米国で約1800店舗を展開する大手ホームセンターのロウズは4月9日、全ての商品から4年以内に生産者と共同で、ネオニコ系農薬を段階的に排除するとCSRレポートで宣言した。この宣言の背景には、FoE(Friends of Earth)などの環境保護団体のキャンペーン、100万人の署名、社会的責任投資を掲げる2つの投資顧問会社による提案などがあったという。
ロウズは、これまでミツバチなどの授粉媒介生物の健康に関する研究を注視してきたが、いくつかの研究は、ネオニコ系農薬がミツバチなどの健康ダメージの要因である場合があることを示しているとして、同社の商品を期的に見直し、ポリネーターの健康に関係する次のような活動に取り組むことを約束する、とした。
- 48ヶ月以内にネオニコ農薬を含む製品の販売を段階的に廃止する。
- 販売するミツバチの好む植物に対して、ネオニコ農薬の使用を排除するよう生産者と共に取り組む。
- 生物的管理プログラムの使用を生産者に奨励する。
- 店舗内のパンフレット、データ表、製品表示などを通して、顧客と従業員に情報を提供する。
- 関係する情報をウェブサイトで提供する。
- 自然保護団体にポリネーター・ガーデンの資金を提供する。
このネオニコ排除は、段階的とはいえ総合的病害虫管理(IPM)を導入して、生産者と共に取り組むという姿勢は評価できる。
・FoE, 2015-4-9 ・Lowe's Companies, Inc. , 2015-4-9 ・Reuters, 2015-4-9自然保護団体などの調査で昨年6月、米国やカナダのホームセンターで販売される苗などの51%から、ネオニコ系農薬が検出されていた。
・FoE, 2014-6-25ホームセンターの販売苗にまでネオニコ排除の動きがでてきているように、欧米でネオニコ系農薬の規制強化がより鮮明になってきている。そのことは歓迎すべきことだが、こうした規制によりネオニコ系農薬が、規制が弱かったり実質的に規制のない国へと流れることによる環境汚染や健康被害が懸念される。
● 日本:食用のタネや苗には表示義務 観賞用は表示不要
日本のホームセンターで売られている野菜の種子や苗などには、農薬取締法で使用した農薬の表示が義務付けられている。表示は、食用に限定されていて、観賞用の花木類には適用されていない。
昨年あたりから、一部のホームセンターで「農薬不使用」を強調した家庭菜園用の野菜苗や種子が販売されるようになってきている。こうした動きの広がりに期待したい。
食用の野菜は当然だが、ハチや蝶などの花粉を媒介する昆虫の集まる観賞用の花木のきれいな花に、棘(とげ)ならぬ毒があるのはいただけない。
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