2007.6.26 No.479
■オランダ食肉を汚染するMRSA 農民にも広く感染
英国ソイル協会は6月25日、家畜に広がるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)について警告するプレスリリースを発表した。この発表によればオランダでは2004年7月、家畜にMRSAが初めて発見された。最近の調査ではブタの40%、子牛の13%とかなりのニワトリがMRSAを保菌していて、ブタの飼育農民の50%が感染しているという。さらに、オランダで市販されている豚肉の20%、ニワトリの21%、牛肉の3%からMRSAが見つかったとしている。
こうした家畜のMRSAは、ブタやニワトリを狭い飼育舎で使用する際に、病気予防などで与えられる高濃度の抗生物質が原因である。英国政府は、抗生物質の使用削減を約束しているが、現状はまだ高いレベルにあるという。
英国ではまだ、こうした家畜のMRSAは見つかっていないものの、英国政府はブタやニワトリなどの家畜や輸入食肉の検査を行っていない。これに対してソイル協会は、英国政府に対して状況の把握と対応を取るように次のような事柄を要請したとしている。
- 英国の家畜と市販される食肉のMRSAの状態について検査耐性を緊急に確立する
- 農家に対する全ての抗生物質の広告禁止を含め、獣医による抗生物質の使用削減義務の実行
- 全ての抗生物質の予防的な使用、承認適用外の使用の禁止
・Soil Association, 2007-6-25
・Soil Association, 2007-6
2006年度の財務省貿易統計によれば、オランダからのブタ肉と鶏肉の輸入量は約4600トンにとどまっている。
鶏肉 27トン
ブタ肉 4565トン
2007.6.25 No.478
■滑り込みでセーフか
シンジェンタ社GMトウモロコシMIR604
食品安全委員会遺伝子組換え食品等専門調査会は6月18日、シンジェンタ社の遺伝子組み換えトウモロコシMIR604(商品名 Agrisure RW)について審査を終え、評価書(案)を食品安全委員会に報告することとなったという。この評価書(案)の詳細はまだ明らかになっていないが、おそらく安全であるとして承認手続きに入ると思われる。
・食品安全委員会, 2007-6-18
このMIR604について、日欧での承認のないままシンジェンタ社は2007年3月から種子の販売、供給を開始していた。このMIR604の栽培開始について、生産者団体や輸出業者団体のみならず輸送業者までが、その花粉による汚染、流通段階での混入を危惧し、「スターリンクの影」が忍び寄ってきているという論調すら出ていた。
・Agriculture Online, 2007-5-22
今回、専門調査会のハードルを越えたことから、滑り込みで、一昨年の未承認GMトウモロコシBt10の混入騒ぎのような事態にはならないだろう。専門調査会が、こうした事情を勘案して審査を急いだかは明らかではないが、そのように見られても仕方がないだろう。
■高リシントウモロコシLY038系統 承認へ意見募集
農水省は6月25日、モンサント社の高リシントウモロコシLY038系統について資料としての安全性が確認されたとして意見募集を始めた。締切りは7月24日。食品安全委員会遺伝子組換え食品等専門調査会での審査はこの5月25日に終わっている。
・農水省, 2007-6-25
現在、飼料として承認されている遺伝子組み換え作物は、次のようにトウモロコシや大豆など6種類、合計47品種となっている。
なたね 15品種
トウモロコシ 13品種
ダイズ 4品種
ワタ 10品種
テンサイ 3品種
アルファルファ 2品種
また食品安全委員会は、2月15日から食品としての「高リシントウモロコシLY038系統」に意見募集を行ったが、提出意見はなかったという。
・食品安全委員会, 2007-2
■米国産牛肉無条件解禁へ向けて動き出す 茶番劇の幕開けか
農水省は6月25日、米国産牛肉について日米の実務担当者による技術的な会合を6月27日に開くと発表した。
・農水省,厚労省, 2007-6-25
こうした中、食品安全委員会プリオン専門調査会は、第45回となる同調査会を6月28日に開催すると発表した。
・食品安全委員会, 2007-6-21
すでに報じられているように、この会合は条件緩和に向けての「技術的な会合」にすぎない。いずれ食品安全委員会に条件緩和が諮問されることになるだろう。
・北海道新聞, 2007-6-21
