GMトウモロコシ35品種を「安全」と評価
3月18日開催の食品安全委員会で遺伝子組み換え食品等専門調査会は、シンジェンタ申請の6系統の掛け合わせ遺伝子組み換えトウモロコシ35品種について、安全性の確認不要の判断を報告した。これにより食品安全委員会としての意見募集は行わず、近く厚労省から食品として承認されるものと思われる。
●掛け合わせ品種は 自動的に承認の仕組み
このシンジェンタ申請の6系統の掛け合わせGMトウモロコシ35品種は、2月20日に厚労省より評価依頼がなされたが、6系統の親品種がいずれも「安全」と評価済みのため、実質的な評価が行われないまま「評価不要」とされた。今回の35品種のほかの22品種はすでに、同様に安全性の確認不要と判断されている。評価依頼から判断まで最短2週間で、実質的評価抜きで評価を終えている。
・遺伝子組み換え食品等専門調査会, 2013-3-14掛け合わせの親となるトウモロコシは、以下の6系統であり、掛け合わせによっては、2種類の除草剤耐性と5種類の害虫抵抗性を兼ね持つことになる
- Bt11系統 (シンジェンタ)
チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性 - MIR162系統 (シンジェンタ)
チョウ目害虫抵抗性 - MIR604系統 (シンジェンタ)
コウチュウ目害虫抵抗性 - 1507系 (ダウ・ケミカル)
チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性 - Event 5307系 (シンジェンタ)
コウチュウ目害虫抵抗性 - GA21系 (モンサント)
除草剤グリホサート耐性
これらの掛け合わせには次の合計57通りがある。
- 6系統全ての掛け合わせ品種
- 5系統の掛け合わせ品種(6品種)
- 4系統の掛け合わせ品種(15品種)
- 3系統の掛け合わせ品種(20品種)
- 2系統の掛け合わせ品種(15品種)
このうち22品種は安全性評価が終了しており、安全性確認は不要と判断されている。今回、残りの35品種の安全性評価を一括して行った。親系統のいずれも安全性評価が終了しており、35品種のいずれも「ヒトの健康を損なうおそれはないと判断」されている。このような親品種が承認されている場合では、ほぼ自動的に、実質的な安全性の評価を行うことなく、「安全」と評価が可能な仕組みが出来上がっている。
・食品安全委員会決定, 2012-7-21●米国輸出量の3割が日本向け
日本が輸入するトウモロコシ約1千5百万トンの9割、約1千3百万トン余りが米国産である。一方、米国のトウモロコシの輸出量は約4千万トン。米国の輸出量の3分の1が日本向けとなっている(海外食料需給レポート)。
・農水省, 2013-2-28このため、米国のトウモロコシ生産者団体などは、栽培する遺伝子組み換え品種の選択について、日本の承認を一つの目安にしている。05年、シンジェンタ社のGMトウモロコシBt11に未承認のBt10の混入が発覚した。05年5月から06年9月にかけて、日本の輸入検査で4万1千トン余りのトウモロコシからBt10が見つかり、輸入禁止となっている。
この後、未承認のGM品種の混入に対し、その割合が“微量”であれば認めることとなった。11年9月に、「組換えDNA技術によって得られた生物の全部又は一部を含む飼料の安全性を確保する上で我が国と同等又はそれ以上の水準の安全性に関する審査の制度を有すると農林水産大臣が認める外国政府の審査により安全性が確認されている飼料」であれば、混入率が1%以下ならば飼料として使用してもよい、農水省の告示という形で基準が“改正”された。これは、日本で承認されていなくても米国で承認済みであれば、1%以下の混入ならば「問題なし」とするものであり、05年のMIR604のようなケースでは、混入ロットの多くの輸入が認められていた可能性が強い。
・農林水産省告示第1674号, 2011-9-107年にシンジェンタが日本未承認のMIR604の種子販売に踏み切ったとき、米国の流通業界までが、交雑や混入の可能性に「スターリンクの影」と懸念を示していた。このとき日本の農水省や食品安全委員会は、MIR604の承認作業を急ぎ、トウモロコシの収穫期に間に合わせている。米国の生産者、流通業者にとって、日本の承認作業が終わっていないと作付品種の選定に影響が出る。その一方で、輸入の9割を米国に依存する日本は、米国に慮ったかのように、米国の承認に合わせた承認を行っている。例えば、ダウ・ケミカルの除草剤2,4D耐性GMトウモロコシDAS40278のケースでは、30万通以上の反対意見の前に、米国当局は承認を先延ばしにしているが、日本ではあっさりと承認されている。場合によっては、米国に先んじて承認しているのも実態である。
日本の輸入トウモロコシ年間約1千5百万トンのうち、米国産のシェアは90%を占める。一方、米国のトウモロコシの遺伝子組み換え比率は、米国農務省の統計でも90%を超えている。単純計算では、日本の輸入トウモロコシの8割以上が遺伝子組み換え品種である。飼料用トウモロコシは、コメの国内生産量約8百万トンを超える1千1百万トン。国産であったとしても畜産物の多くが、GMトウモロコシをエサとして育てられていることになる。TPP参加により、日本の畜産が大きな打撃を受けると政府は試算している。当然ながら、この飼料用トウモロコシの輸入量は激減するだろう。
消費者として見たとき、この激変で増大する米国などからの輸入畜産物の多くが、GM飼料による食肉である可能性が大きいと思われる。現在のGM飼料による食肉しか選択肢がほとんどない状況が、大きく変化するわけではない。しかし、一人ひとりが、肉を減らす、遺伝子組み換え飼料を使っていない肉や卵を選ぶなどの、小さいけれども食の中身を変えることは、誰にでも、今すぐにできることだ。