厚労省の薬事・食品衛生審議会新開発食品調査部会は11月11日、これまでの遺伝子組み換え食品と組み換え微生物を利用した添加物などに関する承認申請を、大幅に省略する方針を了承した。この規制緩和により、GMトウモロコシなどのGM食品の承認申請が一部不要になるなど、米国に準じたGM食品の承認規制に緩和されることになる。実施時期の見通しは明らかではないが、来年には実施に移されることになる模様だ。
この変更について厚労省は、食品安全委員会での10年の遺伝子組み換え食品の審査により、いろいろな知見が集まったから、としている。
今回の承認規制緩和は次の2点である。
● 急増するスタック品種は ほとんどが申請不要へ
今回の申請緩和への転換の背景には、GM作物同士の掛け合わせ品種の申請がこの数年急増したことにある、と厚労省は説明している。10月末現在、安全であるとして承認されたGM食品は283品種。そのうちの約7割に当たる198品種が掛け合わせ品種である。中でもトウモロコシが突出して多く、172品種を占めている(グラフ1,2)。その多くは、圃場での交雑を想定した予防的な承認であると思われる。
遺伝子組み換え作物は、厚労省が受け付けた申請を、食品安全委員会に健康影響評価を諮問する。諮問を受けて食品安全委員会は、遺伝子組み換え食品等専門調査会で、その作物の食品としての安全性を審査する。この審査において、掛け合わせ品種(スタック)は、その親品種がすでに評価され問題なしと判断されているなどの条件があるものの、ほとんどが実質的な審査を経ずに「安全」として通知される仕組みとなっている。
・食品安全委員会, 20111-7-21今回の承認規制の変更は、これまで申請を必要としてきたほとんどの掛け合わせ品種について、「代謝に影響を及ぼさない」という条件はあるものの、基本的に申請が不要となる。米国では従来、こうした承認方法をとってきており、米国並みへの変更となる。
これまでも、承認されたGM品種と非GM品種の掛け合わせ品種については、申請が不要となっており、GM品種同士の掛け合わせ品種についても同じ扱いに変更されることになる。
この承認規制緩和により、モンサントなどの開発企業は申請の手間が大幅の減ることになる。同時に、一定の条件はあるものの、圃場で交雑して生ずる未承認の交雑種についても、改めて申請や評価が不要となり、厚労省などのリスク管理機関の責任を問われることもなくなるだろう。
● 欧米並みに緩和されるGM微生物関連の申請
日本における」GM微生物、あるいはGM微生物を利用して生産した添加物については、厚労省に申請のうえ、食品安全委員会で審査する手順となっている。添加物では、導入DNAが同一種のDNAのもの場合(セルフクローニング)、自然界でも起こりうると判断された組み換え(ナチュラルオカレンス)、最終的に高度の精製される(高度精製品)の3つのケースに該当すると判断された場合には、GM添加物に該当しないものとして扱われている。10月末現在57品種がこうした3つのケースに該当していると判断されている。GM添加物としては16品種が承認されている。
・食品安全委員会, 2004-3-25 ・食品安全委員会, 2008-62011年12月から12年4月にかけて、日本で承認されていないGM微生物を利用した添加物が輸入され、流通していることが明らかになった。これらの未承認添加物は、数か月で承認され流通自粛が解除されている。GM微生物利用の未承認添加物の流通について、そのおもな原因は、日本と欧米の規制の違いであるとされた。こうした事例を受けて厚労省は今回、GM微生物とGM微生物を利用した添加物の承認について、欧米並みの緩和を打ち出した。
● GM由来添加物は“野放し”“隠蔽”される?
今回のもう一つの承認規制緩和は、GM微生物に関して、申請するか否かを事業者の判断に委ねるというもの。厚労省が示す判断基準に照らし、セルフクローニングとナチュラルオカレンスに該当すると判断できる場合は、事業者判断で申請が不要となる。記録に残さなければならないという制限はあるが、実質的に“野放し”となる可能性がある。
これまでは、3条件によるGM微生物由来の添加物には表示義務がないものの、セルフクローニングなどであっても、GM微生物由来であれば申請が必要であった。このため、どのメーカーの、どのような添加物がGM由来であるかが、ある程度判別することができた。しかし、今回の規制緩和により、どのような添加物がGM由来の可能性があるかなどが、まったく表に出なくなることが予想される。