しかし、20ヶ月齢以下の輸入を認めるとした同委員会プリオン専門調査会が行った米国のBSEに関するリスク判断の条件が実質的になんら変わっていない中、どのような屁理屈で「30ヶ月齢以下」を認めるのか。米国のBSEを取り巻く状況は、検査頭数の減少、ウシの個体管理も業界あげての反対で任意参加、レンダリング業界の反対で完全な飼料規制も見送られるという抜け穴だらけのままである。こうした状況で食品安全委員会が条件緩和を認めるとすれば、「20ヶ月齢以下は安全」とした理屈の妥当性が崩れることになる。しかし「30ヶ月齢以下」を認めないとすれば、政治的な問題となるのもはっきりしている。27日の会合は「科学的」という衣をまとった茶番劇の幕開けというべきものだろう。
こうした輸入条件緩和には、米国産牛肉は「絶対に食べない」とするしかないとしても、偽装ミンチのミートホープのように混ぜ込んだり、牛肉エキスや牛脂のように表示義務のない使われた方をされた場合など、食べてしまう可能性は十分にある。少なくとも、そうした覚悟が必要だろう。
米国の食肉業界は当面の焦点である「30ヶ月齢」の先を見越した主張を始めている。6月17日の韓国・聨合ニュースによれば、米国食肉輸出連合会(USMEF)のセング会長は17日、韓国は米国産牛肉を牛の月齢や部位で制限することなくすべて輸入すべきと主張したという。セング会長は「国際獣疫事務局(OIE)のガイドラインは国際的な専門家の勧告に基づいている。米国では月齢30ヶ月以上の牛から生産された骨なし肉がすべて流通しており、この基準はよその多くの国でも適用されている」と答えたとしている。その主張の背景には、この5月の国際獣疫事務局(OIE)が「管理されたリスクの国」として米国を認定したことがある。「30ヶ月齢以下」を認める先には、「無条件」という要求が見えている。
・聨合ニュース, 2007-6-17
2007.6.24 No.477
■花粉症緩和GM米 医薬品として開発を続行 農業資源研究所で説明会
農業資源研究所は6月22日、同研究所の隔離圃場で実施する今年度の花粉症緩和GM米の栽培に関する説明会を7月3日に開催すると発表した。今回の説明会は事前申込みは不要。発表によれば、7月下旬に隔離圃場に田植え、10月下旬に収穫し、さらに来年3月まで越冬性の調査を行うとしている。
・農業生物資源研究所, 2007-6-22
この発表について6月22日の共同通信によれば、10月下旬に30〜40キロを収穫し、マウスによる安全性試験を行うという。ここで安全性が確認されれば来年度以降、ヒトに対する効果や安全性試験を行うとしている。また、商品化には少なくとも6,7年かかる見込みのようで、同研究所は製薬会社にも協力を呼び掛けるとしている。
この花粉症緩和GM米は、今年始めに厚労省が医薬品として扱う方針を決めたことにより、農水省が目論んでいた特定保健食品としての商品化は頓挫していた。一方、日本製紙の徳島県小松島工場の閉鎖型温室で2007年1月より、この花粉症緩和GM米の栽培が始まっている。
・共同通信, 2007-6-22
この花粉症緩和GM米について、農水省の「遺伝子組換え農作物等の研究開発の進め方に関する検討会」に提出された「遺伝子組換え研究開発を巡る現状」では、2010年度にはヒトによる試験検証に基づき機能性の実証と生産技術を開発するとしている。
・農林水産省農林水産技術会議事務局, 2007-5
医薬品としての機能性を実証しえたとして、今後も閉鎖型温室で栽培し続けるのだろうか。北海道や新潟県の遺伝子組み換え作物栽培規制条例に象徴されるように、国内での栽培は容易ではない。その場合、海外、それも規制のない途上国での栽培に踏み切る可能性も否定できないと思われる。
2007.6.21 No.476
■米タイソン社 全ての鶏肉を抗生物質不使用に転換
米国の食肉加工大手のタイソン社は6月19日、同社が出荷する全ての生鮮鶏肉を抗生物質を全く使わないで飼育したものに転換すると発表した。同社の発表では、消費者の91%が生鮮鶏肉について、抗生物質を使わないで飼育することが重要であると考えているとし、消費者主導の転換を強調している。このタイソン社の抗生物質不使用チキンについて6月20日のAPによれば、1ポンド(約450g)につき約1ドルの価格アップとなるという。
・Tyson, 2007-6-19
・AP, 2007-6-20
今回のタイソン社の転換は、価格が上がるとはいえ、抗生物質を使わない鶏肉の供給ができるということ。日本でも抗生物質不使用に取り組んでいる生産者はある。岩手県を中心に展開している十文字チキンカンパニーは2001年には全てのブロイラーで抗生物質の使用をやめている。この抗生物質を使わない飼育によって生ずる鶏糞は、年間12万トンが発酵鶏糞として肥料に加工されているという。
食肉商社のニチレイフレッシュでも取り扱う鶏肉の4割を抗生物質を使わないで飼育したブロイラーを「FAチキン」のブランドで販売している。この「FA」は"Free from Antibiotics"の略で、ワクチンは使用するものの、全育成過程を通じて、抗生物質と合成抗菌剤を投与せずに飼育するという。国内では岩手県、香川県、鹿児島県で生産するほかブラジル、中国、タイでも生産し輸入しているという。
