遺伝子組み換えに反対するフィリピンの農民、消費者、教会関係者などSikwal-GMOの400人は8月8日、フィリピン・ルソン島南部のビコールにあるIRRI(国際稲研究所)の遺伝子組み換えゴールデンライスの試験栽培をおこなっていた8アールの試験圃場で、開花直前のGMイネを根こそぎ引き抜いた。この直接行動を行ったSikwal-GMOは、この日の試験圃場へ抗議行動で、フェンスを乗り越え、わずか15分でGMイネを引き抜いた。この行動は、「ゴールデン・ライスに対する農民による合法的な抵抗」としている。
・Bulatlat.com, 2013-8-9昨年8月、子供への遺伝子組み換えゴールデンライスを実際に使った中国での実験が明らかになっているが、フィリピンでも、IRRIの試験栽培中のGMゴールデンライスが収穫され、ヒトへの供給実験に使用されると報道されたという。Sikwal-GMOは、自分たちの子供たちがこうした実験にさらされたくない、という懸念が直接行動に立ち上がらせた要因の一つである、と述べている。
Sikwal-GMOはまた、ゴールデンライスと遺伝子組み換えは、ただでさえ疲弊している小規模農民をより疲弊させるだけで、何の解決にもならないとした。「人々の健康と食品の安全は最重要」と近く栽培差し止め訴訟を起こすとしている。
Sikwal-GMOなどは、シンジェンタがGMゴールデンライスの特許権を依然として保持していおり、いつでも使用料を請求できる点も懸念している。
主食であるコメに対する遺伝子組み換え品種の栽培解禁に対してフィリピンでは、「食料安全保障への脅威」という指摘や、GM遺伝子の生物多様性へ与える影響への懸念もある。GMゴールデンライスは、フィリピンの人々にとって、主食のコメへの遺伝子組み換え導入への反対の象徴的な存在としてあるようだ。
フィリピンでは、これまでも害虫抵抗性のGMナスが反対運動の抵抗にあっている。ゴールデンライスの承認手続が始った場合には、対象が主食のコメであることもあり、これまで以上の反対運動が起きるのではないだろうか。
この8日の直接行動の直後にIRRIは、「戦いは終わっていない。研究は継続する」とするビデオを公開した。翌日には、この行動を非難する声明を出した。8月6日には「商業栽培申請間近」とBBCが報じたばかりだっただけに、IRRIは出鼻をくじかれた格好だ。
・IRRI, 2013-8-8 ・IRRI, 2013-8-9関連記事 No.542