FAO(国連食糧農業機関)は3月13日、輸入食品・飼料について、遺伝子組み換え作物による“低レベルの汚染”に関する加盟国への調査結果を公表した。FAO加盟193カ国中75カ国から回答があり、2002年から12年に26カ国で198件のGM汚染が見つかっていたことが明らかになった。FAOの調査担当者は「取引量と比較すると少ない」と氷山の一角であることを認めている。この調査に中国や韓国は回答していない。
FAOの報告書によれば、見つかった遺伝子組み換え作物による汚染198件中138件が2009年から2012年に起きていて、増加傾向にある。汚染元は主に米国、カナダ、中国であり、汚染作物は、亜麻仁(カナダ)、米(中国)、トウモロコシ(米国)とパパイア(タイ)となっている。汚染が見つかった貨物は積み戻しか廃棄されたとしている。
FAOは、各国のGM規制の状況も調査している。回答では、75カ国中37カ国がGM作物の検出能力がないとし、17カ国は何らのGM規制もないとしている。また、未承認GMに関する規制では、55カ国が許容度ゼロだとしている。
FAOの担当者は「どの地域でも起きていることに驚かされた。モニタリングするほど、より多くの汚染を見つけるようにみえる」と言い、回答した国の半数の37カ国にGM検査能力がない状況に注目している。
・FAO, 2014-3-14
●日本でのGM汚染事例は14件と報告
この調査に日本政府は、2005年から2012年に14件のGM汚染を報告している。中でも、2005年のシンジェンタの未承認トウモロコシBt10では、4万2千トンと回答している。ほかには、カナダのGM亜麻、中国のGMコメ(Bt63)、ベトナムのGMコメ、タイのGMパパイヤ、台湾のGMパパイヤを挙げている。
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2013年に入ってもGM汚染の検出は続いていおり、タイ産の未承認パパイヤによる2件の食品汚染が明らかになっている。一つは、ペットフード用として輸入したタイ産の乾燥パパイヤが、別業者により食用に転用され販売されたものからGM成分が検出されたというもの。もう一つは、タイで加工しているロールキャベツを止めているパパイヤがGM汚染されていて自主回収されたというもの。タイ産のGMパパイヤは、EU諸国でも頻繁に見つかっている。
【関連記事】●中国はGM混入で89万トンを輸入禁止
FAOの調査に回答していない中国は、中国では未承認のGMトウモロコシであるシンジェンタのMIR162の混入を理由として、昨年11月から今年2月にかけて米国から輸入した89万トンのトウモロコシを輸入禁止としている。昨年11月、中国は約6万トンの米国産トウモロコシを輸入禁止とし、それらは日本と韓国へ向けて再輸出された報じられている。
中国は2013年初め、アルゼンチンから輸入したトウモロコシに、今回と同じMIR162によるGM汚染を見つけたにもかかわらず輸入を認めているという。また、中国のGM開発関連予算が急減しているとも報じられているところから、これ以降に中国のGM政策に修正ないしは変更がなされた模様だ。中国は、すでにGMイネの商業栽培への動きにストップをかけたともいわれているし、GM排除を通達で公言している政府省庁の食堂も出てきているという。中国はGM食品に慎重な姿勢を強くしているようだ。
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