
消費者委員会で審議開始

消費者委員会表示部会(第18回)は6月25日、モンサントのステアリドン酸産生遺伝子組み換えダイズ(MON87769)に関して、食品の品質表示基準に「ステアリドン酸産生」を追加する遺伝子組み換え食品の表示基準の改正案の審議を始めた。このGMダイズについては、2011年7月11日付けで厚労省より食品健康影響評価の依頼が行われ、食品安全委員会で評価中であり、その進展状況から、近く「ヒトの健康に影響はない」との評価結果が出される見通しになったものと思われる。
・消費者庁食品表示課, 2012-6遺伝子組み換え食品の表示基準における特定形質の表示は、「高オレイン酸」のと「高リシン」の2つが規定されている。食品安全性の審査を終えたGM作物では、「高オレイン酸」はデュポンのGMダイズ3品種が、「高リシン」ではモンサントの2種類のトウモロコシが該当し、表示基準の別表3に規定されている。食品への表示としては、原材料名の欄に「食用大豆油(大豆(高オレイン酸遺伝子組換え))」のように表示することになる。
・消費者庁告示, 2011-8-31・消費者委員会資料, 2012-6-26
ステアリドン酸はオメガ3脂肪酸の一つであり、ヒトの体内でα−リノレン酸から変換し生成され、エイコサペンタエン酸(EPA)へと変換される。α−リノレン酸からの変換効率が低いとされている。モンサントのステアリドン酸産生GMダイズ(MON87769)は、サクラソウとアカパンカビ由来の改変遺伝子が組み込まれ、ステアリドン酸産生をうたっている。08年の生物多様性影響評価書に記載のデータでは(「表2 一般的なダイズ油、ステアリドン酸産生ダイズ油及び非組換えダイズA3525 油の脂肪酸組成の比較」P.26)、非GM大豆(A3525)の精製油の脂肪酸組成においてステアリドン酸がNDであるのに対して、GMダイズMON87769は、14.8%〜28.7%含有としている。
なお、このGMダイズは、アグロバクテリウム法により組み込み遺伝子を挿入し、同時に組み込んだ抗生物質耐性遺伝子とグリホサート(ラウンドアップ)耐性遺伝子を利用して選抜されている。
こうした動きは、日本におけるGM作物の開発と無縁ではないだろう。2002年に開発を断念した、愛知県農業総合試験場とモンサントによるGMイネは除草剤耐性であった。その後、農業生物資源研究所では、スギ花粉症緩和GMイネや複合病害抵抗性イネの開発が進められ、岡山大学などでは低カドニウム吸収イネも開発されている。2000年前後に多くの日本企業がGM開発から“撤退”するなか、開発が継続している作物がイネであることに注目しておくべきではないか。
米の消費量が落ち込む一方では、スーパーの一つである西友がMA米を利用して輸入した安い中国米が「飛ぶように」売れているという。TPP参加が決まれば、米生産は壊滅的な影響が予想されている。そうした状況で生き残る可能性があるとすれば、機能米や飼料用イネではないだろうか。その場合、消費者の抵抗感のより少ない機能性GMイネや、害虫抵抗性の飼料用GMイネの栽培が考えられはしないか。