『DAYS JAPAN』11月号(10月20日発売)が「遺伝子組み換えの犠牲者たち 遺伝子組み換えのタブー」という特集を組んでいる。遺伝子組み換えの問題を写真を通して考える記事は少ない中、この特集では、モンサントの研究所内部を取材した「遺伝子組み換え作物はこうして生まれた」、インドのGMコットンと自殺の問題「インド・遺伝子組み換えコットンの悲劇」、アルゼンチンの農薬被害「アルゼンチン・農薬に蝕まれる子どもたち」の3つを取り上げている。
インドでは、2002年からの10年間で約17万人の農民が自殺している。おおよそ30分に一人が自殺していることになる。インドのワタの90%以上がGM種に取って代わられ、在来種が駆逐された。その結果、選択のすべを失った農民は、高価な種採りのできないGM種を、借金してまで買わなければならない状況に追い詰められている。インドのWTO加盟を契機としたワタの価格低迷や、水と肥料を多く必要とするGM種の栽培は、零細な農民を借金漬けにして自殺に追い込んでいる。
アルゼンチンのGM大豆栽培地域の健康被害は悲惨だ。除草剤耐性のGM大豆の大規模栽培は、ラウンドアップなどの除草剤を大量に散布し、周辺住民に、それも子供たちに重い健康被害を生じている。この事態に母親を中心として地域住民が立ち上がり、農薬反対の運動を展開している。モンサントは、アルゼンチンで年間350万袋の生産能力を持つGM種子工場を建設しようとしているが、反対運動の前にストップしている。
こうしたインドやアルゼンチンの状況を生み出しているのが、モンサントに代表されるGM種子企業だ。この特集の中でも、モンサントの研究所の内部を写真取材した記事は貴重だ。筆者のブルソン氏は2001年6月に、モンサントの取材を申し込み、米国ミズーリ州セントルイス郊外のチェスターフィールド・ビレッジ研究所の写真取材を1日だけ許可された。企業秘密にかかわる部分の多い研究所内部の写真は、めったに公開されることはない。 この点でも貴重な写真だ。
この号には安田節子さんの「種子の独占と、自由貿易協定は日本に何をもたらすか」と題した記事が掲載されている。インドやアルゼンチンの状況の背景が簡潔にまとめられている。“種子を握るものが農業を左右する”現状がよく分かる格好の特集になっている。
この号はまた、「ヤマトシジミチョウにみる低線量被ばくの影響」と題する記事も掲載されている。琉球大学の大瀧丈二准教授らの研究グループは、福島第一原発事故で放出された放射能による低線量被ばくの影響をヤマトシジミで研究している。この研究を研究者がわかりやすく解説している。この研究で、親世代が汚染食物を食べたとしても、子世代が汚染されていない食べ物を食べることで生存率が回復したという結果は、日本の現状を考えるとき示唆に富んでいる。
『DAYS JAPAN』2014.11月号
発行 (株)デイズジャパン 定価843円
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