2007.7.1 No.480
■人工生命への一歩か
細菌のゲノム交換に成功と米・ベンター研究所
米国のクレイグ・ベンター研究所は6月28日のScience(電子版)に「別種の裸のDNAを移植することにより、細菌の細胞のゲノムを完全に入れ替えた」と、細菌のゲノムの完全な入れ替え成功を発表した。
細菌のゲノム交換に成功と米・ベンター研究所
28日のScientific Americanによれば、細菌(マイコプラズマ)に対して、抗生物質耐性で細胞を青くするマイコプラズマの近縁種のゲノムを短時間一緒にし培養した後、抗生物質のテトラサイクリンに曝した。この処理された細菌は3日後、青く見えるゲノムの入れ替わった細菌に入れ替わり増殖していたという。この結果について研究者は、細菌のゲノムが完全に入れ替わったが、どのようにしてそれが起きたのか分かっていないという。ベンター氏は、次のステップがマイコプラズマの染色体の合成であると語ったという。また、この研究では人工生命を作り出すことはできなかった、とも語った。この研究は最終的に、人工ゲノムによりバイオ燃料の生成や二酸化炭素吸収を目的とする人工生命を作り出すことにあるとしている。同研究所は、10年以内に合成有機体によるバイオ燃料の生成を目標にしているという。
・Science, 2007-6-28 ・Scientific American, 2007-6-28 ・朝日新聞, 2007-6-29
・Science, 2007-6-28 ・Scientific American, 2007-6-28 ・朝日新聞, 2007-6-29
ベンター研究所は2006年10月、人工生命体に関する特許を申請している。これに対してETCグループは6月28日、「この研究が人工生命への最後のハードルの一つを越えたかもしれない」が、「合成生物学は、この地球に生きる全てのものにとても密接な関連のある行き過ぎた遺伝子工学の姿である」との批判する声明を発表した。
・ETC Group, 2007-6-28
・ETC Group, 2007-6-28
また、6月28日のロイターによれば、このベンターの特許についてETCグループは、「この特許とその独占的な権利の幅と意味するところについて深く憂慮している。世界中の特許当局が、この特許を拒絶することを求める」としている。
・Reuters, 2007-6-28
・Reuters, 2007-6-28
この研究を発表したクレイグ・ベンター研究所の代表のクレイグ・ベンター氏は、ヒトゲノムの解読競争の先頭を切っていた研究者でもある。同研究所の人工生命特許は、従来の遺伝子組み換え技術をさらに進めたものであり、単なる種の壁を越えるというようなものから、ヒトを含む生態系にとってさらに危険なものをもたらす技術といえるだろう。例えば、解読された病原性ウイルスや細菌の遺伝子配列から、新たな病原性ウイルス・細菌を作り出すことをも可能とする技術であり、新たな細菌兵器への技術でもある。
■シンジェンタ社、中国とGM共同プロジェクト
6月25日のAFPによれば、シンジェンタ社と中国科学院傘下のバイオ研究所は、5年間の遺伝子組み換え作物開発の共同プロジェクトを開始したという。この共同プロジェクトは、干ばつ耐性を含むトウモロコシ、大豆、小麦、テンサイ、サトウキビについて遺伝子組み換え品種の開発を行うとしている。このプロジェクトの成果に基づきシンジェンタ社は、開発品種の商業化の権利を持つともしている。・AFP, 2007-6-25
このプロジェクトの開発対象作物には小麦が含まれている。世界的には2004年、モンサント社の除草剤耐性のGM小麦の商業化が頓挫した。しかし、米国の小麦業界はフザリウム耐性GM小麦の商業化を諦めていないし、オーストラリアでは2007年から干ばつ耐性のGM小麦の試験栽培が始まっている。米とともに主食作物である小麦にも遺伝子組み換えの動きが急になってきている。
■卵から合成抗菌剤検出 回収を命令
6月30日の共同通信などによれば、岐阜県は6月30日、鶏卵から基準を超
える合成抗菌剤のトリメトプリムが検出されたとして、出荷業者に回収するように命令したという。合成抗菌剤の検出された鶏卵は、岐阜県羽島市の卵選別包装業者である浅井物産が6月11日に出荷した約5万4千個であるが、浅井物産は6月29日までに出荷した約100万個を回収するとしている。これらの鶏卵は、岐阜県と愛知県の養鶏農家より同社が集荷したもの。岐阜県では「健康に影響はない」としている。
検出された合成抗菌剤のトリメトプリムは0.04ppm(基準値0.02ppm以下)であり、岐阜県の立ち入り検査で農家の1軒からトリメトプリムの在庫が見つかったという。この合成抗菌剤のトリメトプリムは動物用の合成抗菌剤で、サルファ剤と併用しニワトリのコクシジウム症に有効であるとされている。
・共同通信, 2007-6-30 ・朝日新聞, 2007-6-30
・共同通信, 2007-6-30 ・朝日新聞, 2007-6-30