2007.6.20 No.475
■EU 7年で有機農地倍増 農家数も増加傾向
EU統計局(Eurostat)は6月12日、EUにおける有機農業の概要についての統計結果を公表した。EU15ヶ国の有機農地は1998年の1.8%から2005年に4.1%まで倍増したと発表した。また、2005年のEU25ヶ国の有機農地は合計612万ヘクタールに達したとしている。
この発表によれば有機農地の多くは、イタリア、スペイン、ドイツ、フランス、英国などが占めている。有機農地の面積は、2004年から2005年で6%増加している。また、1軒あたりの保有面積は、EU全体の平均が約16ヘクタールであるのに対して、有機農業では38.7ヘクタールと倍以上の面積を保有している。EU全体では2005年の生産農家数は、前年比約11%増加したとしている。
有機農地 EU全体に 前年比増加率
(万ha)占める割合(%) 2005年(%) 生産農家数
----------------------------------------------------------------
EU25ヶ国 612 100.0% 6% 158千
イタリア 107 17.5% 12% 45
スペイン 81 13.2% 10% 16
ドイツ 81 13.2% 5% 17
英国 61 10.0% -12% 11
フランス 57 9.2% 5% 4
・Eurostat, 2007-6-12
news release
・Eurostat, 2007-6-12
レポート全文
・AP, 2007-6-12
■吉田太郎さんと行くキューバツァー
アジア太平洋資料センター(PARC)が吉田太郎さんと行くキューバツァーを募集している。キューバはソ連崩壊後の経済危機の中、それまでの化学肥料と農薬を使った慣行農業を、国を挙げて有機農業に転換を図った。このツァーは、キューバの有機農業の現場とともに、キューバのオルタナティブ医療の実践を見て回るというもの。キューバや中南米の有機農業に詳しい吉田太郎さんが同行する。詳しくはアジア太平洋資料センターまで。
日 程 2007年8月15日(水)成田発〜8月26日(日)
費 用 380,000円(予定)
事前説明会 7月24日(火)19:00 − 21:00
申込締切 7月13日(金)
2007.6.17 No.474
■EU 肉骨粉の飼料化へ研究を実施
Times(電子版)は6月1日、EUが豚とニワトリを原料とする肉骨粉の飼料化に向けた研究を行っていると報じた。これは、豚由来の肉骨粉をニワトリに、ニワトリ由来のものを豚の飼料として“再利用”することを目的としているもので、170万ユーロ(約2億8千万円)の資金を投じているという。バイオ燃料ブームによる大豆などの価格高騰による飼料価格の上昇が、畜産農家の経営を圧迫しているという実情を受けたものであり、欧州経済社会委員会(EESC:European Economic and Social Committee、EU委員会の諮問機関)の提案によるものとしている。
・Times, 2007-6-1
この報道を受けて欧州経済社会委員会は6月1日、この提案が2006年9月14日のセッションで可決、提案された発表した。EUでは2001年から、肉骨粉の全面的な使用禁止を実施している。BSEやTSEに対して豚やニワトリなどの非反芻動物の肉骨粉が原因とならない以上、利用されるべきだとしている。そして、肉骨粉のタンパク質がどの動物由来のものであるかを確定する技術を開発すべきであるとしている。それにより、豚とニワトリに対して、共食いにならないように、豚には家禽由来の、ニワトリなどの家禽には豚由来の肉骨粉を飼料として使えるようにすべきだという。
・European Economic and Social Committe(EESC), 2007-6-1
PRESS RELEASE No 51/2007
・BBC, 2007-6-1
・農畜産業振興機構 週報「海外駐在員情報」, 2007-6-12
こうした非反芻動物由来の肉骨粉の飼料化が、BSEやTSEの原因とされるウシや羊などの反芻動物の肉骨粉使用の抜け穴にならないのか。米国では2006年6月、ウシ由来の肉骨粉で汚染された乳牛用飼料が流通し問題となっている。この汚染飼料は10ヶ月間にわたり見逃され流通していた。米国ではウシなどの反芻動物由来の肉骨粉の生産と非反芻動物への使用が許されているが故の問題とはいえ、こうした汚染が起こりえないように、確実に抜け穴となりえない保障措置が取りうるのだろうか。
2007.6.13 No.473
