最終更新日:2007年10月16日
2007年10月の農と食

2007.10.16 No.495
■在来作物は生きている文化財、複眼で見た地域の知的財産

  『どこかの畑の片すみで』 山形在来作物研究会/編

『どこかの畑の片すみで』山形在来作物研究会編

 “山形”という地域に徹した本が出た。あまりローカルすぎて、山形県内でしか販売されていないという本だ。他県ではもちろん、あのアマゾンでも買えない“貴重な本”でもある。

 このほど山形在来作物研究会の編集による『どこかの畑の片すみで −在来作物はやまがたの文化財−』が発刊された。これは、同研究会のメンバーが2005年から地元紙の山形新聞に掲載してきた「やまがたの在来作物」をまとめたもの。初めに「在来作物のお話」と題して在来作物の多面性を解説している。新聞に掲載された記事のほか、“根ほり葉ほり探し”た130種近い山形の在来作物リストと分布地図などがまとめられている。

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■東アジア全域でUPOV体制構築を目指す農水省
 農水省は10月10日、日中韓のほか東南アジア各国(カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)、オーストラリアなどに加え植物新品種保護国際同盟(UPOV)事務局、EUからの参加による「アジア地域の植物品種保護制度に係る協力と協調に関するシンポジウム」と併せて開催された国際会議の概要を公表した。このシンポジウムは10月4,5日の2日にわたって開かれたもので、参加各国の植物品種保護制度の整備状況や品種保護制度強化への今後の地域協力・協調のあり方について報告があったとしている。このシンポジウムの後開かれた国際会議において日本から設置を提唱した「東アジア植物品種保護フォーラム」に強い支持が得られ、今後の協力などを共同ステートメントとして取りまとめたとしている。
 今回提唱された「東アジア植物品種保護フォーラム」構想は、日中韓とASEAN諸国による植物新品種保護体制を整備し、将来的には、域内諸国のUPOVへの加盟と、知財共通システムの構築を目指すとしている。農水省は11月2日にバンコクで行われるASEAN+3(日中韓)農林大臣会合で、意見交換や協力推進の場として常設の「東アジア植物品種保護フォーラム」の設置を正式提唱するとしてる。
 ・農水省, 2007-10-10
 UPOVには2006年12月末で63ヵ国が加盟し、アジアからは日本、中国、韓国、シンガポール、ベトナムの5ヵ国だけである。農水省は10月5日、ベトナム農業農村開発省と植物新品種に関する審査協力協定を締結し、審査結果の相互利用の推進や情報交換を進めようとしている。当面はキクとバラの審査報告書の相互利用を進めるという。
 ・農水省, 2007-10-3
 新品種保護を名目に自家増殖を全面的に制限しようというUPOV体制は、何千年と行われてきた自家採種の権利が侵害される危険性が大きいといえよう。日本では、UPOVに基づく登録品種制度と特許権、地域団体商標制度という3つの「知的財産保護制度」により自家採種、自家増殖が全面的に制限されようとしている。現在は新規に開発された品種という限定がある。しかし、特定の遺伝子に対する特許権が認められた場合、この限定はもろくも崩れ去る可能性が大きいと考えざるを得ない。在来種といえども安心はできない。「東アジア植物品種保護フォーラム」は、こうした自家採種、自家増殖の制限を東アジア全域に拡大しようというものである。

2007.10.9 No.494
■ベンター、人工染色体を合成
 Guardian は10月6日、クレイグ・ベンター博士らが人工染色体の合成に成功し近く発表すると報じた。それによると、合成された染色体は381個の遺伝子を持つ58万塩基対からなるとしている。DNA配列は、マイコプラズマの生殖器にベースに、生命を支えるのに最低限必要な5分の1に減らしたとしている。そして、この完全に合成された染色体は、Mycoplasma laboratorium と名づけられたという。

 この合成染色体は、生きているバクテリアの細胞に移植され、プロセスの最終段階で、それは細胞を支配し、実質的に新しい生命体になることになっているという。研究チームはすでに、事実上、その細胞の種を変えるようにほかの細胞にバクテリアのあるタイプのゲノムをうまく移植した。ベンター博士は、同様の技術が人工的に生成された染色体にとって正常に機能することを「100%確信している」と語ったという。その新しい生命体は、その自己複製の能力とそれが挿入された細胞の分子機構の新陳代謝に左右され、その意味では完全な生命体ではないだろうが、そのDNAは人工のものであり、細胞を支配するDNAであり、生命の基本要素であると考えられている、としている。

