開発の陰にモンサントとアルボアジーン
米国ニューヨーク州立大学のアメリカグリ研究・回復プロジェクトは11月4日、クリ胴枯病に耐性のある遺伝子組み換えアメリカグリを発表した。クリの木の形成層に侵入した病原菌が作り出すシュウ酸に耐性を持つように小麦の耐シュウ酸遺伝子を組み込み、シュウ酸による形成層の枯死を防ぐというもの。小麦の遺伝子を組み込んでいるものの、グルテンを作る能力はないという。
欧州特許庁はこのほど、モンサントの従来育種による灰色かび病耐性トマトに対する特許を取り消した。種子特許に反対する国際的な団体 No Patents on Seedsなどが今年5月、遺伝資源の海賊行為(バイオパイラシー)として取り消しを求める要請書を提出していた。
農水省は回収を指示
農水省は12月25日、中国から輸入された市販のワタの種子にモンサントの遺伝子組み換えワタの種子が混入していたとして、販売していたカネコ種苗などに回収を指示したと発表した。GMワタは国内での栽培は認められていないが、仮に栽培されたとしても、日本の「生物多様性への影響が生ずるおそれはないと考えられる」としている。しかし、個人や小さなグループによる栽培種子が汚染されているかもしれないという懸念が残る。
米国アーカンソー大学はこのほど、翌年以降も自由に使用できる除草剤ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えダイズを開発し公開した。これは、モンサントのラウンドアップ耐性GMダイズの特許切れを受けたもので、世界初のオープンソースGM種子となる。
遺伝子組み換えの混入ゼロのオーストラリアの有機基準がEU並みに0.9%のGM汚染を認める方向に動きそうだ。西オーストラリア州の有機農家の認証が隣接農家のGMナタネ汚染により取り消されたことも契機となった。
EU議会は12月3日、加盟各国が遺伝子組み換え作物栽培の規制・禁止を決定できるとするEU指令の改正で合意した。来年1月の本議会で議決される模様だ。これまではEU一律の規制で、これによりGM作物承認が進むとの見方もでている。
カナダ・オンタリオ州は11月25日、ミツバチ保護を目的としたネオニコチノイド系農薬の使用削減規制を発表した。ネオニコ系農薬で種子処理されたコーンとダイズの播種面積を2017年までに80%減少させ、2013年から2014年に58%あったミツバチ死亡率を、2020年までに15%へ減少させることを目標としている。
アクト・ビヨンド・トラストは5日から、ネオニコ系農薬に関する活動に対する助成の公募を始めた。この助成は、フィプロニルを含むネオニコ系農薬に関する問題提起や、その使用の削減や中止に取り組む個人・団体への活動に対するもので、総額300万円が準備されている。締切りは1月26日。アクト・ビヨンド・トラストは、2012年から毎年、ネオニコ系農薬に対する活動助成を行っていて、今回の募集で4回目となる。
ノルウェーはこのほど、抗生物質耐性マーカー遺伝子を含む遺伝子組み換え飼料について、サケなどの養殖用飼料としての承認停止を決定した。この決定は、GM飼料に含まれる抗生物質耐性遺伝子が細菌に取り込まれ、抗生物質耐性菌が生まれることへの懸念から行われたとしている。EUでは毎年2万5千人が、抗生物質耐性菌による感染症で死亡しているという。
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