消費者からみた日本の遺伝子組み換え食品の表示は、明らかに不十分である。GMナタネが原料のキャノーラ油(カノーラ油、菜種油)とか、GM大豆を使ったしょう油などのように、GM原料を使っていても表示義務のないものもあるからだ。
GM食品の表示義務は、組み換えDNAやたん白質が検出可能とされている33の食品だけが対象とされている。指定外の食品はもとより、GM由来の添加物も、GM微生物も表示の義務がない。
・消費者庁● “GM納豆”には表示義務がない
表示を納豆で考えてみよう。堂々と「遺伝子組み換え納豆」を販売している会社が札幌にある。この会社は、2003年11月、日本で初めてGM大豆を95%使った納豆を売り出した。当然、この納豆には、次のように「大豆(遺伝子組換え)」と表示して ある。
品 名 | 納豆 |
原材料 | 大豆(遺伝子組換え)、納豆菌 |
では仮に、発酵効率を格段に向上させた遺伝子組み換えの納豆菌が開発されたとする。このGM納豆菌と、きちんと分別した「遺伝子組換えでない」大豆を使った納豆は、どう表示すればいいのか。
消費者庁によれば、表示義務のあるもの以外に「遺伝子組換え」の表示はいらないということである。したがって、「遺伝子組換え」の表示をする必要はない。しかし、この納豆菌は遺伝子組み換えの菌なのだが、である。これは、流行りの食品偽装ではなく、100%適法な表示だ。
品 名 | 納豆 |
原材料 | 大豆(遺伝子組換えでない)、納豆菌 |
もっとも、このGM納豆菌と有機大豆を使った納豆には「有機JAS」の表示は無理だ。「有機加工食品の日本農林規格」には、加工助剤を含む原材料に「組換えDNA技術を用いて生産されたもの」を除くと明記してある。
・農水省, 2012-3-28● GM承認規制緩和で ますます分からなくなる
厚労省はこのほど、現行のGM食品とGM微生物に関する承認の規制緩和を明らかにした。この規制緩和でば、セルフクローニングかナチュラルオカレンスに該当すると事業者が判断すれば、厚労省への承認申請は不要となる。仮に、開発したGM納豆菌が、この2つのどちらかに該当すれば、開発した企業がその事実を公表しない限り、消費者は知らずに「GM納豆菌の納豆」を食べることになる。当然、生きたGM納豆菌も一緒に。
同様なことは、乳酸菌や麹菌のような菌類を使う場合にも考えられる。しょう油・味噌や酒などの菌を使う醸造にも、十分にその可能性があるということになる。
● “GMキノコ”にも表示不要の現行制度
さらに考えれば、仮に遺伝子組み換えにより、味の良いシイタケ菌が開発されたとする。GM微生物には表示不要である以上、そのシイタケにもGM表示は不要でよいということになる。さらには、それらの菌が、セルフクローニングかナチュラルオカレンスに該当すれば、全てが闇に葬られるということになりかねない。消費者は、それと知らず、遺伝子組み換え体そのものを「おいしい」と言って食べることになる。
これでは、今以上に何を食べているのか分からなくなる。少なくともGM微生物には、GM食品同等の表示の義務化が必要だ。何を食べるかは、その選択は基本的な権利だからだ。
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