 ベンター博士はこの人工のバクテリアが、二酸化炭素を吸着したりブタンの生産に使われることを望むとしている。
 ・Guardian, 2007-10-6
 この Guardian の報道に対して AFP は10月7日、ベンター博士側が「そのような成果はあげていないし、発表するまでにはまだ数か月はかかるだろう」と語ったと報じている。またAFPは、ETC GroupのPat Mooney代表が、ベンター博士が「ほぼ何でも創り出せる可能性を持った基盤を生みだそうとしている」と指摘したうえで、「新薬の開発など人類に貢献することも考えられるし、生物兵器のような人類に対する脅威となる可能性もある」と懸念を示している、としている。この間、ベンター博士らによる人工生命を監視してきた ETC Group はまだ公式見解を公表していない。
 ・AFP, 2007-10-7
 今回のベンター博士の人工生命体は、2006年10月に米国特許庁に出願された人工生命に関する特許に相当しているようである。
 ・US Patent & Trademark Office
■Btコーンは水生昆虫に影響 米国での新研究
 10月8日のインディアナ大学は、Btコーン(害虫抵抗性遺伝子組み換えトウモロコシ)の花粉が栽培地の近くの川のトビゲラの成育に影響を与えている可能性がある、という研究を公表した。この研究は、インディアナ大学のトッド・ロイヤー教授らのチームが、2005年と2006年にインディアナ州北部のBtコーン栽培地帯の12の川で調査した結果によるもので、米国科学アカデミー紀要にに発表されるまで詳細は明らかにされない。

 この発表によれば、Btコーン栽培地帯を流れる川に仕掛けたトラップにより、Btコーンの花粉や葉や茎などの流入を確認し、ある種のトビゲラの内臓からBtコーンの花粉を見つかり、トビゲラがBtコーンの花粉をエサとしていることが明らかになったという。研究室内の実験では、Btコーンの葉を与えられたトビゲラの成長率が、非Btコーン残渣を与えられたトビゲラの半分以下であたっという。また、2倍から3倍のBtコーンの花粉にさらされた別の種のトビゲラでは、明らかに死亡率が増加したとしている。

 この結果にロイヤー教授は、米環境保護局によるBtコーンの水生生物相への影響調査がDaphnia[ミジンコ類]に対してであり、Btコーンにより密接に関係している昆虫に対したものではなかったとし、Btコーンの広範囲にわたる栽培とそのリスクが完全には評価されなかったと思うという。また、トビゲラが魚類や両生類のエサであり、健全な生態系が機能するには、あらゆる部分が保護されなければならない、としている。
 ・Indiana University, 2007-10-8

 1999年にコーネル大学の研究者により、Btコーンの花粉を散布したトウワタの葉を食べたオオカバマダラの幼虫が死亡したという研究がNatureに発表され、米国農務省は2年後に自然界での影響はないとの結論を出した。このとき、ロイヤー教授は、Btコーンの花粉や残渣などが川に流れ込み、影響を与えているのではないかと考え、今回の研究につながったのだという。

【参考】Btコーンとオオカバマダラの関連について
 ・農業情報研究所(WAPIC)、2002-2-7  ・バイテクコミュニケーションハウス:バイテクQ&A集

2007.10.4 No.493
■パーシーとルーズにもうひとつのノーベル賞
 遺伝子組み換えナタネによる汚染をめぐりモンサントと闘ってきたパーシー・シュマイザーさんと妻のルーズさんは、もうひとつのノーベル賞とよばれるライト・ライブフッド賞を受賞した。10月2日、ライト・ライブフッド財団が発表した。受賞理由として、シュマイザー夫妻がモンサントと闘うことで「遺伝子組み換え作物に手を染める企業による農民と生物多様性に対する脅威に、世界中に警鐘を鳴らした」ことを挙げ、「生物多様性と農民の権利を擁護し、環境とモラルに対する特許法のひねくれた解釈に疑問を呈した勇気」を称えるとしている。
 シュマイザーさんは地元メディアの取材に対して「モンサントが登場するずっと前から作物をを育ててきた。農民には遺伝子汚染のない、企業によってコントロールされることなく望むものを播種する権利がなければならない」し、「賞は、55回目の結婚記念日にやってきた。これ以上の贈り物はない」と語っている。
 ・CANADIAN PRESS, 2007-10-2

 夫妻のほかに2007年度の同賞は、太陽光エネルギーの普及でバングラデシュのGrameen Shakti社に、核兵器の使用が不法行為であるとする国際司法裁判所での反対意見に対してスリランカの法学者のクリストファー・ウィーラマントリ(前国際司法裁判所判事)に、宗教的、文化的な違いを埋める活動に対してケニアの平和活動家 Dekha Ibrahim Abdiに贈られた。12月7日にスウェーデン議会で授与式が行われる。

