最終更新日:2013年7月29日
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2013.07.29 No.571
■カナダ:野鳥によるGM小麦汚染の可能性
イメージ:小麦

 昨年8月、カナダの試験栽培中の遺伝子組み換え小麦が大型のカナダガンの食害によってGM汚染が拡散している疑いがある、とOTAWA Citizen(カナダ)が7月23日報じた。

 アグリカルチャー・カナダが行っていたカビ毒のフザリウムに耐性を持たせた遺伝子組み換え小麦の試験ほ場で、カナダガンがこのGM小麦を食べ、その糞に残った未消化のGM小麦が拡散している可能性があるというもの。カナダのGM規制機関であるカナダ食品検査庁(CFIA)も認識しているというが、この件に関し回答を拒否した。

 このGM小麦を試験栽培していたアグリカルチャー・カナダは、問題のGM小麦が春小麦であり、広がったとしても冬を越せないとしている。しかし、モンサントは、この5月に明らかになった除草剤耐性GM小麦汚染に関して、自然におかれた春小麦の種子の寿命を2年としており、カナダのGM小麦も翌春に発芽し、自生域が広がっている可能性がある。

 アグリカルチャー・カナダは、カナダガンなどの野鳥対策にボーダーコリーを借りたとも報じられている。

 ・OTAWA Citizen, 2013-7-23

 この5月に米国で発覚したモンサントの除草剤耐性遺伝子組み換え小麦の自生については、いまだに原因が明らかにされていない。05年のバイエルのGM米汚染も原因は定かにならなかった。このような試験栽培からのGM汚染拡大には、カナダガンのような野生鳥獣による“拡散”も、可能性の一つとして考えられるだろう。

 GM作物の“エスケープ”には2つの問題がある。一つはGM汚染源の拡散、拡大であり、もう一つは、雑草化という問題だ。ことに第一世代の除草剤耐性GM作物は、それ自体が駆除できないスーパー雑草化しやすい。北米では、すでにそうした問題が出てきている。

 ●GM作物が新たなスーパー雑草に

 英国の畜産農家マイケル・ハート氏が米国の農家を訪ね、遺伝子組み換え作物について聞く『GMのワナ』(原題:"Farmer to Farmer: The Truth About GM Crops")という、国際有機農業映画祭2011で上映されたドキュメンタリーがある。この中に、カナダから渡ってくる野鳥のガンが種子をまき散らし、雑草化するGMナタネの話が出てくる。

 カナダに隣接する米国ノースダコタ州の農家ロドニー・ネルソン氏は、「こいつらはこの辺りには存在しない新しい雑草だ。除草剤耐性ナタネさ。カナダから越冬にわたってくるガンの群れが、秋にカナダのナタネの種子を落としていくんだ。このテンサイ畑のナタネはどうやっても駆除できない」と嘆く。

 ネルソン氏の苦情に答えてモンサントは、「手で駆除してください。それが唯一の手段です」と言ったという。遺伝子工学を駆使したものの、袋小路にはまり込んだ除草剤耐性GM作物を象徴する一言だ。

 ・GM Crops

 カナダからのナタネ輸送ルート沿いには、トラックからこぼれおちて雑草化したGMナタネが繁殖している、という報告もある。カナダでは作物であったナタネが、米国では除草剤を散布しても枯れないスーパー雑草と化している、という笑えない現実も出てきている。放射性物質は徐々に減っていくが、こうしていったん自然へと流出したGM作物は繁殖し、根絶することは困難だ。

 ・Vancouver Sun, 2011-10-11