最終更新日:2015年05月04日
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2015.05.04 No.664
■モンサント 農薬世界最大手のシンジェンタ買収に動く  種苗寡占化を加速
種苗シェア トップ10(2011年)
種苗シェア トップ10(2011年)

 モンサントがシンジェンタの買収に動いていると、ブルームバーグが4月30日に報じた。匿名の関係者の話として、数週間にわたり両者が協議したとしている。種苗と農薬で1位同士の「統合」は独禁法でご破算になる可能性があり、その点をシンジェンタが懸念しているとしている。両社ともコメントしていない。関係国による独禁法の壁を乗り越えたとしても、両社の「統合」は、農業分野での支配力がより強大になるだけで、良い結果をもたらすことはない。

農薬シェア トップ10(2011年)
農薬シェア トップ10(2011年)

 シンジェンタは世界最大の農薬メーカーで、モンサントは種子では世界最大で、遺伝子組み換え作物では支配的な地位にある。買収が成功した場合のシェアは、種苗で約35%、農薬が約30%となり、2つの分野で世界最大となる。


 種苗・農薬シェア(2011年)( )内は売上高[百万ドル]
種  苗 農  薬
モンサント 26.0%( 8,953) 7.4%( 3,240)
シンジェンタ 9.2%( 3,185) 23.1%(10,162)
 合 計 35.2%(12,138) 30.5%(13,402)

 モンサントは昨年にも、シンジェンタ買収に動いたとされた。予備交渉でモンサントは、買収価格400億ドルを提示したが、まとまらず立ち消えとなったという。このときモンサントは、本社をスイスに移すことを提案したとも報じられた。

 ・Bloomberg, 2015-4-30  ・ブルームバーグ, 2015-5-1

 ● 進む種苗・農薬の寡占状況

 カナダのNGOのETCグループは2013年10月、種苗と農薬、化学肥料に関する報告書を公表した。これによれば、これらの業種は大手による寡占状態にある。2011年における上位3社のシェアは、種苗では約53%、農薬では約48%と、それぞれのほぼ半分を占めている。上位10社のシェアは、種苗で約75%、農薬では94%を占めている。モンサントのシンジェンタ買収が成功した場合、2011年のデータでは種苗で約35%、農薬で約30%となる。おそらく、これ以上のシェアとなることは間違いない。

 ◆種苗シェア トップ10(2011年)
売上高
[百万ドル]
シェア[%] 備 考
モンサント(米)  8,953 26.0% 1位
シンジェンタ(スイス)  3,185  9.2% 3位
デュポン・パイオニア(米)  6,261 18.2%
ビルモリン(仏)  1,670  4.8% 注1
ワイルド・フィールド(米)  1,346  3.9%
KWS(独)  1,226  3.6%
バイエル(独)  1,140  3.3%
ダウ(米)  1,074  3.1%
サカタ(日)    548  1.6%
タキイ(日)    548  1.6%
トップ 10 合計 25,951 75.3%
その他  8,512 24.7%
注1)リマグレン
 ◆農薬シェア トップ10(2011年)
売上高
[百万ドル]
シェア[%] 備 考
シンジェンタ(スイス) 10,162 23.1% 1位
モンサント(米)  3,240  7.4% 5位
バイエル(独)  7,522 17.1%
BASF(独)  5,393 12.3%
ダウ(米)  4,241  9.6%
デュポン(米)  2,900  6.6%
マクテシム・アガン
(イスラエル)
 2,691  6.1% 注1
ニューファーム(豪)  2,185  5.0% 注2
住友化学(日)  1,738  3.9%
アリスタ(日)  1,504  3.4%
トップ 10 合計 41,576 94.5%
その他  2,420  5.5%
注1)2011年10月、中国国営農薬会社が買収
注2)2010年4月、住友化学が20%の資本参加
寡占化の進む種苗市場
寡占化の進む種苗市場

 欧州委員会も種苗市場を分析した報告書“The EU seed and plant material market in perspective”を、2013年に公表している。この報告書によれば、種苗市場は急速に寡占化が進んでいることが分かる。1985年に6.8%であった上位3社のシェアは、2009年には34.7%、2012年には44.4%にまで急増し、上位5社では5割を超えている。


 ◆種苗市場のシェア推移
年度 トップ3 トップ5 モンサント

シンジェンタ
1985  6.8%  8.9% -
1996 10.2% 13.0% -
2009 34.7% 39.7% 23.5%
2012 44.4% 51.7% 29.9%
出典:EU, 2013-11 "The EU seed and plant material market in perspective: A forcus on companies and market shares" "Table 6: Evolution of the market share of the biggest seed companies in the world" より作成

 モンサントは種苗企業の買収によりそのシェアを大きくしてきた。モンサントは、2005年に野菜種子大手のセミニスを14億ドルで買収したように、遺伝子組み換えではない従来育種の種子企業を買収することで、その支配力を増してきた。フィル・ハワード博士(ミシガン州立大学)による種苗企業の支配関係の分析によれば、モンサントの直接の子会社は77社を数える。

 ・Phil Howard, 2013

 大手種苗企業による企業買収では、この数年、アフリカの種子企業の買収や資本参加が目に付く。2012年、デュポン参加のGMトウモロコシ企業パイオニアが、南アフリカ最後の独立系種苗会社Pannar seedを買収した。2013年には、シンジェンタがザンビアのMRI Seedsを買収した。2014年には、フランスの大手種苗企業リマグレンが、ザンビアを中心にアフリカ南部をカバーしている種子企業SeedCoに資本参加(28%)した。モンサントが資本参加し、インドにおけるモンサントの代理人と異名のあるマヒコも、アフリカで唯一のワタ種子企業Qutonの49%をSeedCoから買収している。このようにして、ローカルな種子企業が買収され、モンサントのような大手種子企業の傘下に組み込まれていく流れが止まることがないように見える。

 日本では2007年、みかど協和がリマグレンに買収され、その傘下に入っている。世界的な種苗企業による日本の種苗企業の買収もないとはいえない。

 こうした種苗業界の寡占化の進展は、企業による農業=食料への支配力を強めることは言うまでもなく、野菜の品種が100年間で93%を失ったとされる米国のように、品種の多様性を減少させ、病害虫や気候変動への対応性を減らすことにつながりかねない危ない道でもある。