最終更新日:2008年9月13日
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2008年9月の農と食

2008.9.13 No.501
■米国、3例目のBSEは遺伝性 危ない米国産牛肉
 米国農務省国立動物病センターなどの研究チームは9月12日、2006年3月に見つかった米国3例目のBSE牛が遺伝子の異常から異常プリオンたんぱく質を体内で作ることが分かった、とPLoS Pathogens(電子版)に発表した。この発表によれば、遺伝子変異による最初のBSE牛であり、この遺伝子の変異はヒトの変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)と同じ変異であるしている。また最新の疫学的研究によれば、牛におけるこの遺伝子変異は0.05%以下であるとしている。
 ・PLoS Pathogens, 2008-9-12
 この研究チームの一人であるユルゲン・リヒト氏(現カンザス州立大教授、国際獣疫事務局顧問)は、「世界中のどこでも、BSEがないという国であってもBSEは起こりうる」と警告している。リヒト教授は、牛の遺伝子検査が必要であり、彼の研究チームはすでに検査システムの特許出願を行ったという。米国特許の検索では、まだ公開されていないようだ。
 ・EurekAlert, 2008-9-11

 従来、BSEは肉骨粉などを解して異常プリオンたんぱく質が“感染”し、脳内で異常プリオンたんぱく質を増加させることで発症するとされたきた。この研究の示すことは、理非と教授の言うように、いくら飼料規制を行ったとしてもBSEの発生を防ぐことは出来ないということに他ならない。米国は2007年5月、OIE(国際獣疫事務局)より「管理されたリスクの国」とのお墨付きを得ている。しかし、2008年に入ってBSEの危険性が高いといわれているヘタリ牛(ダウナー牛)を肉牛として処理し、それが学校給食にも供給されていたことが暴露されている。米国のBSE検査体制はザルのようなものと言わざるを得ないだろう。

 米国においてBSEの自主検査を求めた食肉加工業者のCreekstone社による訴訟に連邦地裁は2007年3月、ク社の訴えを認める判決を下していた。この判決に米国農務省は控訴していた。この8月29日、ワシントン連邦高裁は、民間業者による検査は「安全性を保証できない」という1審と逆の判決を下している。
 ・共同通信, 2008-8-30

 米国では。年間3千万頭が肉牛として処理されている。リヒト教授らの研究によりその遺伝子変異が0.05%以下であるとしても、最大に見積もっても年間15,000頭に問題の遺伝子変異が起きている可能性があることになる。これらすべてがBSEを発症していない潜在的な感染牛ではないとしても、感染牛が紛れ込んでいる可能性が高いといえるだろう。さきの連邦高裁の判決を考えるとき、こうした感染牛をどのように取り除くのだろうか、はなはだ疑問である。こうした米国の政策は、結局「くさい物に蓋」でしかない。そのつけは誰が払うのか。


2008.9.9 No.500
■ライスロンダリング アフラトキシン汚染米はどこに
 9月5日に農水省は、三笠フーズによるアフラトキシンやメタミドホスに汚染された“事故米”のライスロンダリング=偽装転用を公表したが、その全容は、未だに明らかになっていない。

 一番の問題は、アフラトキシンB1に汚染された“事故米”がどこに流れたかという点である。アフラトキシンは自然界最強の発がん物質といわれ、その毒性はダイオキシンの10倍ともいわれる。その中でもB1が最も毒性が強いという。アフラトキシンは、遺伝子の突然変異を起こしやすい遺伝毒性発がん性物質であることから摂取量を可能な限り低くすることが求められ、摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される摂取量である耐容摂取量は設定されていない(食品安全委員会)。
 ・食品安全委員会 アフラトキシンB1について [PDF]

 5日の発表当初、毎日新聞などによればアフラトキシン汚染米約9.5トンの一部、2004年度に三笠フーズに売却されたベトナム産汚染米約3トンが焼酎メーカー3社に流れたという。8日のには、アフラトキシン汚染米の一部が外国産の正規米に混入され販売されたという。

【カビ(アフラトキシンB1)汚染米】農水省,9月5日発表より作成
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  2006年度売却分           Kg
  アメリカうるち精米(0.01ppm)  390.0
  中国うるち精米  (0.05ppm) 5,768.2
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  2004年度売却分
  ベトナムうるち精米(0.02ppm) 3,367.4
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    計9,525.6Kg
 ・農水省, 2008-9-5  ・農水省, 2008-9-9  ・毎日新聞, 2008-9-6  ・毎日新聞, 2008-9-8
 週明けより農水省は、三笠フーズより流れた汚染米を使ったメーカーのうち公表に同意した企業についてのみ実名を明らかにした。その製品が食品として流通しても、同意していない企業名は公表されないというのは消費者無視の姿勢に他ならない。大田農水大臣は9月9日の記者会見において、この点を質問されて次のように答えている。
 「それは安全性についての見方があると思います。非常に危険性が高いということであれば、直ちに公表して回収を急ぐということだろうと思います。安全性(の問題)が低い場合には、結局は公表すべきでありますから、今時点で公表しているわけでありますけれども、バランスを考えるということだと思います。」
 ・農水省, 2008-9-9

 自然界最強の遺伝毒性発がん性物質であるアフラトキシンB1が混入したコメの流通を三笠フーズが認めている以上、どこに、どれだけ流れ、どのような状況であるかを早急に明らかにする必要がある。大田農水大臣の発言を見ると、アフラトキシンの混入はさしたる危険ではない、という立場に立っているということだけははっきりしている。どれが安全であるか分からなければ、消費者は危ないと疑わしきものを避けるしか身を守る方法はない。農水省が同意を条件に公表を渋る以上、“風評被害”が当然のものとして起きるだろう。そもそも、農水省の杜撰な管理が招いた今回のライスロンダリング・スキャンダルは、単に違約金を取るというレベルの問題ではない。消費者の健康の問題なのだ。

 もう一つの問題は、今回の汚染米が全量ミニマムアクセス米(MA米)であるという点である。WTO(世界貿易機関)の推し進める自由貿易体制が招いた問題なのだ。食の安全を言いながら、食料の海外依存率が60%の現在、輸入食料に依存する日本の食が、実は安心できないものかを如実に示しているといえるだろう。

 このミニマムアクセス米は、年間77万トンの輸入が義務付けられているが。ライスロンダリングが明らかになった5日、2007年度の輸入量が70万トンしか確保できなかったことが明らかになっている。世界的な食糧危機が明らかになり、ベトナムなどのコメの輸出国が禁輸に踏み切る中、日本がミニマムアクセスを根拠にして高値でコメを買いあさることが、食料危機にあえぐ国々をより厳しい状況に追い込むことは明らかである。ここにも無理を押し通すWTOの不条理が現れている。
 ・毎日新聞, 2008-9-5