開発の陰にモンサントとアルボアジーン
米国ニューヨーク州立大学のアメリカグリ研究・回復プロジェクトは11月4日、クリ胴枯病に耐性のある遺伝子組み換えアメリカグリを発表した。クリの木の形成層に侵入した病原菌が作り出すシュウ酸に耐性を持つように小麦の耐シュウ酸遺伝子を組み込み、シュウ酸による形成層の枯死を防ぐというもの。小麦の遺伝子を組み込んでいるものの、グルテンを作る能力はないという。
自然環境での植え付けには米国農務省、環境保護局、食品医薬品局による承認が必要で、おおよそ5年かかるとみられている。
従来の遺伝子組み換え樹木は、切り口が褐色にならないGMリンゴ(アークティックアップル、オカナガン社)のような果樹園であるとか、パルプやバイオマス用のGMユーカリなどのように商業ベースに乗ったものであった。しかし、このGMアメリカグリは何か商業的な利益を生むというのではなく、自然環境に植え付けが予定されている。このような非商業ベースのGM樹木は、米国で初のケースという。
米国のアメリカグリは、1904年にアジアから輸入された栗材に付着していたと思われるクリ胴枯病菌により被害が広がり、わずか20年ほどでほとんど全滅したといわれる。アメリカグリ研究・回復プロジェクトは、このほぼ絶滅した米国原産のアメリカグリをGMで復活させようとしている。農務省などの承認を受けた後、1万本を植え付ける計画だとしている。
このニューヨーク州立大学のプロジェクトについて、GMユーカリに反対してきた地球正義エコプロジェクト(Global Justice Ecology Project)は、長年にわたってモンサントと、GMユーカリの開発企業であるアルボアジーン社が関与していると指摘する。GMアメリカグリを通して、GM樹木、ひいてはGMユーカリが有益なものであると信じ込ませるための道具として使われようとしているという。GMユーカリなどのGM樹木の商業栽培のドアを開ける広報戦略の一部だとしている。
もう一つの問題として、このGMアメリカグリが屋外で栽培された場合、自然環境で生き残ったアメリカグリへの遺伝子汚染が引き起こされ、生き残っていた数少ない本来のアメリカグリの絶滅する可能性が指摘されている。「回復プロジェクト」が、本来の種にとっては「絶滅プロジェクト」になりうる。
このGMアメリカグリの技術は、バイオマス資源としてのポプラの病害対策にも有効だとされている。GMアメリカグリが非商業ベースの絶滅種回復プロジェクトであったとしても、商業ベースでの開発も視野に入れることが可能な開発プロジェクトであるいうことになる。地球正義エコプロジェクトが指摘しているように、モンサントやアルボアジーン社の関与は「欲得づく」とみるべきだろう。
・Science Daily, 2014-11-6
・Washington Post, 2014-11-20
・Global Justice Ecology Project's, 2014-11-27
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