■EU 有機農産物に0.9%のGM混入を認める
EU農業相会議は6月12日、有機農産物に対する0.9%以下の遺伝子組み換え作物の「意図せざる混入」を認めるという新たな政策を承認した。反対は、ベルギー、ハンガリー、ギリシャ、イタリアの4カ国のみであったとしている。
・EU, 2007-6-12
・EU, 2007-6-12
PRESS RELEASE
この新たなGM共存政策に対して欧州の環境団体や英国のソイル協会のような有機農業団体は、検出限界の0.1%を主張し、3月29日の欧州議会では0.9%案は否決されていた。この決定に対して「地球の友・欧州(Friends of the Earth Europe)」は12日の声明で、この決定がますます有機農業をGM汚染から守ることを難しくしているとし、EUが有機農業と環境を保護しようとするならば、厳しい汚染防止措置が必要であり、バイテク企業とGM栽培農家への厳しい処罰が必要だとしている。
・Friends of the Earth Europe, 2007-6-12
■米国産牛肉輸入緩和へ踏み出す
全ての現場を見たかは不明
農水省と厚労省は6月13日、5月13日から28日にかけて実施した米国の対日牛肉加工施設への“現地査察”について大きな問題はなかったとする報告書を公表した。報告書では、「現場の作業状況については、施設内へ立ち入り、対日輸出処理、デモンストレーション及びインタビューにより以下の事項について調査した」としているが、今回“査察”の対象となった27施設全てでこの現場立ち入りが行われたかは不明である。記録に関してはわざわざ「対日輸出認定施設27施設について、(中略)記録確認したところ」とあるが、現場調査に関してはこうした記述はない。
同時に日米共同記者発表を公表し、輸入再開依頼行ってきた全箱検査をやめ抜取検査に移行するとした。これによりこの間問題を起こしていた米国の加工施設は“お目こぼし”で許されることになった。さらに米国としては新たな対日加工施設の登録が可能になる。
・農水省,厚労省, 2007-6-13
■米国現地査察説明会を開催
農水省と厚労省は6月13日、先ごろ終了し「問題なし」と“判定”した米国の対日牛肉加工施設に対する“現地査察”説明会を開催すると発表し、参加者の募集を始めた。説明会は21日に東京で、22日に大阪で開かれる。参加希望はFAXのみで受付先着順としている。東京会場(250名)は厚労省へ、大阪会場(200名)は農水省へ申し込む。詳しくは下記へまで。
・農水省,厚労省, 2007-6-13
2007.6.11 No.472
■米国の研究所 人造遺伝子で生命特許を出願
ETC Groupは6月7日、J. Craig Venter Institute, Inc.が米国で出願した特許について非難する声明を発表した。ETC Groupによれば、「最小の細菌遺伝子(Minimal bacterial genome)」と題したこの特許は、世界初の人工生命体だという。
Venter研究所の米国特許(US Patent application 20070122826)は、2006年10月に出願されたもので、一連の基本的な遺伝子と、これらの遺伝子を使って作られる人口の“成長し、複製を作ることの出来る生命有機体”の独占的な権利を主張している。Venter研究所はまた、国際特許を世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)に出願したという。
この特許明細を調べた専門家によれば、この明細書の言葉の使われ方から、出願時点(2006年10月)では、まだ完全に機能している人工生物は完成していなかったとしている。しかし、それから8ヶ月を経過し、どの程度まで進んでいるか断定できないいう。また、この特許にかかわる研究には一部、米国エネルギー省が資金を提供しており、安価なエタノールないしは水素の製造のキー技術でありえるという。
・ETC Group, 2007-6-7
・US Patent & Trademark Office
■除草剤耐性GM作物4品種
生物多様性影響評価検討会開催
農水省は6月11日、今年度3回目となる生物多様性影響評価検討会を6月22日に開催すると発表した。案件は、除草剤耐性GMナタネなど4品種。傍聴可能。申し込み締め切りは6月19日。
日時:6月22日(金) 14:00〜
場所:飯野ビル第1会議室(飯野ビル8階、ドア番号807)
議題:第一種使用規程の承認に係る申請書等の検討について
検討予定案件
(1)除草剤グリホサート及びアセト乳酸合成酵素阻害剤耐性ダイズ(DP-356043-5)
(2)除草剤グルホシネート耐性及び雄性不稔及び稔性回復性セイヨウナタネ(MS8×RF3)
(3)除草剤グルホシネート耐性及び雄性不稔及び稔性回復性セイヨウナタネ(MS1×RF1)
