米国大統領に貿易交渉の権限を与えるTPA法案が、4月17日に米国議会に上程された。この法案の農業関連条項は2014年の法案とまったく同じであることが分かった。遺伝子組み換え表示についても「表示のような不当な貿易制限」と、わざわざ例示している。一昨年来、TPP交渉を巡って産経新聞が「TPP交渉、米が遺伝子組み換え表示を容認 「食の安全」への懸念払拭」と報じ、NHKも「TPP食品安全基準緩和 議論対象とならず」と報じていた。
TPA法案のうち、農業関係は(3)項「農業貿易」としてまとめられている。GM表示に言及してる部分は、(I)項で「不当な米国の市場参入機会の制限や米国の農業市場をゆがめるような諸手続を撤廃するためのルールを設定、強化、明確にする」して、その(ii)項「バイオ技術を含む新技術に影響を及ぼす、表示のような不当な貿易制限や商業上の要件を含む」と明示している。この条項について、昨年の参院予算委員会で紙智子議員(共産党)が質問したが、GM表示の交渉内容に、安倍首相は明確に答弁しなかった。
・2015年TPA法案 ・2014年TPA法案米韓FTAや、米国−EU環大西洋貿易投資パートナーシップの交渉からは、米国はGM表示に手を突っ込んできていないようにも見える。
2012年3月に発効した米韓FTA(米韓自由貿易協定)でも、GM表示を含む食品の安全規制が米国並みの骨抜きになったのではないかといった懸念があった。韓国食品医薬品安全処は今年1月、市民団体や野党の「GMO完全表示制度」の要求を政府が一部受け入れ、全成分表示の義務化の方針を明らかにした。
・ハンギョレ, 2015-1-26米国とEUで進められている環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)交渉に関し、EU委員のフィル・ホーガン氏が 「GM表示は影響を受けない」と明言したと報じられた。GMのみならず牛成長ホルモンなど食の安全に慎重な姿勢のEUが、簡単に米国に妥協するとは思えないが、TTIPに反対する欧州の市民団体は警戒を捨ててはいない。
・Euractiv.com, 2015-1-16米国がGM表示に手を突っ込んできていないようにも見えるからといって、安易に楽観はできない。TTPには、米国内でも反対が強くなっているともいわれている。農業が大打撃を受け、食料主権がズタズタにされるようなTTPには反対だ。
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