
変化が求められる日本

グリーンピースは4月8日、参議院議員会館で記者会見を開き、「No Bee, No Food」をキャッチフレーズに、食べ物の安全、子どもの健康やミツバチなど花粉媒介生物を農薬の影響から守る法律「子ども・ミツバチ保護法」の制定と、生態系に調和した農業の価値評価・支援強化を求める署名運動の開始を発表した。10月までに集まった署名は、国会議員に提出し、議員立法での制定を求めていくという。
グリーンピースの関根彩子さん(食と農業問題担当)は、「これまでの規制緩和反対のパブコメへの呼びかけ、規制強化を求める署名や行政交渉を行ってきた。しかし、食の安全や安定供給の問題と、子供の健康やミツバチ被害の問題が、縦割り行政の中でバラバラに扱われ、たらい回しになっている。全体的な視点での対策が取られてこなかった」として、「ネオニコチノイドが引き起こしている一連の問題を、総合的な取り組みで解決できる新たな枠組みを求める署名に取り組む」としている。
● ネオニコ規制が進む欧州

来日中のグリーンピース・スイスの食と農業問題担当のマティアス・ヴトリッヒさんは、欧州や米国で進むネオニコ規制の状況を説明し、日本も変化が求められていると指摘した。
EUによるクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの3種類のネオニコ系農薬禁止は、禁止範囲が限定的なところがあるが、グリーンピースは最初の一歩として歓迎しているとした。しかし、使用が認められている温室周辺の小川では、そのまま農薬として散布できるくらい高濃度で汚染されている現状があり、今後禁止範囲の拡大を期待したいとも述べた。
さらに、EUのネオニコ系農薬の禁止は、2年の間に再評価を行うというだけで、いつまでというの期限が切られていないこと、また、欧州食品安全機関(EFSA)による再評価の資料収集が進んでいないことを考えると、15年12月以降も禁止が継続されるだろうとの見通しを述べた。
● 「米国は変わる」というシグナル
ヴトリッヒさんはまた、米国環境保護庁(EPA)が4月2日に発表したネオニコ系農薬の新規登録の凍結について、予防原則に立った「米国は変わる」という明確なシグナルだろうと指摘した。米国の環境保護団体なども、2日のEPAの発表は、花粉媒介生物の健康に関する特別委員会がより広範な勧告を出す兆候かもしれないとみている。この点でも、日本の農薬行政は世界的な流れを読み誤っている。
この「子ども・ミツバチ保護法」の制定について福島みずほ参議院議員は、「消費者担当大臣のときに、ネオニコチノイド農薬を禁止できないかと努力したが、残念ながら成功しなかった。この法案作成を含め、市民の皆さんとやっていきたい」と述べた。
・グリーンピース, 2015-4-8cc. 農林水産大臣
厚生労働省大臣
いま、世界そして日本で、花粉を運び、農業生産を支えているミツバチなどの生物の減少が報告されています。
ミツバチに対して毒性の強いネオニコチノイド系農薬は、ヨーロッパでは使用が一時的に中止され、韓国やアメリカでも規制がはじまりました。この農薬は、環境に長く残留して土壌、水、そして野生生物へ悪影響をおよぼす可能性だけではなく、子どもの脳や神経の発達にも影響を与える恐れが科学者によって指摘されています。
しかし日本では、ネオニコチノイド系農薬の使用の拡大や残留基準の緩和がすすめられており、ミツバチや子どもの健康そして安全な食を十分に守ることができていません。
よって、わたしたちは、以下のことを求めます。
【署名内の要請項目】
・グリーンピース, 2015-4-8
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