

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9月27日、有効な対策が取られないならば、21世紀末に地球の平均気温は最大で4.8度、海面水位は最大82センチ上昇すると予測する第5次評価報告書第1作業部会報告書の概要を公開した。環境省などは27日、概要の日本語訳を公開し、全文は10月中に気象庁が翻訳を公開の予定としている。
・環境省, 2013-9-27 ・IPCC, 2013-9-27●平均気温5度上昇でアブラナ科は開花せず
この8月、こうした温暖化の農業への影響についての2つの分析 が公表された。
その一つは、京都大生態学研究センターの工藤教授らのグループによるもので、平均気温が5度上昇すると、菜の花などアブラナ科や大麦は開花しなくなると予測した。温暖化に伴い、開花を抑制する遺伝子が活発になり、開花を促進するホルモンを作る遺伝子の働きが低下することによるとしている。
・Nature, 2013-8-13 ・京都新聞, 2013-8-14こうなると、大根やキャベツなどのタネが採れなくなり、当然、ナタネ油もなくなることになる。野菜への影響もさることながら、大麦への影響も看過できない。小麦の生産量は世界で約7億トン。大麦の生産量は、その約2割に相当する1億3千万トンを占めている。大半が飼料用とはいえ、大麦を主食としている人々もいる。穀類を、牛や豚などの飼料に用いること、それ自体が問題。牛は草を食べてきた動物だ。
●温暖化でリンゴは甘くなる
もう一つは、農研機構果樹研究所による分析で、温暖化でリンゴは甘くなるというもの。この40年ほどで平均気温が約1度上昇した長野、青森のリンゴは、酸味が15%減り、糖度は5%増加。原因は、春先の温度上昇で発芽や開花が早くなり、果実の生育期間が長くなることと、果実の成熟期の温度が高くなり酸の減少が進みやすくなることにあるとしている。もっとも、極端な温暖化は高温障害で収穫減少など全体的には悪影響が及ぶようだ。
・農研機構理事 果樹研究所, 2013-8-20 ・Nature, 2013-8-15IPCCの予測通りに温暖化が進むとしても、リンゴが甘くなるのは一時期だけとなりそうだ。温暖化はあまり良い結果を招きそうにない。