最終更新日:2010年12月31日
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2010年12月の農と食

2010.12.31 No.510
■神奈川県、遺伝子組み換え交雑防止条例を施行へ

 神奈川県は、2011年1月1日より「遺伝子組換え作物交雑等防止条例」を施行する。説明会などによればこの条例は、一般作物と遺伝子組み換え作物との「共存」を前提にして、遺伝子組み換え作物からの交雑防止を目的としているが、必ずしも防止できるような内容ではなく、かえってGM汚染や交雑を拡散させる可能性をはらんでいる。

 ・神奈川県

 条例では、栽培に先立って関係者への「説明会」が「義務」とされる。この関係者の対象は、栽培農地周辺の、しかも隔離距離内の「一般作物を業として栽培する者」か地主、農協などに限定されている。たとえ隣接地で耕作していても農業者として認定されていなかったり、家庭菜園の場合は対象とならない。当然のことながら消費者は含まれていない。

 神奈川県の隔離距離は農水省基準に合わせている。すでに施行されている北海道や新潟県の条例では隔離距離は、農水省基準の2倍から10倍を規定している。北海道は自ら交雑試験を実施し、農水省の基準で交雑が生じるケースを確認している。

  ---------------------------------
 イネ      30m
 ダイズ     10m
 トウモロコシ  600m(300m)
 ナタネ     600m(400m)
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 この条例の運用にあって神奈川県は、届け出された遺伝子組み換え作物栽培計画を積極的に公開する姿勢にはない。「頻繁に県のHPをチェックして、検討会の開催を確認いただければよい」とは、説明会における神奈川県の担当者の弁である。一部農協と隣接農家のみが知る遺伝子組み換え作物の栽培が始まる可能性がある。

 一般作物と遺伝子組み換え作物の「共存」を前提とするこの条例では、被害補償については全く触れられていない。被害が生じたら、当事者間の話し合いや裁判で解決すればよい、というのが県の姿勢である。有機農業ネットワーク神奈川が県に提出した意見で触れられているように、「共存」政策のドイツでは、遺伝子組み換え作物の栽培農地の公開とともに厳格な無過失損害賠償責任が明確に規定されている(2010.11.24、ドイツ連邦最高裁が合憲判決)。

 ・有機農業ネットワーク神奈川
 ・m&c(ドイツ), 2010.11.24

 神奈川県のように農家と家庭菜園が入り組んで混在するような都市近郊では、近隣でGM作物が栽培されていることを知らずに、ナタネやトウモロコシを栽培することは自然である。近年、在来種を中心に自家採種が盛んになってきており、家庭菜園で自家採種した種子の交換会も各地で開催されている。このような中で、条例に基づいて遺伝子組み換え作物の栽培が容認された場合、交換会やネット上などの個人同士の交換を通して、汚染された種子が全国各地に拡散する危険性は否定しきれない。

 折しもオーストラリア・西オーストラリア州では、隣接して栽培された遺伝子組み換えナタネによる汚染が見つかり、有機農家の有機認証が取り消され問題となっている。このケースでも、州政府は「共存」と言いつつ、ドイツのような実効性のある仕組みを作ることなく、有機農家などの反対を押し切って遺伝子組み換えナタネの栽培を許可している。

 ・Australian Broadcasting Corporation, 2010.12.27

 北海道や新潟県では、最高1年以上の懲役を罰則で規定しているが、条例制定後に新たな遺伝子組み換え作物の栽培は、研究機関の試験栽培を含めて実施されてない。神奈川県には、サカタのタネ(種苗会社)や、明治大学、東京農業大学、日本大学など農学系の大学やバイオ関連企業が立地している。この条例施行が、新たな遺伝子組み換え作物栽培の引き金となるのか、注意深く監視する必要がある。

【参考】
 ・北海道

 ・新潟県