最終更新日:2011年12月21日
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2011年12月の農と食

2011.11.21 No.531
■保育園・幼稚園の高さが目立つ川崎市放射線調査

 川崎市は、10月26日から11月25日にかけて測定した2回目となる市内の保育園・幼稚園、学校など約450か所のガンマ線の空間線量率を公表している。すべての地点で、園庭・校庭の中央部の地上から1mと5cm、砂場中央(高さ表示なし)を測定している。しかし、公表したデータは表形式にもされず、テキストで羅列しただけである()。使う側に立ってのまとめ方がなされていない。“測定してる”というアリバイ作りと勘繰られても仕方のない公表のやり方である。

 ・川崎市

 この公表データについては、12月15日の東京新聞が、中原区の線量の高い地域の分析を記事にしている。記事は線量の高い原因として、周辺の東京都大田区の多摩川清掃工場や、市内高津区の橘処理センターのゴミ焼却場ではないか、と仮説を提示しているにとどまっている。焼却した場合、放射性物質がフィルターで取りきれていない可能性についても、川崎市危機管理室が、バグフィルターで補足しきれていない可能性を認めた、としている。

 ・東京新聞, 2011-12-15

 そこで、公表データをもとに表形式にまとめた。このうち地上5cmのデータをもとに、各測定個所の線量を4つのランクに分け、地図上にプロットして視覚化を試みた。地図には市内4か所と、東京都の2か所のゴミ焼却場の位置もプロットした。

川崎市内放射線量測定結果(マップ) 川崎市内放射線量測定結果(マップ)
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 全体の空間線量率は、雨どいの下などでは0.3μSv/h を超えるところもあるものの、5cm高さでは、最高値が0.12μSv/h にとどまっており、福島県などに比べれば格段に低い値となっている。地域的には、海寄りの川崎区、幸区、中原区が高く、内陸側の他の4区に比べこの3つの区は、0.1μSv/h 以上が10%以上であり全体的に高めに出ている。多摩川沿いの地域が高くなっているが、川を挟んだ東京都大田区、世田谷区でも川沿いに高くなっていることが予想される。

川崎市内放射線量分布:地区・施設別平均(グラフ) 川崎市内放射線量分布:地区・施設別平均
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川崎市内放射線量分布:地区別(グラフ) 川崎市内放射線量分布:地区別
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 施設別では、保育園・幼稚園の園庭と公園の放射線量が高くなっている。とくに公園の放射線量は全区で高くなっている。幼い子供ほど高い放射線に曝されている、という皮肉な結果になっている。放射線に対する感受性が高いといわれている幼い子供には、比較的低い線量率とはいえLNT仮説に従えば被ばくは極力避けたほうが良いし、地面がむき出しの園庭では、舞い上がったチリによる内部被ばくの可能性もある。川崎市では0.19Sv/h 以上を除染対象としている。公表された限りでは、この測定結果により、雨どいの下などの局所的に高い部分についてのみの“除染”で、これらの保育園・幼稚園へ園庭などへの対応はなされていない。

川崎市内放射線量分布:施設別(グラフ) 川崎市内放射線量分布:施設別
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 これら一連のグラフと表形式に落としたデータは、次のファイルにまとめた。

 ●隣接ゴミ焼却場の影響は?

 川崎市内には、北部より王禅寺、橘、堤根、浮島処理センターの4つのゴミ焼却場がある。周辺には、東京都大田区の多摩川清掃工場、世田谷区の世田谷清掃工場、東京都多摩市の多摩清掃工場が、直線距離にして4キロほどで隣接している。

  南部にある堤根処理センター周辺も部分的には高いところもあるが、必ずしも周辺一帯が高くなってはいない。また、北部の王禅寺、橘の2つのおゴミ焼却場周辺の放射線量ががそれほど高くなっていない。したがって、地域的に海寄りの3つの区がより高くなっている原因を、単純に、これらのゴミ焼却場とするには、隣接する東京都、横浜市の同じようなデータを比較しない限り断定はできないし、地形的な影響も考える必要があるだろう。

 川崎市の公表データによれば、焼却灰のうちフィルターで捕集された飛灰に含まれる放射性セシウム(合計)は11月24日現在、キログラム当たり1千ベクレル前後含まれている。多摩清掃工場(多摩市)の飛び灰も同程度の放射性セシウムを含んでいる。

飛灰放射性濃度:Cs134+cs137(グラフ) 飛灰放射性濃度:Cs134+cs137
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 ゴミ焼却場では、排気中のダストを排出しないように、バグフィルターというダスト捕集用のフィルターを備えている。このバグフィルターで放射性物質が回収できるかという問題について、環境ジャーナリストの青木泰氏は、バグフィルターの問題を指摘して「回収できない」と論じている。その論拠の一つに、ゴミ焼却場の稼働と周辺小学校での喘息の被患率の関係を挙げている。当然、ガス化した放射性物質は、フィルターでは回収できない。今回の川崎市の調査ではその影響は、明らかではない。横浜市のデータにより、川崎市のごみ焼却場の影響の有無が明らかになるだろう。

 ・青木泰のブログ, 2011/09/26