(4)除草剤グルホシネート耐性及び雄性不稔及び稔性回復性セイヨウナタネ(MS1×RF2)
2007.6.10 No.471
■若齢BSE牛に感染性なし? 研究報告書を公開
朝日新聞は5月9日、「21・23カ月BSE牛、感染性確認できず 国の研究班」と題して23ヶ月齢(8例目、非定型BSE)と21ヶ月齢(9例目、若齢型)の2頭の若齢BSE感染牛による感染性試験の結果を報じた。この研究についての報告書が5月31日開催された食品安全委員会プリオン専門調査会で参考資料として公表された。これによれば、特殊なマウス(ウシ型PrP過発現マウス)を使った実験で、83ヶ月齢(6例目、定型BSE)では感染性が確認されているが、若齢の2例のどちらからも感染性は確認できないとしている。
・食品安全委員会プリオン専門調査会, 2007-5-31
参考資料
・朝日新聞, 2007-5-9
「21・23カ月BSE牛、感染性確認できず 国の研究班」
今回試験されている若齢2例の異常プリオンのレベルは、いずれも通常の500分の1以下であったとされている。したがって、この程度のレベルでは感染が生じない可能性があるだろう。また、羊のスクレーピーでは20ほどの"株"があり、それぞれの発症時期が異なっているとされているが、報告書は今回の非定型の発症時期が長い可能性については言及していない。今回の報告書だけで、若齢あるいは非定型BSEに感染性がないと断定できるのだろうか。
そしてこの試験結果とともに、国際獣疫事務局(OIE)による米国は「管理されたリスクの国」という認定をテコに、強引に米国産牛肉牛肉の解禁へ持ち込もうとしているようである。またしてもというべきか、6月10日の朝日新聞が露払い記事を掲載している。このなかでは、日本政府が先ごろ実施した米国の対日牛肉加工施設への査察結果を公表し、輸入条件緩和へ向けた日米交渉が月内にも開始されるとしている。この記事ではまた、国際獣疫事務局の米国に対するリスク認定を「準安全国」と紛らわしい表現を使っている。OIE科学委員会の報告書には米国の飼料規制の不十分さなどが指摘されており、どこにも「準安全」とは書かれていない。不完全な飼料規制による交差汚染の可能性が残る米国産牛肉が安全でないことも確かだろう
・朝日新聞, 2007-6-10
5月31日開催のプリオン専門調査会(第44回)に提出された資料は、下記で公開されている。ここでは、先ごろ開催された国際獣疫事務局(OIE)総会の概要や、ここ数年の牛肉の国別輸入量などが資料として公開されている。
・食品安全委員会プリオン専門調査会, 2007-5-31
■カナダ ターミネーター禁止法案提出 当局は姿勢変えず
カナダのCBCニュースは6月1日、カナダ連邦議会にターミネーター禁止法案が提出された報じた。これは5月31日にNDPにより提出されたもので、ターミネーター種の試験栽培と同時に商業栽培を禁止するものという。
カナダはこのターミネーター技術の開発を進めてきているが、この法案にカナダ農業相Chuck Strahl は、科学的でないので支持しない、国際的なルールの制定を待ちたいと語った。またカナダ食品検査庁(CFIA)も、この提案がターミネーター技術に関するCFIAの立場を変えるものではない、としている。
・CBC News, 2007-6-1
カナダ食品検査庁(CFIA)によるターミネーター技術に対する公式見解は以下に掲載されている。
・ICFA
ターミネーターについては2006年3月、ブラジル・クルチバで開催された生物多様性条約(CBD)の第8回締約国会議で、「一時的禁止」が継続されることとなっている。
・Ban Terminator , 2006-3-24
2007.6.9 No.470
■バイオ燃料が途上国の食料輸入を直撃 FAO見通し
国連食糧農業機関(FAO)は6月7日、バイオ燃料需要の高まりによる穀物価格上昇の結果、2007年の輸入価格は前年比5%アップの4千億ドルを上回るという世界的な食料見通しを発表した。この価格上昇の多くは、バイオ燃料の原材料となるトウモロコシなどの穀物や植物油によるもので、前年比13%アップすると見込んでいる。また、この報告書は、こうした価格上昇は、貧しい途上国を直撃し、前年比10%の支出を強いられ、途上国の食料輸入コストは、2000年に比べ90%以上アップするが、先進国のそれは22%アップにとどまり、際立った対照を見せている、としている。
2007年の世界的な穀類生産は、前年比6%増の21億2500万トンと予測されるが、バイオ燃料需要の高まりにより、価格は高止まりが予想されているとしている。
・FAO(FOOD AND AGRICULTURE ORGANIZATION), 2007-6-7
