

=2014年3月3日、秋田県庁で
秋田県大潟村のコメ農家や米の検査規格の見直しを求める会などは3月3日、秋田県に対して過大なコメの等級価格差の是正と、この等級間格差の原因となっている斑点米カメムシ防除の農薬推奨の中止を求める要請書を提出した。要請書には、主婦連合会や日本消費者連盟などの消費者団体のほか、農薬問題で活動しているダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議や反農薬東京グループなど18団体が賛同している。
今回の要請の背景には、わずか千粒に2粒の斑点米が混入しただけで2等米と格付けされ、60キロ当たりの買い上げ価格が600円も下げられるという、過大な等級間価格差がある。コメ農家の経済的損失を未然に防ぐために、この等級落ちをもたらす斑点米の原因となるカメムシ類防除に農薬の「適正使用」が推奨されている。使われている農薬は有機リン系に加え、近年ネオニコチノイド系が増えているという。
環境やヒトへの影響が少ないとされたネオニコチノイド系農薬は、ミツバチの大量死の原因ともみられ、ヒトへの健康影響も明らかになってきている。環境や人体への影響を懸念したEUは、昨年12月より一部のネオニコチノイド系農薬の一時的使用中止と再評価に踏み切っている。韓国でも今年2月より、EUにならって使用の一時中止を実施している。
●秋田県「趣旨は理解」
提出された「斑点米カメムシ類による経済的損失回避策の転換についての要請」では、等級間価格差が実際の被害額と全く見合わないものであって、玄米価格の変動と連動していないこと、慣例で決まっていて合理的根拠に基づいているとは言えないとしている。そして、JAの過大な等級価格差設定が組合員の経済的損失を拡大させているとしている。
米の検査規格の見直しを求める会などは、秋田県に対して次の4点を要請した。
- @ 過大な米の等級価格差の是正
- A 斑点米カメムシ類予報で農薬散布徹底推奨の中止
- B 畦畔草刈りなど農薬代替対策への支援
- C 農薬不使用の消費者向けアピール
要請書を受け取った秋田県水田総合利用課の渡辺課長は、「趣旨は理解できるが、民間同士の取引に介入することはできない。しかし、(等級間価格差には)説明できる根拠が必要であり、全農などには伝える」として、県として指導するなどの直接的なアクションには踏み込まなかった。
また、2点目の農薬散布徹底推奨の中止についても、病害虫防除に法的な義務があるため中止することはできないが、「適正」な農薬使用と使用削減へ指導するとした。
3点目の代替対策の支援についても、環境直接支払いなどの国の支援制度の利用をしてほしいというにとどまった。
こうした内容について、秋田県は3月10日付けで回答書を送付している。
この要請の後、秋田市内で「斑点米とネオニコチノイド系農薬を考える秋田集会」(共催:米の検査規格の見直しを求める会・日本消費者連盟)が開かれ、秋田県内の農家など約30名が参加した。集会では、水野玲子氏(ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議)による講演と、今野茂樹氏(コメ農家・大潟村)が、等級間価格差の問題について解説を行った。この集会には、発言はなかったものの、渡辺課長ら県職員も参加した。
●全農は 合理的根拠を示せるのか
同日夜に放映されたNHKニュースによれば、JA全農あきたは「要望の内容について把握していないので詳しいコメントはできず、県からの連絡を待って対応を考えたい。ただ、政府が買い入れる備蓄米の価格差も変わっていない以上、秋田県だけで判断できる問題ではないと考えている」と、等級間価格差の根拠が恣意的なものであることを言外に認めるともとれるようなコメントを出している。
農水省のデータをもとにした試算によれば、1等米と2等米の等級価格差は600円だが、ネオニコ系のスタークル粉剤を散布し場合の経費は60キロ当たり253円と半分以下に収まるという。斑点米を自動的に取り除く色彩選別機を導入した場合でも、60キロ当たりの経費は330円にとどまる。等級価格差を農薬代より高く設定し、農薬使用に誘導していると見られても不思議はない。仮に等級間格差が農薬代より大きかったとしても、年ごとに変動する米価に準じて、その価格差も変動するのであれば、一定の根拠とはなりうるかもしれない。しかし、毎年のように同額で固定されている等級間価格差には、合理的な根拠はないだろう。全農は合理的な根拠を提示できるのだろうか。
・米の検査規格の見直しを求める会, 2014-3-3・秋田県, 2014-3-10
・NHK・秋田, 2014-3-3
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