
モンサントとシンジェンタのGMコーンを承認
ベトナム農業・農村開発省は3月18日、モンサントの関連会社であるデカルブ・ベトナム社と、シンジェンタの現地法人であるシンジェンタ・ベトナム社に、害虫抵抗性・除草剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシの商業栽培を承認した。シンジェンタは近く、デカルブ(モンサント)は今年末から種子の供給を開始するとしている。いずれも飼料用である。
当局の承認を受けてシンジェンタは、害虫抵抗性のGMトウモロコシBt11と、除草剤グリホサート(ラウンドアップ)耐性GA21のスタック品種の栽培が承認され、今シーズンからGM種子が利用できると発表した。
この商業栽培が承認された遺伝子組み換えトウモロコシは多収量を売りにしているが、指定された特定の除草剤だけを使う契約であり、種子会社に依存する内容だという。その結果、ベトナム国内のハイブリッド・トウモロコシは打撃を受け壊滅の予想もあるとしている。当然、除草剤の過剰使用による健康被害も予想される。
● 急展開を図るベトナムのGM栽培
豚肉需要の急増するベトナムでは、飼料の供給が問題となっていた。2014年には、飼料用に350万トンの大豆粕と480万トンのトウモロコシを、米国やブラジル、アルゼンチンなどから輸入している。その多くは遺伝子組み換えと見られている。
詳細は明らかでないが、農業・農村開発省は2015年よりGM作物の商業栽培を始め、2020年までに農地の30〜50%に拡大するという計画を明らかにしていた。この計画に先立ち2014年8月、デカルブ(モンサント)とシンジェンタの4種類のGMトウモロコシについて、食品と飼料として承認した。10月には、新たに2種類のGMトウモロコシのバイオセーフティ証明書を交付していた。
● 表示制度は手付かず
こうした急激なGM化は、規制が不備のまま進められている。輸入飼料用大豆の一部が食用に転用されて、食用油と豆乳に加工、販売されているとされる。しかし、ベトナムではGM表示制度はまだなく、政府当局は遺伝子組み換え食品表示制度の準備はできているとするも、現状は野放しである。一部の食品業者は非GM証明を要求したり、業者の選定に慎重を期すなど自衛策をとっているという。
また、関係者の中には、GMトウモロコシの商業栽培開始により、欧州や日本向けの養殖エビの販売への影響を指摘する声もでているという。 ・Tuoi Tre News, 2015-4-4
・Syngenta, 2015-3-17 ・Tuoi Tre News, 2015-4-4数年前にメコン川流域を視察した人の話では、ベトナムの隣国カンボジアのメコン川流域では、ベトナム資本による飼料用作物栽培が行われているといわれている。ベトナムでの遺伝子組み換えトウモロコシの商業栽培は、カンボジアへ飛び火の可能性もあるのではないか。