米国農務省は2013年11月1日、外国産牛肉の輸入制限を全面的に撤廃する方針を公表した。これは、2014年3月4日よりBSEについて「無視できるBSEリスク」と「管理されたBSEリスク」の国からの牛肉の輸入を認めるというもの。米国がこの輸入規制撤廃を理由に、米国産牛肉に対して30か月齢以下の輸入規制措置を取っている日本や韓国などに対して、米国産牛肉の規制撤廃を要求してくる布石ではないかという見方も出ている。
国際獣疫事務局(OIE)は2013年5月、米国、オランダなどとともに日本も「清浄国」と認定している。これにより米国は、日本からの輸入も認めることになるものの、その量はごくわずかでしかないだろう。現に2013年には、11月までで、米国からの輸入17万5千トンに対して、対米輸出は92トン足らずにすぎない。日本からの牛肉輸出は全体でも800トン足らずであり、そのほとんどはアジア諸国向けとなっている。
日本は昨年2月から、米国産牛肉輸入規制の月齢規制を20か月齢から30か月齢に緩和した。4月以降、米国産の輸入が増加し、国別シェアでは10%以上増加した。その分、豪州からの輸入が減少している。財務省の貿易統計によれば、1月から11月までに約50万トンの牛肉が輸入されているが、豪州が53%、米国が35%、残りをニュージーランド、メキシコ、カナダなどとなっている。
・日本農業新聞, 2013-11-28 ・農畜産業振興機構 月報「畜産の情報」2013年12月
米国の輸入規制全面撤廃の方針公表にEUは11月2日、歓迎の声明を発表した。狂牛病の発生により1998年以降停止されていたEUからの米国向けの牛肉輸出が15年ぶりに再開されることになる。
しかしながら、欧州でのBSE牛の発生は完全に終わったわけではなく、2013年には英国で3例の発生が確認されている。そうした状況にありながら、2013年2月には、フランスとオランダからの輸入を再開した。厚労省はまた、12月2日付けでアイルランド産牛肉について、30か月齢以下に輸入規制の緩和した。アイルランドについて食品安全委員会は10月、BSEのリスクは低いとする評価を決定していた。
・厚労省, 2013-12-2食品安全委員会では現在、ポーランド産とブラジル産の牛肉輸入に関し、両国のBSEリスクについての審査が継続している。昨年9月2日に開催された同委員会プリオン専門調査会では、両国の飼料規制などの状況に関する情報が不足しているとして、厚労省に追加資料の提出を要求している段階である。いずれ、この両国からの牛肉輸入についても規制緩和となる可能性が強い。
・プリオン専門調査会, 2013-9-2