斑点米カメムシ防除にネオニコ系農薬が大量に使用される現状に対して、「米の検査規格見直しを求める会」はこのほど、斑点米カメムシ防除の取りやめと、その原因となっている農産物検査法と植物防疫法の見直しを求める要望書を農水省へ提出することを決め、賛同署名を始めた。集まった署名は、9月末を目途に取りまとめ、農水省へ提出する。
コメの一部が黒っぽく変色する斑点米は、玄米がある程度大きくなってきた段階で、カメムシが吸汁した場合、その部分から雑菌が繁殖することが原因とされる。1970年代にその被害が顕著になり、1974年に農産物検査法に着色粒規格が追加された。1000粒当たり、着色粒が1粒までなら1等米、3粒までが2等米、7粒までが3等米と判定され、買い上げ価格に大きな差が出る。1990年代中ごろからネオニコチノイド系農薬が登場し、斑点米カメムシ防除に多く使われるようになってきた。2005年ごろから、この水田に散布されるネオニコ系農薬を原因とするミツバチの大量死が起きている。
斑点米の原因となるカメムシ類の対策には、カメムシの生息場所となっている水田周辺の草刈を行うことで大きく減らすことができる、とする研究結果も明らかになっている。
この数年、世界的には、EUなどのようにネオニコ系農薬の規制に動いてきたが、農水省は一貫して、「ネオニコ系農薬は斑点米カメムシ防除に必要」との姿勢を崩してこなかった。米国がオバマ大統領が先頭に立って、180日の期限を切ってネオニコ系農薬の見直しに舵を切った6月20日、農水省はようやく、ミツバチ被害に関する調査報告と方針を示し、斑点米カメムシ類の防除に使用されたネオニコ系などの農薬が、ミツバチ大量死の原因となっていることを認めた。しかし、示された対策は、水田近くに巣箱を置かない、開花期に避難させる、散布の時間帯をずらす、ミツバチが影響受けにくい希釈剤ではなく粒剤を使うなどにとどまっている。
「米の検査規格見直しを求める会」は、こうした農水省の方針では不十分であり、根本的には農薬によるカメムシ防除の見直しが必要だとしている。近く、次の3項目の要望書を農水省へ提出することとし、団体と個人の賛同署名を募っている。
賛同署名は、下記の同会のサイトからできる。
・米の検査規格見直しを求める会・農水省, 2014-6-20
・農水省 2014-9-18
以下、賛同の呼びかけと要望書を転載する。
●賛同の呼びかけ農水省へ斑点米カメムシ防除をやめ農産物検査法・植物防疫法の見直しを求める要望書を提出します
賛同を募っています
私たちは、2006年から斑点米カメムシ防除のための農薬散布をやめ、斑点米の規格廃止など農産物検査法の見直しを求めて運動してきた市民団体とそのネットワークです。
農水省は、水田で斑点米カメムシ類(以下、カメムシという)が未熟な米を吸うことにより斑点ができ(斑点米)、重大な被害を与えるとして農薬による防除を進めてきました。しかし、実際には斑点米は毒ではなく、生産量に与える影響もほとんどありません。仮に、斑点米があったとしても、今では、色彩選別機という機械で取り除くことができます。にもかかわらず、カメムシ防除は水田の防除面積で一位です。使用される農薬は、EUで規制が始まっているネオニコチノイド系が主なものです。
今年6月、農水省はようやく、カメムシ防除農薬がミツバチの大量死に関係するということを認めました。しかし、斑点米カメムシを害虫とした上で、斑点米の数でお米の等級格差をつける農産物検査法や植物防疫法などがあり、これが生産者に対し、不要な農薬使用を拡大させる要因になっています。
私たちは、ネオニコチノイド系農薬をはじめとするカメムシ防除農薬の使用をやめてもらいたいと思います。また、不必要なカメムシ防除の仕組みをなくすために、声をあげたいと思います。農水省等に要望を出し、10月頃に集会を企画しています。(詳細は決まった段階でお知らせします)
要望や、その解説などをご覧いただき、ぜひとも、賛同くださいますようお願いいたします。賛同は、団体と個人の両方を集めたいと思います。
賛同いただける団体、個人のみなさん、賛同署名をお願いします(9月末まで)。 団体の場合は代表者名と、個人の場合はお住まいの都道府県を併記してください。また、連絡先(できればメールアドレス)をお願いします。
※賛同署名は、原則として農水省へ提出させていただきます。
団体の場合 団体名、責任者、都道府県
個人の場合 個人名(県別にまとめ)
ミツバチ被害の原因となる斑点米カメムシ防除のための農薬使用を止め、その使用を強要する農産物検査法・植物防疫法の見直しを求める要望
去る6月20日、農水省は、ミツバチ被害に関する報告と方針を示し、斑点米カメムシ類の防除に使用されたネオニコチノイド系をはじめとする農薬が、ミツバチ大量死の原因となっていることを認めました。従来の指導方針(農薬使用者と養蜂者の連携を密にし、農薬使用情報等を共有する)ではミツバチ被害を回避できなかったとして、農薬の使用方法について新たな指導方針(なるべく、午前8時から12時までは散布しない、希釈液剤をやめて粒剤を使用する)を打ち出しましたが、これでは全く不十分です。
私たちは、根本的に斑点米カメムシ類の農薬による防除を見直す必要があると考え、以下の要望をします。(詳細な説明は別紙参照)
1、斑点米カメムシ類の農薬による防除をやめる。
斑点米カメムシ防除用のネオニコチノイド系をはじめとする農薬は、農作物の生産に不可欠なミツバチや他の花粉媒介昆虫、天敵昆虫に被害を与えるばかりか、より広い生態系や人の健康に悪影響を与えているため、使用禁止や規制を求める。
(別紙詳細【1-1】、【1-2】)
2、カメムシ防除を強要する農産物検査法の玄米の着色粒(斑点米)規定を削除する。
斑点米は毒でなく、生産量に大きく影響しない。着色粒規格が定める1000粒に2粒以上の斑点米混入で2等米以下に格付けする規定により、農家は農薬散布をせざるを得ない。1等米との間に玄米60kg当たり600〜1000円の価格差が生じ、その損失を防ぐために大量の農薬が使用されていることは消費者には知らされていない。色彩選別機が普及しているいま、斑点米は物理的かつ安価で容易に除去できる。農薬を使った防除を強要する着色粒規定は不合理で不要である。一方、輸入米の着色粒規格が国産の10倍の1%(1000粒に10粒)を合否の基準としていることもダブルスタンダードである。
(別紙詳細【2】)
3、植物防疫法の「指定有害動植物」の指定から斑点米カメムシ類を外す。
斑点米カメムシ類は2000年に植物防疫法の「指定有害動植物」に指定された。それ以降、都道府県・病害虫防除所には、発生予察を行い、カメムシ防除計画の立案と農家への防除指導を義務づけている。斑点米カメムシ類は生産量に大きな被害を及ぼす『有害動植物』には当たらない。有害動物の指定こそが農薬散布を促し、ミツバチ被害等を引き起こしており、人の健康や環境・生態系にとって有害であり、指定を解除すべき。
(別紙詳細【3】)
以上
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