対GM農民保護法が発効
米国カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事は9月27日、8月末に同州議会を通過していた法案541に署名し、モンサント社などのバイテク企業の「脅迫戦術」から農民を擁護する法律が発効した。
・カリフォルニア州議会, AB541食品安全センター(米国)などによれば、遺伝子組み換え作物の特許権を持つモンサント社は、無断で農民の土地に立ち入り、サンプルを採集し、同社の特許権侵害で法外な賠償を取り立ててきた。この「特許権侵害」の多くの原因が、隣接する圃場から流出する花粉による交雑など意図せざる場合であるといわれている。このようなモンサント社の横暴の一端が、カナダのナタネ栽培農民であったシュマイザーさんの裁判で明らかにされている。
同州のハフマン上院議員は2007年2月、こうした状況に歯止めをかけるものとして法案541を提案した。当初は成立が危ぶまれていたが、いくつかの修正を経て8月29日の州議会で成立し知事の署名待ちとなっていた。知事の署名に、この法案541の成立に運動を続けてきたカリフォルニア州の農業団体など13団体からなる Genetic Engineering Policy Projectは、「もはやモンサントの脅迫戦術は不可能になった」と発効を歓迎する声明を出している。
・Genetic Engineering Policy Project今回発効したカリフォルニア州のこの法律では、厳しい手順によりモンサント社のようなバイテク企業による一方的な侵害立証を制限し、故意でない限り意図せざる交雑などについて、栽培農民の側に責任がないことを明記している。
- 特許権者は、あらかじめ特許権侵害や契約違反の疑いのある農民に対して、書面で立ち入りとサンプルの採取について許可を得なければならない。
- 同時に、その書面のコピーを州当局に提出しなければならない。
- しかし、立ち入りを要請された農民は拒否ができる。
- それでも立入りとサンプリングを求める場合には、州裁判所の許可を得なければならない。
- サンプリングに関して、どちらかの側から要請があれば、州当局あるいは第三者がサンプリングを行い、その費用は特許権者が支払う。
- サンプリングの場所と時間は24時間以上前に通知される。
- 分析結果は、分析終了後30日以内に双方に通知される。
- 特許遺伝子が検出されたとしても、故意でなければ農民に責任はない。
この法律の重要な点は、一方的かつ恣意的ではない公正なサンプリング手順を決めていることと、意図せざる栽培や交雑による栽培農民の責任を明確に否定していることである。この法律に従えば、カナダのシュマイザーさんのケースは何のの問題もないことになるだろう。この法律の発効により、モンサント社に代表されるバイテク企業に一定の制約を加えることになる。
これまで特許を盾にして、農民から不当な「賠償金」を取り立ててきたモンサント社による農民攻撃については下記に詳しい。
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