最終更新日:2009年12月24日
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2009年12月の農と食

2009.12.24 No.505
■“共同戦線”でGM小麦の復活を狙う米国小麦業界
 2004年、米国やカナダのみならず日欧の消費者団体などの反対に直面したモンサントは、ラウンドアップ耐性GM小麦の商業栽培を断念した。この頓挫から5年、米国などの小麦生産業界はGM小麦の“復活”に向けて大きく舵を切っている。

 2006年2月には、米国小麦協会と全国小麦生産者協会は共同して、シンジェンタ社の遺伝子組み換えフザリウム耐性小麦の推進を決議する一方、食品業界への働きかけを強めていた。

 2009年5月14日、米国小麦協会など米国、カナダ、オーストラリアの小麦生産者団体は、遺伝子組み換え小麦の導入を是とする共同声明を発表した。この中で、2004年に問題となったラウンドアップ耐性のような除草剤耐性ではなく、害虫や病気、干ばつなどへの抵抗性の獲得が可能となるとしている。そして、GM技術は唯一ではないが問題解決の重要な要素であるとも評価し、GM小麦を導入しなければ、他のGM作物に農地を奪われる、と危機感を表明している。その上で、3カ国の小麦生産団体が同時にその商業化へ到達するように努力するとしている。

 ・共同声明, 2009-5-14

 これらの小麦生産団体は、5年前のモンサントの敗退の教訓とし、小麦主要生産国の“共同戦線”によって突破しようとしているかのようにも見える。消費者が選択の余地がない状況を作り出せば突破できる、とみているということだ。

 この“GM小麦共同戦線”に対して6月1日、米国、カナダ、オーストラリアの3カ国の生産者団体や消費者団体、環境団体など15団体は商業化反対の共同声明を公表した。


 おりしも6月18日、カナダ小麦局(Canadian Wheat Board)は小麦生産農家の多くがGM小麦に反対しているという意識調査を発表した。この調査は09年4月から5月にかけて1300人を対象に行われたもので、69%がGM小麦を導入すべきではないとする一方、すぐに導入するべきとしたのは9%に過ぎなかった。また、51%がGM小麦に興味がないとしている。カナダではGM小麦が歓迎されている、とは言えない。

 ・Canadian Wheat Board, 2009-6-18

 モンサントは2009年7月14日、北米の小麦関連研究開発会社であるWestBred社を買収し、同社の持つ小麦の遺伝資源を手に入れた。この買収に関する発表でモンサントは、明確にラウンドアップ耐性を除外し、干ばつ耐性小麦とチッソ利用率の向上に焦点を当てた開発目標をあげている。少ない水と少ない肥料で収量を上げようということである。しかしモンサントは、その新しい開発目標の商業化には8年から10年かかると見込んでいる。

 ・Monsanto , 2009-7-14

 日本の普通小麦の輸入量は約550万トンで、約360万トン(65.6%)を米国から輸入している。(2008年、貿易統計)

輸入先 輸入量[トン] シェア
米国 3,603,277 65.6%
カナダ   965,058 17.6%
オーストラリア   924,661 16.8%
フランス    3,509  0.1%
合 計 5,496,505
  (出典:財務省 2008年貿易統計)

 米国がGM小麦の商業化に踏み切れば、“GM小麦共同戦線”のカナダやオーストラリアも歩調を合わせて商業栽培に踏み切る可能性が大きい。その場合、これら3カ国からの輸入小麦に依存している日本の消費者が大きな影響を受ける。

 2004年には、カナダなどの小麦生産者と、その小麦を輸入する日欧の消費者の“共闘”による反撃が功を奏し、モンサントはGM小麦の商業栽培から撤退した。現在、カナダでは多くの生産農家が反対している。米国でもワシントン州の生産農家が商業財倍への反対運動を始めている。彼らは、小麦生産量の85%を輸出しているワシントン州の最大輸出先が日本であり、GM小麦の商業化によりその市場を失うことを恐れている。しかし、「日本はGM小麦に反対しているが、GM菜種は受け入れた」とワシントン州小麦委員会の代表は語っている。世界的な需給の逆転が生産者優位の状況に、日本の消費者はその足元を見られているといってもよいだろう。

 ・Capital Press, 2009-12-19