“消費に安全なレベルはない”
米国FDAは11月7日、シュートニングやマーガリンなどに多く含まれているトランス脂肪酸について「人工的なトランス脂肪酸の消費には安全レベルがない」として、その禁止についての意見募集を始めた。FDAは発表の中で、トランス脂肪酸の禁止により、年2万人の心臓疾患による発作と7千人の死亡を減らせるとしている。あの“回転ドア”のFDAが「安全なレベルはない」とした点が注目される。
トランス脂肪酸は天然の植物性油脂にはほとんど含まれず、水素を添加して硬化させた部分硬化油の製造過程で生じ、加工食品に多く使われているシュートニングやマーガリンに多く含まれる。これらを使ったケーキや菓子パン、ドーナツ、シュークリーム、コーヒークリームなどがトランス脂肪酸を多く含んでいる。摂取により悪玉コレステロールが増え心臓疾患の原因とされている。
米国医学研究所は2002年、トランス脂肪酸の危険性について警告し、摂取量を極力少なくするべきと提言した。これを受けて米国では2006年、トランス脂肪酸の表示が義務づけられた。以降、トランス脂肪酸の摂取量は減少し、2003年の1日4.6gから、2012年には1gまで減っている。FDAは、トランス脂肪酸を含む硬化油を禁止したとしても、関連する食品の製造は可能と証明されている、としている。
・FDA, 2013-11-7今回のFDAの決定についてウォール・ストリート・ジャーナ ルは、FDAの禁止への決意は固く、禁止は確定的と報じている。
・ウォール・ストリート・ジャーナル, 2013-10-8日本では、トランス脂肪酸の摂取量が1日約1gであり、これを「欧米に比べて少ない」として、規制基準の設定などはなされていないが、2011年に消費者庁より「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」が公表され、食品メーカーに対して情報開示を求めている。
しかし、業界大手の山崎パンのトランス脂肪酸の公表データを見れば、メロンパン、チョコチップメロンパンのように1個当たり1gを超えるものもあり、菓子パン類も0.5g前後ある。こうしたパン類を好んでいる人では、すぐに1日1gを超える可能性が十分ある。先のFDAの「安全なレベルはない」との判断に従えば、極力避けるべきだろう。
2007年に食品安全委員会が行った調査によれば、マーガリンやショートニング、乳製品に多く含まれている。これらを多く使う菓子パンなどの加工食品、揚げ物類、コーヒーポーションなども避けた方が無難だろう。
8日の毎日新聞によれば、消費者庁は、2015年施行で準備中の「食品表示法」で、加工食品のトランス脂肪酸の含有量表示の義務付けを検討しているものの、栄養成分などに比べて優先順位が低いとして当面は見送る姿勢のようだ。
・消費者庁, 2011-2-21 ・食品安全委員会 ・農水省 ・山崎パン ・毎日新聞, 2013-11-8