が生じない可能性があるだろう。また、羊のスクレーピーでは20ほどの"株"があり、それぞれの発症時期が異なっているとされているが、報告書は今回の非定型の発症時期が長い可能性については言及していない。今回の報告書だけで、若齢あるいは非定型BSEに感染性がないと断定できるのだろうか。
そしてこの試験結果とともに、国際獣疫事務局(OIE)による米国は「管理されたリスクの国」という認定をテコに、強引に米国産牛肉牛肉の解禁へ持ち込もうとしているようである。またしてもというべきか、6月10日の朝日新聞が露払い記事を掲載している。このなかでは、日本政府が先ごろ実施した米国の対日牛肉加工施設への査察結果を公表し、輸入条件緩和へ向けた日米交渉が月内にも開始されるとしている。この記事ではまた、国際獣疫事務局の米国に対するリスク認定を「準安全国」と紛らわしい表現を使っている。OIE科学委員会の報告書には米国の飼料規制の不十分さなどが指摘されており、どこにも「準安全」とは書かれていない。不完全な飼料規制による交差汚染の可能性が残る米国産牛肉が安全でないことも確かだろう。
・朝日新聞, 2007-6-105月31日開催のプリオン専門調査会(第44回)に提出された資料は、下記で公開されている。ここでは、先ごろ開催された国際獣疫事務局(OIE)総会の概要や、ここ数年の牛肉の国別輸入量などが資料として公開されている。
・食品安全委員会プリオン専門調査会, 2007-5-31関連記事 No.455