

世界最大の大豆輸入国の中国は今年、米国、ブラジル、アルゼンチンから約6千9百万トンを輸入すると見込まれている。アルゼンチン産大豆の残留農薬は、WHO推奨の5倍もあり、中国は健康リスクに直面すると南華早報が報じた。アルゼンチンで生産される大豆の98%がラウンドアップ耐性GM大豆。米国の2倍の農薬使用により、ラウンドアップの主成分のグリホセートが高濃度で残留しているとしている。
世界保健機構(WHO)は、グリホセートの残留値は20ppm以下とすべきだとしている。アルゼンチンの専門家によれば、中国へ輸出されるアルゼンチン産大豆のそれは100ppmであり、今月始めに「20ppmでさえ、非常に大きい量だ」と警告したという。(日本の大豆のグリホサート残留基準は20ppm)
グリホセートには、ガンを増加させ、先天性欠損症やその他の病気との関連があるとされる。アルゼンチン当局は否定するものの、アルゼンチンのChaco地域では、GM大豆の栽培前に比べ、出生奇形は4倍に上昇したとしている。フランス・カーン大学のセラリーニ教授らの研究でも、ラウンドアップだけでも、そのホルモンかく乱作用による腫瘍が発生したと報告されている。
・南華早報, 2014-10-22世界の大豆生産量は年間約2億8千万トン。そのほとんどを米国、ブラジル、アルゼンチンで生産している。中国は1千2百万トンを生産し、不足する6千9百万トンを輸入に頼っている。世界の大豆貿易量の6割を、中国が輸入していることになる
中国は昨年来、GM食品に慎重になってきている。未承認品種の混入を理由とする米国産トウモロコシの輸入拒否は100万トン以上とされている。また、中国解放軍は、GM大豆由来の食品の排除を明らかにしている。今後、非GM大豆への流れがはっきりしてくれば、日本の非GM大豆の輸入もきびしくなる。
日本は276万トンの大豆を輸入している(2013年)。輸入先は米国、ブラジル、カナダがほとんどであり、その90%がGM大豆と見積もられている(農業生物資源研究所)。
高濃度の残留除草剤が指摘されたアルゼンチンからの輸入がないということが、安全ということではない。GM種子メーカーのパイオニア(デュポン)の資料でも、スーパー雑草は年々増えている。2,4−Dやジカンバなどの新たな除草剤が出てきているとはいえ、より多くの除草剤を使用するような状況にあることは間違いのないところだろう。除草剤耐性GM大豆の残留農薬のリスクが、日本が回避できるとは考えられない。
輸入食品の残留農薬などの基準違反について厚労省が公表している。今年度のグリホサートの基準違反はリストにはない。しかし、検査は抜き取り検査であることを考えれば、GM大豆を避ける方が確実なようだ。できるだけ国産大豆を使いたい。
・農水省, 2014-9-30・農業生物資源研究所
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