農水省は9月24日、2012年度の遺伝子組み換えナタネとGMダイズの自生調査結果を公表した。セイヨウナタネは輸入港15港のうち7港で、自生しているセイヨウナタネの34.3%からGMナタネが見つかった。ダイズでは、調査した10港のうち3港で自生ダイズが見つかったものの、GMダイズは博多港だけで見つかったとしている。
・農水省, 2013-9-24●セイヨウナタネ
セイヨウナタネについての調査は、輸入実績のある12港と、ナタネが混入する可能性のある飼料用トウモロコシの輸入実績のある3港の、計15港の周辺地域で実施された。
この調査で、GMナタネが見つかったのは、苫小牧港、八戸港、鹿島港、名古屋港、四日市港、神戸港、博多港の7港周辺地域。見つからなかったのは、千葉港、横浜港、清水港、大阪港、水島港、宇野港、戸畑港、志布志港の8港周辺としている。一昨年の農水省の調査で、高率で自生GMナタネが見つかった千葉港周辺、宇野港周辺では昨年度の調査では見つからなかったとしている。
また、自生していたGMナタネ131個体のうち、52個体がグリホサート(ラウンドアップ)耐性、76個体がグルホシネート(バスタ)耐性、3個体がグリホサートとグルホシネートの複合耐性であった。
農水省の調査では、輸入港周辺の自生ナタネのうち、GMナタネの占める割合は増加傾向にある(表1)。
表1 セイヨウナタネのGM比率
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採 取 GM遺伝子を GM
年度 個体数 持つ個体数 比率
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2009年 461 80 17.4%
2010年 400 112 28.0%
2011年 514 108 21.0%
2012年 382 131 34.3%
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(※農水省調査結果より)
●GMダイズ
ダイズの輸入実績のある苫小牧港、鹿島港、千葉港、博多港など10港周辺で、調査が実施された。GMダイズは、調査した10港のうち博多港周辺の自生ダイズの33%から見つかったとしている。博多港では、2009年から毎年のようにGMダイズが見つかっている。
●農水省調査は範囲を限定か
農水省は、こうしたGMナタネの自生の原因を、「運搬時に油糧用セイヨウナタネ種子がこぼれ落ちて生育したものと考えられる」(「遺伝子組換え植物実態調査結果(平成18年〜平成20年実施分の取りまとめ)」)、とナタネの輸送方法に問題があることを認めている。そうであれば、輸送の最終目的地までのルート全体の調査が必要である。
しかし、この報告書には発見地点は明記してあるものの、調査範囲ははっきりと示されてはいない。たとえば、国立環境研究所による調査や、「遺伝子組み換え食品を考える中部の会」が継続的に行っている四日市港周辺の調査では、農水省の調査範囲の南側の雲出川に至る国道23号線沿いでも、GMナタネが見つかっている。
このことを考えると、この農水省の調査は、かなり範囲が限定されている可能性がある。範囲を限定することで、GM作物自生の影響を少なく見せようとする意志があるのではないか。しかし、毎年のように道路沿いにGMナタネが見つかる現状は、農水省自身が原因を指摘しているにもかかわらず、有効な対策が取られていない、ということだろう。
・国立環境研究所, 2013-3 ・遺伝子組み換え食品を考える中部の会, 2012-11-18●韓国:畜舎周辺まで自生が見つかる
日本ではこれまで、輸入港周辺の調査と、そこからの発見だけであるが、韓国では農家での自生が見つかっている。韓国・国立環境科学院(NIER)が公表した、2012年の韓国の遺伝子組み換え作物自生調査結果では、4大GM作物(トウモロコシ、ナタネ、ダイズ、綿)が韓国内22か所で自生している。2009年の8か所より大幅に増加している。日本と同様に輸入港周辺で自生はもちろん、畜舎の周辺にまで、輸送中にこぼれ落ちた遺伝子組み換え種子が自生しているのが発見されている。NIERの研究者は、交雑の可能性があると指摘している。
・Hankyoreh, 2013-6-5日本では、ほとんど輸入港周辺しか調査されていない。神奈川県は毎年、県内の在来種2品種についての交雑調査を行っているが、こうした調査は限定的のようだ。飼料用に大量にGMトウモロコシを輸入している日本でも、韓国のようなGM作物自生の広がりの可能性は否定できないのではないか。