ミツバチがある日突然いなくなる大量失踪や大量死について、ネオニコチノイド系農薬が原因と指摘されていた。欧米では、規制強化の方向に進んでいる。日本では高い濃度のネオニコ系農薬が市販のハチミツにも見つかっているのも関わらず、「水稲のカメムシ防除に必要」(農水省)と見直しの気配は見えない。
●EU:ネオニコ一時禁止を決定
見直しを進めてきたEUはこの4月29日、3種類のネオニコチノイド系農薬の一時的な使用禁止を15カ国の賛成で決定している。2013年12月1日を目途にEU域内での使用を禁止し、2年以内にこれらの農薬の見直しを行う。この決定に先立ち、欧州食品安全機関(EFSA)はこの1月、ミツバチに対するネオニコチノイド系農薬の影響を認める報告書を公表している。
・EU, 2013-4-29 ・EFSA, 2013-1-16●米国:一歩前進 危険表示を導入
米国環境保護庁(EPA)は8月15日、ネオニコ系農薬4種類についてミツバチなどの受粉昆虫に対する危険表示とともに、ハチなどのいる場所での使用禁止表記のを義務付けを公表した。EPAはこの5月に蜂群崩壊症候群(CCD)に関する報告書を公表しているが、農薬はCCDの要因の一つにすぎないとしている。環境保護団体などは、この危険表示では不十分だと批判している。
・EPA, 2013-8-15●日本:ネオニコを推奨する農水省
しかし日本の農水省は、国内の規制を見直す考えがないことを明らかにしている。EUのネオニコ系農薬モラトリアムを受けて農水省は8月26日、「農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組」を公表した。EUとは使用方法も違い、ネオニコは「水稲のカメムシ防除に重要」と強弁している。日本では、商品名が「ダントツ」「スタークル」などのネオニコ系農薬が、水稲のカメムシ防除用に使われている。
・農水省, 2013-8-26 ・日本農業新聞, 2013-5-28カメムシの吸汁跡が黒く斑点状に残る斑点米(着色粒)が、玄米の買い入れ価格を決定する品質等級に影響している。1000粒に1粒までが1等米、3粒までが2等米、7粒までが3等米にランク付けされる。この等級が米の買い入れ価格に大きく影響している。JAによる等級価格差は、100円から200円程度のコストにも関わらず、1等米と2等米で600円から千円と過大に設定されている。このことが、ネオニコ農薬の大量使用の元凶といえる。
斑点米は色選別機で除去も可能であり、食味に影響はほとんどなく、無用の農薬使用と言わざるを得ない。2007年には、農業者団体や市民団体が農水省に対して「農産物検査からコメ着色粒の項目削除を求める要望書」を提出し、着色粒基準の廃止を求めている。
●ミツバチへの影響は明らか ハチミツからも見つかる
このネオニコチノイド系農薬のミツバチのへの影響について、金沢大学の山田教授らは研究の結果、「ハチが即死しないような濃度でも、農薬を含んだ餌を食べたハチの帰巣本能がだめになり、群れが崩壊すると考えられる」と指摘している。
8月19日には、愛媛大学の河野教授らの研究で、調査した市販蜂蜜13種のすべてからネオニコ系農薬を検出したことが明らかになった。日本のヒトに対する規制値0.01ppmの約5分の1程度だが、ミツバチの半数致死量の約半分に達する濃度のものもあったという。
・共同通信, 2013-6-16 ・共同通信, 2013-8-19ネオニコ系農薬が環境や人間に及ぼす影響については、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の作成したパンフレットがわかりやすく解説している。無料でダウンロードできる。
・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議ネオニコ系農薬のヒトに対する危険性については、黒田洋一郎氏らの「自閉症・ADHDなど発達障害増加の原因としての環境化学物質−有機リン系,ネオ二コチノイド系農薬の危険性」(『科学』2013年6月・7月)に詳しく述べられている。