 ライト・ライブフッド賞は1980年にスウェーデンで設立されたライト・ライブフッド財団により授与されるもので、次のような分野での貢献に対して贈られる。日本人では1997年に高木仁三郎さんが受賞している。
  ・グローバルな生態系の調和への貢献
  ・物質的・精神的貧困の解消
  ・世界における平和と正義への貢献

 1998年、シュマイザーさんは、モンサント社の遺伝子組み換えナタネを違法に作付けしたとして同社から訴えられた。シュマイザーさんの闘いは、2004年のカナダ最高裁の判決によりモンサントの特許を侵害したという形で“敗訴”となった。しかし、モンサントの特許から何ら利益を得ていないということで、モンサントの求めた損害賠償40万ドルの支払いは認められなかった。シュマイザーさんは、長年自家採種してきたナタネ栽培をあきらめ、小麦やエンドウの栽培に転換した。しかし、モンサントのGMナタネがシュマイザーさんの畑から見つかり、その撤去費用を求めてモンサントを訴えている。その裁判は2008年1月23日から始まる。


■低レベル汚染も不問に コーデックス・バイテク特別部会
 厚労省は9月28日、9月24日から28日まで幕張で開催されていたコーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会の第7回会議は、議題となっていた3項目のガイドライン原案を承認したと発表した。これにより、低レベル汚染の問題や遺伝子組み換え動物などの安全性評価のガイドラインの実質的な審議は終了し、2008年7月のコーデックス委員会での採択に場を移すこととなった。
 今回提起されていたガイドラインは次の3つ。
  ・組換えDNA動物由来食品の安全性評価
  ・栄養又は健康に資する組換えDNA植物由来食品の安全性評価(付属文書)
  ・微量に存在する組換えDNA植物の安全性評価(付属文書)

 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは9月29日、このコーデックス・バイテク部会の報告集会を東京で開催した。消費者団体としてオブザーバー参加した山浦康明氏(日本消費者連盟)やマイケル・ハンセン氏(世界消費者機構)などから同部会の報告があった。

 遺伝子組み換え動物の安全性ガイドラインについては、動物に対する環境、倫理、動物福祉については検討から外され、組み換え植物ガイドラインをベースに検討が行われた。大きな問題となっていたのは組み換え遺伝子に使われる抗生物質耐性マーカーの利用であった。2007年3月、この問題に関するFAOとWHOの合同専門家会合が開かれ、いくつかの代替手段が示されていた。推進側から、この代替案の安全性が確認されていないと強硬な主張があり、抗生物質耐性マーカーの利用禁止は入らなかった。

 花粉症緩和米などの栄養強化GM作物・食品は、新たに生成される機能成分が組み換え遺伝子の働きによるため、コントロールできないなどの問題があり、「実質同等性」が成り立たないにもかかわらず、実質的な議論はなかった。

 低レベル汚染の問題は、輸出国では承認されている一方、輸入国で未承認の遺伝子組み換え食品が「混入」していた場合の安全性評価をどうするかというガイドライン。これは、スターリンクやBt10のような未承認品種の混入に悩まされている米国が2005年に持ち出してきたもの。今回、「低レベル」の基準は、リスクマネジメント(政策)の問題であるとして、どのような数値になるのかという議論がまったくなされないまま、先進国のごり押しが通った。輸入国が輸入拒否の権限を持つとはいえ、極端な場合、50%の“混入”でも「低レベル」とすることが可能となるという代物であり、立場の弱い途上国が米国のような輸出国に押し切られる可能性が大きい。この問題では、原則公開されるデータベースを作ることが条件となった。GM企業がどの程度の情報公開を行うのか、はなはだ疑問だ。

 一方、今回のバイテク部会の決定に関して、欧米の遺伝子組み換え推進団体は、ことに低レベル汚染について、低レベル汚染が現実の問題であるとしてこの決定を「歓迎」するとの声明を出している。

 CropLife は9月28日、バイテク部会の決定が「国際的な進歩」であるとし、「農産物の低レベル汚染は、世界的な穀物生産や輸送にとっては現実である。この問題を取り扱う方法の一貫性の不足は、追加費用と不確実性を農業市場に課して、大きな取引の混乱につながる」と歓迎している。
 ・Croplife, 2007-9-28  ・EuropaBio:Press Release, 2007-9-28