このFAOの報告書は、バイオ燃料へのシフトによる食料争奪戦がより鮮明になってきたということを示している。米国やブラジルなどに象徴的に見られるように、本来の食料を燃料に転化しようとする結果、より貧しい途上国にしわ寄せが行くということだ。バイオ燃料を実用化するとすれば、効率が低いといえど、非可食部のエタノール化が不可欠である。
6月1日のIPS(Inter Press Service)は、キューバがバイオエタノール生産のためにサトウキビを使うことを排除したと報じている。キューバの砂糖工業当局は1年前、燃料用エタノール生産増強に大規模なアルコール産業の拡大計画を立てていた。しかし、燃料用エタノールの生産が食料安全保障に及ぼす影響を危惧したカストロの反対により、サトウキビによる燃料用エタノール生産を排除したいう。
・IPS(Inter Press Service), 2007-6-1
この方針は、大規模なバイオエタノール拡大路線を採るブラジルとは対照的ですらある。
■有機塩素系農薬は根粒菌の働きをブロック
収量低下を招く
米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)の電子版は6月4日、農薬が土壌中の根粒菌の働きを妨げ、豆類の減収の原因となっているとの研究を報じている。この研究はオレゴン大学などの研究者によるもので、有機塩素系の農薬が土壌中の根粒で生きている根粒菌バクテリアの内部の特定のレセプター(NodD)との結合を妨害しているという。これにより、根粒菌による窒素固定量の低下を招くことで土壌の肥沃度が低下し、長期的には収量低下の原因になるとしている。
・PANS, 2007-6-4
・EurekAlert, 2007-6-6
■ゴールデンライスの実用化は2011年? 年末から臨床試験を開始
バイテク普及会は6月1日、フィリピンにおける遺伝子組み換えゴールデンライスが2011年に実用化される、とその開発状況を報じている。これは、5月21日に同会が開催したマスコミ関係者対象のメディアセミナー「フィリピンにおけるバイオテクノロジー」において明らかになったという。フィリピン農務省管轄のフィリピン稲研究所(PhilRice: Philippine Rice Reserch Institute)でゴールデンライス開発に携わっている講師のロードラ・ロメロ・アルデミタ博士は、2011年のゴールデンライス実用化に向けて、米国と中国でヒトによる臨床試験を2007年末までに実施すると説明したとしている。
・バイテク情報普及会, 2007-6-1
2007.6.8 No.469
■またもや作業ミスが原因 相次ぐ米国産牛肉条件違反
農水省は6月8日、5月17日に見つかっていた証明書のない米国産の牛内蔵肉(センマイ)についての米国農務省の調査報告書を公開した。この混入は、カーギル社フォートモーガン工場から出荷されたレバー(約18トン、2899箱)に証明書に記載のないセンマイ1箱が混入していたもの。
米国農務省の報告書によれば、原因はまたしても作業者の作業ミスとしている。すでにセンマイのラベルの貼られた箱の蓋に、日本向けのレバーのラベルを貼り、センマイを入れた箱に使ったという。これを日本向けのレバーとして出荷したというもの。この異なった部位のラベルが2枚貼られた蓋は、一度は工程から取り除かれたとしているが、なぜこの混入が起きたのか、報告書の記述からはそのプロセスはよくわからない。
カーギル社は改善策として、日本向けの製品について、包装・箱詰めは専用エリアで行い、その梱包は日本向け以外の製品の梱包と外見上見分けがつくようにし、予め箱の蓋にラベルを貼付しておくことは禁止した、としている。
・農水省、厚労省, 2007-6-8
・米国農務省調査報告書, 2007-6-6
仮訳
英文
こうした作業ミスの多発は、報告書の原因の単なる方便として使われているのではないとすれば、米国の工程システムそのものに問題があることを示しているといえるだろう。
日本政府は5月13日から26日まで、米国の対日牛肉加工施設の「査察」を行った。この査察に日本農業新聞は5月27日、「大きな問題はなかった」とし、6月上旬に報告書を公表すると報じているが、この結果はまだ明らかにされていない。これまでの日本政府による査察は、そのほとんどが文書をチェックすることに終わっているようである。いくら文書を「精査」しても、それだけで問題が明らかになることはないし、対日牛肉加工施設の「安全性」を保障するものではない。どのような報告書が公開されるのか興味深い。食の安全・ 監視市民委員会と日本消費者連盟は5月29日、この査察結果の公表と消費者の声を聞くように要求する申し入れ書を政府に送っている。
・食の安全・監視市民委員会, 2007-5-29
■花粉症緩和GM米に関する公開質問状と回答を公開
