モンサントのGM種子訴訟にお墨付き
米国の控訴裁判所は6月10日、有機農家や有機種苗団体による、モンサントはGM種子の特許侵害を訴えることができないことを求めた裁判で、モンサントのウェブサイトに掲載した一文を根拠にして、訴えを却下した。判決によりモンサントは、今後も「混入は意図的」として告訴できるお墨付きを得たともいえる。
この裁判は、モンサントの遺伝子組み換え種子の混入と、それによるモンサントの告訴を懸念した有機生産者や有機種苗団体などが、集団で2011年3月に提訴していたもので、モンサントはGM種子の意図せざる混入を訴えることができないとの確認を求めていた。一審は2012年2月、モンサント勝訴の判決を下し、原告が控訴していた。
●「意図的」は 誰が決めるか
控訴審判決は、モンサントがウェブサイトに掲載した「故意でなければ、(モンサントの)GM種子あるいはその形質の存在に対して特許権を行使するのは、モンサントの方針ではない」との一文を根拠にして、原告の訴えを却下した。判決は、このモンサントの方針表明を“義務的”なものとして、混入量が1%未満であれば、モンサントによる訴訟から除外される、とした。しかし、この判決が指摘したモンサントの“方針”は、混入量については述べていない。
訴訟を提起したPUBPAT(Public Patent foundation)の弁護士でもあるダン・ラヴィチャーは、この判決を「部分的勝利」と評価している。
一方、原告として訴訟にかかわった食品安全センター代表のリチャード・キンブレルは、この判決が意味のあるのもではなく、モンサントは告訴できると指摘している。
この判決は、モンサントの訴訟戦術に一定の歯止めをかけることが可能なのか。公式にモンサントは、混入による告訴をしないという誓約書にはサインしなかったともされる。しかし判決は、同社のウェブサイトの一文で事足りるとした。モンサントは、フリーハンドを確保したといえるだろう。告訴するもしないも、「意図的でない」との判断を、モンサントが握っていることに変わりはない。
・PUBPAT, 2013-6-10この裁判に、生産する有機の種に対するGM汚染に対する懸念などから、有機種苗生産者などの団体・Organic Seed Growers & Trade Association が原告として参加していた。 この訴訟を主導してきたPUBPATは、これまでも、モンサントの基本特許無効の異議申し立てを行うなど、GM特許と闘ってきた団体である。
●多額の賠償金をかすめ取るモンサントの訴訟戦術
食品安全センター(Center for Food Safety)によれば、モンサントは2013年1月までに、GM種子の使用契約(Technology Use Agreement)違反として144件の訴訟を起こし、410人の農家と56の農業法人を訴えている。また、2012年1月に公表のレポートによれば、モンサントは特許権侵害訴訟により72件に勝訴し約2千2百万ドルの賠償を得ている。27件が和解(賠償額は明らかにされていない)、14件が敗訴、11件が係属中です。しかし食品安全センターは、訴訟以前に和解することで、最大1億6千万ドルの和解金を得ていると推定している。
・Center for Food Safety, 2012-1-1関連記事 No.504