2010年2月10日、GM小麦の商業栽培に反対する日本、カナダ、米国、オーストラリアの4ヵ国の団体は、遺伝子組み換え小麦(GM小麦)の商業栽培に反する共同声明への賛同団体が26カ国、233団体に達した、と発表した。
米・加・豪3カ国の大手小麦生産者団体は2009年5月、GM小麦の商業栽培を求める共同声明を発表した。これに対し、米国、カナダ、オーストラリアの3カ国の生産者団体や消費者団体、環境団体など15団体が商業化反対の共同声明を公表し、賛同を募っていた。日本からは生協や有機農業関係団体など80団体が署名している。
・Press release, 2010-2-10・プレスリリース(和文), 2010-2-10
・署名団体リスト
・共同声明, 2009-6-1
米国や日本で同時に発表されたプレスリリースは、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンのアンケートに答えた、日本の製粉業界団体によるGM小麦反対の立場を紹介している。製粉協会・門田正昭専務理事は、次のように明確に反対を表明している。
日本の消費者がGM農産物の人体に対する安全性および環境への影響に疑念をもっている現在の状況下では、GM小麦が含まれる、あるいは含まれているかどうかわからない小麦を原料とした小麦粉およびその製品は日本の市場では受け入れられないと考えている
また、モンサントの「勘違い」を指摘した全米家族農業同盟のデナ・ホフ氏の次の発言も紹介している。
アメリカの家族経営農家はモンサント社から小麦を守るためにあらゆることをやってきた。企業が種子も含め生命特許権をもつことは到底受け入れられない。
GM小麦は農産物や食糧供給を汚染し、有機農産物を破滅させる。アメリカの農民はすでにGM小麦を拒否している。モンサント社は農家がいつかGM小麦を受け入れるかもしれないと思い違いをしている
この発表に先立つ2010年1月27日、米国中西部の農業生産者団体WORC(Western Organization of Resource Council)は、GM小麦の商業栽培が米国小麦産業に及ぼす影響についての分析レポートを公表した。このレポートでは、米国産小麦は約40%の価格低下を招くだろうと分析。GM小麦に慎重なEUや日本は、その供給をロシアなど旧ソ連諸国にシフトすることにより、米国のシェアと価格の低下を招くとしている。2009年シーズンの米国産小麦の世界シェァは、生産高で約10%、輸出では約20%を占めている。
・WORC, 2010-1-27モンサントは2004年、除草剤耐のGM小麦の商業栽培を断念した。商業化までにはまだ8年近くかかるといわれる現在の開発の狙いは、干ばつや塩分に耐性があったり、フザリウムや赤さび病などの菌類による病害に耐性のある品種とされている。レポートでも近年の品種改良の手法が、遺伝子組み換えを使わず(非GM)、化学物質よる突然変異とMAS技術(Marker Assisted Selection、DNAマーカー選抜技術)を応用した手法が注目されている、としている。
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