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは6月7日、農業生物資源研究所で開発中の花粉症緩和GM米についての公開質問状とその回答を公開した。この公開質問状は、同キャンペーンが5月9日に農水大臣と日本製紙に宛てて出し、両者は期限の5月21日付けで回答していた。
日本製紙は、2007年1月より同社小松島工場(徳島県小松島市)に建設した閉鎖型温室(500平方メートル)で年間700Kgを目標にこのGM米の栽培を始めているが、この回答によれば、農水省と農業生物資源研究所から合計1億65百万円の委託研究費により、日本製紙はGM米の生産と開発を受託している。
厚労省はこのGM米を医薬品として扱うことを決めたと報じられているが、回答では、動物実験や臨床試験の実施機関は未定であるとしている。
・農林水産省農林水産技術会議事務局先端産業技術研究課, 2007-5-21
・日本製紙株式会社, 2007-5-21
■食品安全委員会 GMトウモロコシ承認へ意見募集
食品安全委員会は6月7日、ダウ・ケミカル日本の遺伝子組み換えトウモロコシ6275系について食品として安全であるとの見解をまとめ意見募集を始めた。このGMトウモロコシは、害虫抵抗性と除草剤(グルホシネート)耐性を兼ね備えたもので、2006年5月に生物多様性に関する承認を得ている。締切りは7月6日。
・食品安全委員会, 2007-6-7
・食品安全委員会 遺伝子組換え食品等専門調査会, 2007-6
(案)遺伝子組換え食品等評価書
2007.6.5 No.468
■有機稲作の映像記録を刊行 民間稲作研究所
NPO法人民間稲作研究所はこのほど、同研究所で開発した有機稲作の実際を、代かきから収穫まで1年にわたって丹念に追った映像記録「これからの昔の米づくり −よみがえる いのち育む 有機稲作−」を刊行した。映像は、1本植えの苗を植えるところから収穫までを追い、農薬も化学肥料も使わない「低コスト・小力の「いのち育む有機稲作」の技術体系を丹念に撮影した」もの。DVDとVHSの2種類があり、上映権付きの販売も行っている。同研究所ではこの記録を、有機稲作の栽培技術の指導書、マニュアルとして活用して欲しいとしている。詳しくは同研究所まで。
「これからの昔の米づくり」
企画・制作 村の畑の片隅で
発売元 NPO法人民間稲作研究所
頒布価格 DVD・VHS 3,000円
上映権付き 21,000円
■モンサント、ターミネーター技術を手に 米司法省、買収を承認
米国司法省は5月31日、モンサント社による米国のバイテク種苗会社であるデルタ・パインランド社(Delta and Pine Land)の買収を条件付で承認した。この買収は2006年8月、モンサント社が15億ドルでデルタ・パインランド社を買収することで合意していた。司法省の示した条件は、デルタ・パインランド社の持つワタの従来品種を150日以内に売却するというもの。両社は、このために新会社を設立し、バイエル社に3億ドルで売却するという。この買収によりモンサントは、デルタ・パインランド社の持つターミネーター技術を手に入れることになる。また、売上ベースで世界的なシェアは約23%を占める。
・AP, 2007-5-31
・Monsant, 2007-5-31
この承認に関して米国・食品安全センター(Center for Food Safety)は、この買収がモンサントによる寡占化を進行させると批判する声明を出した。同センターは2007年2月、米国におけるワタの種子市場の分析レポートを公開している。これによれば、デルタ・パインランド社は流通するワタの品種の約半分を、モンサントと合わせると約3分の2を占めている。
・Center for Food Safety, 2007-5-31
■花粉症緩和GM米など2品種 承認へ意見募集
農水省と環境省は6月5日、カルタヘナ法に基づく花粉症緩和GM米など2品種の隔離圃場における第一種使用規定についての承認に向けて意見募集を始めた。締切りは7月4日。今回対象となるのは次の2品種。
・スギ花粉ペプチド含有イネ
農業生物資源研究所
・チョウ目害虫抵抗性トウモロコシ MIR162
シンジェンタ シード株式会社
2007.6.3 No.467
■放射線照射原料が混入 キッコーマンなど製品回収へ
キッコーマンは6月1日、米国より輸入した大豆製品の一部にガンマ線照射した原材料がふくまれるとして製品回収を発表した。この発表によれば、同社は5月25日に、輸出元である米国Van Drunen Farms(ヴァン ドゥルネン ファームズ社)の子会社 VDF/Future Ceuticals 社から、出荷した原料の一部にガンマ線が照射されていた可能性があると連絡を受け、保健所に報告したとしている。
