DHA、EPAを作るGMアマナズナ
英国のロザムステッド研究所は1月24日、魚油の成分であるオメガ3脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)を作る遺伝子組み換えアマナズナを開発し、当局に対して試験栽培の承認申請を行ったと発表した。養殖魚の飼料添加物の生産が目的としているものの、結局のところマーガリンなどのヒトの食品に添加されることになるのではないか、とガーディアン紙は報じている。
魚に多く含まれるDHAの多くは、海中の微生物が産生したものが食物連鎖で濃縮されたもので、魚が作り出しているわけではない。生体濃縮されるものの、水揚げされた魚の80%が、養殖用の魚粉として利用されている。ロザムステッド研究所は、オメガ3脂肪酸産生に関する藻類の4つから7つの遺伝子を、アブラナ科のアマナズナ(Camelina sativa、和名:ナガミノアマナズナ)に導入した3種類のGMアマナズナを、15年をかけて開発したという。このGMアマナズナは、その種子に約25%のDHAとEPAを含むとしている。また、アマナズナはアブラナ科であるが、同じアブラナ科のナタネなどと交雑しないことを利点として強調している。
ロザムステッド研究所は、2014年から17年にかけて同研究所の試験圃場で小規模の栽培実験が計画していると明らかにした。この3月の承認を期待しているとしている。
・Rothamsted Research, 2014-1-24 ・Gardian, 2014-1-24●過去には有機農家とトラブル
このロザムステッド研究所は2012年5月、アブラムシ耐性GM小麦の野外試験栽培の実施を巡って近隣の農家とトラブルとなっている。GM汚染を懸念した近隣の有機農家から栽培中止を求められた同研究所は、これを拒否した。これに対して有機農家が実力行使にでて、「重大な損害」を被ったと公表している。
・Farmers weekly, 2012-5-9 ・StalbansReview, 2012-5-21●自己矛盾に陥りつつある「実質的同等性」
単なる除草剤耐性や害虫抵抗性ではなく、機能性の成分を産生するためにGM技術が用いられている例がでてきている。その中には、グルタミン酸などのアミノ酸を、生産効率を上げたGM微生物を使って生産している。GM大豆では、デュポンの高オレイン酸含有大豆やモンサントのステアリドン酸産生大豆などがある。この3オメガ脂肪酸産生GMアマナズナのような機能性成分を作り出すGM作物に移行していくのではないだろうか。その場合、承認の大前提としている、GM作物が従来品種と「実質的に同じ」であるとした「実質的同等性」を自ら切り崩していくことになるGMを推進する企業や規制機関は、この矛盾から逃れることはできないし、新たに作り出す物質以外は「同じ」であるから「実質的同等性」は担保されている、と強弁するご都合主義も許されない。
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