食品安全委員会は9月16日、遺伝子組み換え微生物を利用して生産されたα−アミラーゼについて、「従来の添加物と比較して新たに安全性を損なうおそれのある要因は認められなかった」として、「ヒトの健康を損なうおそれはない」との判断を示した。最終的な評価に向けて、9月17日から意見募集を始めた。締め切りは10月16日。
今回意見募集を始めたノボザイムズ(デンマーク)の遺伝子組み換え微生物によるα−アミラーゼは、製パンの際のパンの老化防止のためパン生地に添加されたり、デンプンからデンプン糖を製造するために用いられる。その活性は、最終段階で高温により失われるとしている。
このα−アミラーゼは、従来の添加物と異なった構造となっている。アミノ酸が4個置換され、従来の添加物と比較して耐熱性が向上しているという。組み込まれた遺伝子は人工的に合成されたものであるが、これによる問題はないとしている。
このα−アミラーゼは、2009年から欧州で販売されているほか、オーストラリア、ブラジル、中国などでも食品添加物として承認されているという。
承認後、実際の製品では表示の必要はなく、このGM添加物が使われたとしても消費者には分からない。
・食品安全委員会, 2014-9-17・食品安全委員会遺伝子組換え食品等専門調査会, 2014-9
これまでのGM微生物を利用して生産される多くの添加物が、導入DNAが同一種のDNAのもの場合(セルフクローニング)、自然界でも起こりうると判断された組み換え(ナチュラルオカレンス)、最終的に高度に精製される(高度精製品)の3つのケースに該当すると判断された場合、実質的な審査が行われてこなかった。厚労省は昨年、TPP交渉を先取りしたかのように、承認の規制緩和の方針を打ち出し、食品安全委員会も規制緩和に問題なしのお墨付きを与えている。これにより、GM微生物を使った添加物については、今回のような化学的な構造や機能が異なったもの以外は表に出てこなくなると思われる。消費者にとって、どのように生産されたかという情報は、購入判断の上で重要な情報の一つである。それにもかかわらず、GM添加物が使われかどうかが消費者には分からないというのは、制度的な欠陥であると言わざるを得ない。
規制緩和により実質的に申請の不要となる3条件を理由として 承認された添加物は60種類にしている。このうち、味の素(株)の申請によるものが約半数の28種類となっている。
・厚労省, 2014-5上記以外に、これまでにGM微生物を利用して生産される添加物として承認されたものは17種類である
・厚労省, 2024-7-24【関連記事】
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