
急ピッチの月齢引き上げ

食品安全委員会は4月8日、プリオン専門調査会の取りまとめたBSE対策の検査月齢を48ヵ月齢以上に引き上げる規制緩和を盛り込んだ評価書(案)を正式に決定した。この月齢規制緩和は、米国の要求する月齢規制撤廃ヘの道を開くことになるだろう。
食品安全委員会はこの評価書(案)について、4月9日から5月8日まで、意見募集(パブリック・コメント)を始めた。併せて、4月下旬に東京と大阪で、「リスクコミュニケーション」と称して検査月齢引き上げの説明会を開催すると発表したが、いつもの“ガス抜き”を演ずるだけだ。
・食品安全委員会, 2013-4-9 ・食品安全委員会, 2013-4-9また、厚労省は食品安全委員会に対して4月2日付けで、アイルランドとポーランドからの牛肉輸入について、現行の輸入禁止から30ヵ月齢までの輸入を認めるための食品健康影響評価を求めた。欧州からの牛肉輸入は2月1日に、フランスとオランダからの輸入が解禁されたばかりである。
・厚労省, 2013-4-2すでに報じられているように、厚労省は、4月3日のプリオン専門調査会の取りまとめを受けて、7月からの検査月齢の引き上げの方針を固めたという。BSE対策の検査月齢はこの4月1日より30ヵ月齢以上に引き上げられたばかりだというのにである。同時に、都道府県に対して自主的に行われている全頭検査の廃止を要請するという。東京新聞によれば、2011年度に屠畜された牛約118万頭のうち、48ヵ月齢以上は約20万頭であるという。検査体制は大幅に縮小されることになる。
・東京新聞, 2013-4-4この急ピッチに進められる検査月齢の引き上げは、当然、米国が要求している輸入牛肉の月齢制限廃止へ道を開くものだ。米国は、BSE対策は万全と自称するものの、検査が検査になっていないことは周知のことでもある。それにもかかわらず米通商代表部(USTR)は、日本の月齢制限が厳しいとその撤廃を求めてきている。この検査月齢に関する規制緩和は、明らかになってはいないものの、7月交渉入りを報じられているTPP交渉に関する日米事前交渉の合意の基づくものではないのか。
こうなれば、少なくとも「食べない」という自衛策を取らざるを得ない。米国産牛肉の積極使用を公言している外食産業では、当然のことながら「食べない」といったことは、すぐにも可能なことだ。
先ごろ、米国の食品販売大手のホールフーズが、同社の全取扱品目に対してGMO表示を行うと発表したことが、消費者のGMO離れを促進するのではないか、といった分析がされている。米国・カリフォルニア州では昨年10月、GM推進企業連合の圧倒的な物量戦に僅差で敗退したとはいえ、GMO表示を「知る権利」だとして住民投票に訴え、多くの賛成を得ている。何を食べているか、その中身をを知ることは「権利」として要求できることを示した。
今回の輸入牛肉の月齢規制緩和に対して、食品企業やレストランなどで、「米国産牛肉不使用」とか「輸入牛肉不使用」といった表示は可能だろうか。我々は知りたいし、外食もそうした表示をするところを望みたい。こうした表示によって、危ない輸入牛肉離れが進めば、なお結構なことだ。