このうちの一つMON88017系統(スイートコーン)は、除草剤グリホサート耐性・害虫抵抗性の遺伝子組み換えトウモロコシであり、もう一つのMON89034系統(スイートコーン)は、害虫抵抗性の遺伝子組み換えトウモロコシである。どちらも同系統のGMデントコーンと従来品種のスイート種を掛け合わせた品種である。この2品種は後代交配種ではあるが「亜種レベル以上での交配でないが、摂取量・食用部位・加工法等に変更がある場合」に該当するとして健康影響評価を行い、どちらも「ヒトの健康を損なうおそれはないと判断した」とした。
GM作物の安全性審査について食品安全委員会は2005年、「遺伝子組換え植物の掛け合わせについての安全性評価の考え方」を決定している。それまで、一般的にこうしたGM品種と非GMの通常品種の交配種については3条件(新たに獲得した性質が変化していないこと。亜種間での交配でないこと。摂取量・食用部位・加工法等の変更がないこと)を満たせば「安全性審査済み」とみなしていたが、「亜種のレベル以上での交配でないが、摂取量・食用部位・加工法等に変更がある場合には、当面の間、安全性の確認を必要とする」としている。
・食品安全委員会, 2014-1
・食品安全委員会, 2014-1●米国、カナダではすでに流通
デントコーンは、主に飼料やコーンスターチの原料として用いられるのに対して、今回の2品種は生食用として開発されたもので、米国では2011年に市場流通が認められている。すでに米国やカナダでは、一般のスーパーや小売店ばかりか、ファーマーズマーケットでも販売されていることが、環境団体などの調査で明らかになっている。
カナダのGM反対運動団体CBAN(Canadian Biotechnology Action Network)が昨年10月公表した調査結果では、市販のスイートコーンの買い上げ試験で35%からGM品種が見つかったとしている。米国でも、2.4%と少ないものの、市場流通を確認したとFriends of the Earth U.S. が公表している。
●GM表示義務の拡大が必要
日本では、この生鮮GMスイートコーンの流通事例はまだ確認されていないようだ。しかし、2011年にハワイ産のGMパパイヤが生鮮GM食品として承認されている。流通に当たっては、直接消費者に向けて販売されることから、その1個1個にGMパパイヤのラベルが貼付が条件とされた。現在、表示が義務付けられているGMトウモロコシには「冷凍トウモロコシ」はあるものの、生鮮品の区分がない。おそらくこのスイートコーンの生鮮品が生食用として流通する場合には、新たに区分が追加され、GMパパイヤ同様のラベル貼付が条件となるのではないか。
しかし、レストランなどにおける遺伝子組み換え食品に関する義務的表示な表示はまだ制度化されていない。したがって、こうしたGMスイートコーンが外食産業などで使われた場合、知らないうちに食べてしまう可能性がある。レストランなどの外食産業はもとより、対面販売用の食品にも、厳密な表示義務を課すことが必要だ。しかし、これとて食品偽装を防ぐ最低限の歯止めでしかない。自分が何を食べるのかを選択する権利、何を食べているかを知る権利、こうした権利は基本的な権利のはずだ。
(参考)遺伝子組み換え表示対象食品:トウモロコシ・消費者庁, 2011-11 ・消費者庁, 2010-3