最終更新日:2008年12月25日
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2008.12.25 No.503
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2009年12月の農と食

2008.12.25 No.503
■家畜改良センター、体細胞クローン牛から撤退

輸入のための体細胞クローン家畜の解禁がより鮮明に

 12月25日の北海道新聞によれば、(独)家畜改良センター・十勝牧場は今年度限りで体細胞クローン牛の生産から撤退することを決めたという。撤退理由としては、成功率の低さ、不採算、消費者の不理解があげられている。十勝牧場は日本最大の体細胞クローン牛生産拠点で、これまでに国内で生まれた体細胞クローン牛557頭の約2割、102頭を生産してきた。

 ・北海道新聞, 2008-12-25

 農水省は12月22日、クローン家畜の現状について9月30日現在の国内のデータを公表した。これによれば、体細胞クローン牛は557頭が生まれ、このうち82頭が育成・試験中、14頭が受胎中としている。体細胞クローン牛は、妊娠率が低い上に死産も多く、正常出産は数%程度と低く、生産コストが数百万円といわれてきたが、北海道新聞では具体的に約400万円という数字が明らかにされている。

 ・農水省, 2008-12-22

 体細胞クローン家畜の食用化については2006年から欧米で動きが急になり、米国食品医薬品局(FDA)は2008年1月15日、体細胞クローン家畜とその子孫は食品として安全との最終報告書案を公表し、食用化へ踏み出していた。2007年9月には、食品安全委員会は自らの判断により食品健康影響評価を行うべき案件として体細胞クローン牛を挙げていた。厚労省は2008年4月、正式に「体細胞クローン技術を用いて産出された牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品の安全性について」の食品案全員会の食品健康影響評価を求めていた。これを受け同委員会は2008年5月より、新開発食品専門調査会のワーキンググループで体細胞クローン家畜由来食品の安全性審査を行ってきている。

 ・食品安全委員会 新開発食品専門調査会

 共同通信は2008年5月9日、米国政府が日本政府に対して1月中旬ごろから、体細胞クローン牛の食肉や加工製品の輸入の検討を非公式に打診してきた、と報じている。この打診に日本政府は「十分に安全性を調査した上で検討する見通し」と回答したとしている。米国政府は、FDAの最終報告書の公表と前後して、早くも輸入圧力をかけてきている、ということだ。

 ・共同通信, 2008-5-9

 国内最大の体細胞クローン牛の生産拠点である十勝牧場が撤退を決めたということは、食品安全委員会で行われている「体細胞クローン家畜由来食品の安全性」の審査が、米国産クローン牛の食肉や加工製品の輸入に対して大きな意義を持つことなることを意味するだろう。輸入圧力に対する解禁のための安全性審査にすぎない、ということがより鮮明になったというべきだろう。

 日米が解禁へ向かっている中、欧州議会は2008年9月3日、クローン動物の食用禁止と輸入禁止について賛成622、反対32の圧倒的多数で採択している。

 ・EUROPEAN PARLIAMENT, 2008-9-3