新たに試験圃場でGM小麦の自生が見つかる
米国農務省動植物検疫局(APHIS)は9月26日、昨年5月、米国オレゴン州の圃場で自生しているのが見つかった、モンサントの除草剤耐性遺伝子組み換え小麦は「弧発性」であり、他に影響を与えないとする約1万3千ページの最終結果を公表した。このAPHISの発表により、オレゴン州のGM小麦自生問題は、完全に迷宮入りとなった。
同時に、モンタナ州立大学(MSU)の試験圃場で7月、新たにモンサントの除草剤耐性GM小麦が自生しているのが見つかった、と発表した。
● 迷宮入りしたオレゴンの自生GM小麦
オレゴン州で自生が見つかったGM小麦は、モンサントの除草剤ラウンドアップ耐性の品種であり、モンサントが2004年に除草剤耐性GM小麦の商業栽培を断念した後、すべての種子が焼却したり埋めたりして完全に処分されたとされていた。GM小麦の自生公表当初から米国の新聞などは、「ミステリー」として迷宮入りを示唆していた。モンサントは、早い時期に、「意図的な混入」に言及し、GM反対派によるバイオテロの可能性も示唆していた。
APHISは10ヶ月間に調査したとしている。生産者や穀物エレベーター、コンサルタント、研究者など291人から聞き取りを行い、圃場や関連企業から入手した100以上のサンプルについて検討したとしている。
APHISの調査責任者は、この調査結果で米国産小麦の「安全上の問題はない」とした。この最終結果の発表により、オレゴン州のGM小麦自生問題は、完全に迷宮入りとなった。しかし、発見当初にモンサントが示唆した、GM反対派による「意図的混入」というバイオテロ説は立証されなかった。
オレゴンのGM小麦について、米国の一部の新聞は、完全に処分したはずのGM種子が8年経って突然現れてきたことに、当初から「ミステリー」評していたほどだ。APHISが「弧発性」としたことで、モンサントの管理体制の甘さが浮彫りになったと言える。
モンサントはウェブサイトで、APHISの最終結果が米国小麦産業にとって歓迎すべきニュースとする見解を明らかにした。その中で、モンサント社の企業活動の核心は、製品管理と規制遵守にあるとした。その一方、現在の試験栽培に関する社内規定が最良であると信ずるも、試験栽培の場所などを含むプロセスと手順を見直しを行うともしている。
オレゴン州の自生GM小麦の発見は、日本や韓国などによる米国産小麦の一輸入禁止を招き、米国の小麦農家へ1億ドルの損害を与えたと見積もられている。
当初、最高100万ドルの罰金とともに、多額の賠償金の支払いを求められる可能性が指摘されていたが、今のところ罰金は科せられないようだ。
・米国農務省動植物検疫局(APHIS), 2014-9-26・Monsanto, 2014-9-26
● 新たに判明したモンタナ州の自生GM小麦
APHISはオレゴン州のGM小麦自生問題への最終結果公表に合わせて、モンタナ州立大学(MSU)の試験圃場で見つかった自生小麦が、オレゴンとは別種の、モンサントの除草剤GM小麦だったと明らかにした。自生の原因は明らかになっていない。
モンタナ州立大学によれば、同大学南部農業研究センターの2ヶ所で疑わしい自生小麦を発見し、米国農務省に7月14日に報告したという。APHISが圃場の自生小麦のサンプルを検査した結果、オレゴン州の自生GM小麦とは別種の、モンサントの除草剤耐性GM小麦であると確認したとしている。APHISは、なぜGM小麦が自生していたかを調査しているとしている。
GM小麦の見つかった試験圃場では、2000年から2003年にかけて、APHISが承認したモンサントのGM小麦の試験栽培を実施している。その後、2006年以降はテンサイと大麦の栽培に使用されたという。また、GM小麦の試験栽培の種子は販売されてはいないとしている。
新たなGM小麦自生に関しモンサントは、APHISとMSUと協力して調査にあたっているとの声明を出した。この“若干の”GM小麦の自生は、すべての証拠に基づき、流通していないと判断しているとしている。
・Montana State University, 2014-9-26・Monsanto, 2014-9-26
モンサントは1994年以降、17州で4千エーカー以上で除草剤耐性小麦について279件の試験栽培を行った。2011年に再開したGM小麦開発に関し、モンサントは2012年から、米国内の9州都プエルトリコで試験栽培を実施しているとされる。
新たにモンタナ州立大学で見つかったGM小麦自生について、食品安全センター(CFS)は26日、非GM作物とGM作物の「共存」政策は失敗であり、農民を汚染の危機にさらすものだとして、屋外での栽培試験の即時一時停止を要求する声明を出した。
・Center for Food Safty, 2014-9-26オレゴン州のケースも、モンタナ州立大学ケースも、いずれも、試験栽培の管理の不十分さが原因のように思われる。モンサントが管理体制の見直しに言及せざるを得なかったということである。言い換えれば、GM汚染の可能性が完全に否定できないということでもある。2006年のバイエルの未承認除草剤耐性イネによるGM汚染では、同社の試験圃場で栽培試験により一般種が汚染され流通していたとされている。しかし、今回の新たなGM小麦自生が試験圃場にとどまっているということもあってか、新たな輸入停止のような動きは、まだないようだ。
また、食品安全センターが指摘しているように、隣接した圃場で、従来の非GM作物とGM作物の栽培を認めようという、GM汚染の可能性が前提となる「共存」政策には無理がある。
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