TPPへの参加をめぐり、多方面から指摘されていた「食品規制の緩和」について、米国が主張を引っ込めたという報道が出ている。はたして、どこまで本当なのか。
6月16日の産経新聞(電子版)は、「米国が難色を示していた遺伝子組み換え食品の表示義務を受け入れる方針であることが分かった」、「遺伝子組み換え表示の義務化が担保されれば、TPP交渉の課題が1つ解決される」、とニュースソースを明らかにせず報じた。豪州やニュージーランドはGM表示義務化に賛成を表明したことに、米国はTPP全体の進展を重視しての判断とも報じている。
NHKは7月27日、コナキタバルでのTPP交渉への日本の初参加を受けて、消費者団体などが危惧している「遺伝子組み換え食品の表示義務の撤廃など、食品の安全基準の緩和は現時点で議論の対象にはなっていない」ことを政府が確認した、と報じた。規制緩和問題が議論の対象となってはおらず、ほぼ交渉が終わった食品安全関連の議論に新たな提案の可能性は少ない、ともしている。
どちらのニュースも、TPP参加で必然的として危惧されてきた食品規制の緩和やGM表示廃止が行われない、ということになる。NHKでは、政府が消費者団体に向けて説明するとしているが、どこまで開示されるのか、その点も疑念が残る。
・産経新聞, 2013-6-16 ・NHK, 2013-7-27
しかし、その一方で、添加物への規制緩和が進んでいる。
農水省はこの2月、TPPの先取りとも思える農産物のJAS規格の改正を行った。これは、缶詰、果実飲料、漬物など加工品13品目について、従来、使用可能な食品添加物として個別物質名を明記していたものを、「コーデックス規格に準拠」と包括的に指定する“改正”である。この13品目は手始めで、全体として、こうした「コーデックス準拠」に改めていくようだ。