
英国のスカイニューズ・テレビは8月5日、オランダ・マーストリヒト大学のマーク・ポスト教授らが開発した牛の幹細胞を培養した“試験管ビーフ”を使ったハンバーガーの試食を放映した。この“試験管バーガー”は、牛の幹細胞を3か月かけて培養し、細い帯状の筋肉状に成長した約2万枚をバーガー用パティに加工したもの。高々5オンス(約140グラム)の“試験管ビーフ”にかかった費用は約25万ポンド(3800万円)になるという。
シェフが調理したこのパティを試食した2人の専門家は、「肉に似ているが、柔らかくて肉汁も脂肪もない」と評した。生物学的には同じようでも、まだまだ、似て非なるもののようだ。ポスト教授は、2か月で脂肪を付け加えることができるとしている。
この“試験管ビーフ”は現在、グーグルの共同創業者ブリン氏の支援を受けて開発が進められている。ポスト教授は、大量の飼料や水を使い、温暖化ガスを大量に吐きだす生きた牛よりも環境負荷は少ないと評価している。教授はまた、10年から20年後にはスーパーの店頭に並ぶと予想し、と殺もないことからベジタリアンにも受け入れられる、との希望的観測も述べている。
この“試験管ビーフ”について、英国の監督機関である食品基準庁(Food Standards Agency)は、必要な安全性に関する試験が実施され、同庁の事前承認が必要とコメントしている。
・Sky News, 2013-8-5欧米では遺伝子組み換え食品を「フランケン・フード」とも云うが、番組でナレーターが、この肉を「フランケン・バーガー」と“まがい物”扱いしているのが印象的である。この“試験管ビーフ”のような人工的な肉が必要なのか、はなはだ疑問だ。無理に食べることもないし、食べたいとも思わない。また、ベジタリアンが許容するには、倫理的にも程遠い代物ではないか。
幹細胞を使った技術開発は、医療用ばかりが脚光を浴びているが、こうした食品にまでその範囲が広がっていることは、今後注意が必要だろう。知らないうちに食の中身までが変わっていた、ということがないように。