
「わたしたちの遺伝子はわたしたちのもの」
米国最高裁は13日、ミリアド社の遺伝子特許の無効を求めた裁判で、DNAのような自然のものに特許を与えられないとして、問題となった遺伝子特許の無効を認める、市民的感覚からすれば極めて真っ当な判決を下した。判決により1万5千件と見られる米国での遺伝子特許が無効となる。
この裁判では、ミリアド社の乳がんと卵巣がんにかかわる2つの遺伝子BRCA1とBRCA2の特許の無効が争われた。特許を持つミリアド社は、この2つの遺伝子検査に3千ドルから4千ドルの高額な検査料を設定するとともに、この遺伝子を使った研究すら禁止していたことから、多くの批判を受けていた。このミリアド社の乳がん遺伝子検査は、女優のアンジェリーナ・ジョリーの乳房切除手術のニュースにより、つい最近一般にも知られるようになっていた。
・PUBPAT ACLU, 2013-6-13この判決にPUBPATとともに闘ってきた全米市民的自由連合(ACLU)はこの判決を、「個別化医療の市民的自由、科学的な自由、患者と将来の勝利」であり「わたしたちの遺伝子はわたしたちのもの」、と歓迎のコメントを出した。この判決により、2つの遺伝子を使った検査や研究が自由できることになる。
・ACLU, 2013-6-13この「遺伝子特許無効」の米国最高裁判決により、すでに米国で特許を認められている、少なくとも1万5千件と推定される遺伝子特許が無効とされることになる。
この判決が及ぼす影響は、かなり広範囲で世界的になると思われる。日欧も含めて世界的に影響が及ぶことになり、各国の特許政策が大きく見直しを迫られることになるだろう。ミリアド社は、問題となった遺伝子に関連して、日本でも3件の特許を取得している。
この判決に関して、米国特許商標庁(USPTO)の公式なコメントはまだない。
裁判にかかわってきた食品安全センターなどは、この判決を歓迎しつつも、産業界などによる判決を覆す議会工作を警戒している。
・Center for Food Safty, 2013-6-13関連記事 No.558