この大豆製品は「ソイアクト」という大豆発酵抽出物を主成分とする健康食品用の原料であり、同社の健康食品の原料としての使用とともに、健康食品などの原料として販売しているとしている。6月2日の朝日新聞などに掲載された広告では、資生堂、ファンケル、ノエビア、三共ヘルスケアが回収を行うとしている。
・キッコーマン株式会社, 2007-6-1
食品への放射線照射は、日本ではジャガイモにのみ認められているが、米国では食肉、鶏卵、野菜などに殺虫、殺菌を目的とした放射線照射が認められている。
・「食品への放射線照射について(案)」に関するご意見を聴く会
「参考資料」P.11
欧米などでは広く食品照射が認められている状況に日本の原子力委員会は2006年10月、ジャガイモにのみ認められている食品への放射線照射の範囲を、そのほかの食品にも広げるべきだとする方針を打ち出している。
・原子力委員会, 2006-10-3
・原子力委員会、食品照射専門部会, 2006-9-26
照射食品反対連絡会は2006年11月、資料を付けてこの原子力委員会の方針に反対する趣旨の申し入れ書送っている。
・食品照射ネットワーク, 2006-11-14
■米国:照射食品の表示外しへ動く
米国食品医薬品局(FDA)は4月4日、放射線照射した食品の表示に関して、照射によって実質的に変化がない限り表示不要という方針を打ち出し、7月3日まで意見募集(パブリック・コメント)を実施している。
FDAは、現在、照射食品に対して、国際的な照射のシンボルマークと「照射済」との文言をパッケージに明確に表示することを要求している。しかし、4月4日の官報でFDAは、照射によって「実質的に変化する」食品のみに照射マークと「照射済」を表示するようによう提案した。この提案により、照射工程が低温殺菌に関する連邦基準を満たすならば、企業が、「照射」に代わる用語の使用許可についてFDAに申請する余地があり、「照射」の代わりに「低温殺菌」の用語の使用を容認することを可能とするという指摘が出されている。
・FDA, 2007-4-4
・CIDRAP News, 2007-4-10
・
照射マーク
このFDAの提案が通れば、米国産食品が照射されたものかどうか分からなくなる可能性が強い。その場合、米国産の照射食品が大手を振って流通するケースも予想される。
この非表示の問題は、日本でも起こりうる可能性がある。2006年10月、日本の原子力委員会の食品照射に関する方針転換の声明(「食品照射専門部会報告書「食品への放射線照射について」について」)では、次のように表示継続を述べる一方で、「今後の在り方に関する検討」という語句が入っている。現在、「照射」については表示が原則である。「今後の在り方」に将来の非表示の可能性がみてとれる。
B再照射を防止し、また、消費者の選択を確保する観点からの照射食品に関する表示の義務付けの引き続きの実施及びその今後の在り方に関する検討
■「次世代」GM作物 ジカンバ耐性はスーパー雑草を解決するか
除草剤耐性の遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まって10年、世界各地でグリフォセート系のラウンドアップなどの除草剤の効かないスーパー雑草の出現が問題となっている。ネイチャーは5月24日、これまでグリフォセート系除草剤とは異なる有機塩素系除草剤ジカンバに耐性のある「次世代」遺伝子組み換え作物の開発について報じた。このジカンバ耐性作物により、現在、グリフォセート耐性雑草に直面している農家に新たな選択肢を提供するとしている。
ネブラスカ大学の研究者らは、土中微生物からジカンバを分解して植物に無害な化合物に変換する酵素を発見し、この酵素の耐性遺伝子を大豆やトマトに導入して、いずれもジカンバに耐性を示したという。この技術は、すでにモンサントに供与され、同社は、3年から7年でジカンバ耐性大豆が商業化でき、そのあとワタでの商業化を期待しているという。
ジカンバは化学的に安定で、数ヶ月で分解され環境負荷が少ないという。しかし雑草研究者は、ジカンバは半径500メートルにわたって近隣に拡散し、その範囲の植物を枯らすという。さらに、ジカンバ耐性雑草が生ずる可能性は非常に少ないだろうが、このことは、当初、グリフォセートについていわれていたことだ、と指摘している。
・Nature News, 2007-5-24
このジカンバ耐性大豆についてモンサント社は2006年8月、次世代プロジェクトの中間成果として明らかにしている。そこでは、発芽前後で除草剤散布ができ、より柔軟な除草作業が可能となるとしている。2006年では、まだ、「フェーズ2(Phase 2:実験室及び圃場試験の実施の段階)にあるとしている。
・モンサント, 2006-8-16