EU委員会は4月22日、EUの承認した遺伝子組み換え食品と飼料について、加盟国が自由に禁止や制限を決められるとする提案を行った。3月のGM作物栽培の自由を加盟国に与えるGM規制指令の改正を受けたもの。この提案により、停滞しているGM食品や飼料の承認作業を促進する狙いがあるようにもみえる。
ロイターによれば、米国とEUの貿易・投資パートナーシップ(TTIP)交渉で遺伝子組み換え作物の拡大を目論んでいる米国のフロマン通商代表は、EUという単一市場を28に分割するものとして失望を表明したとしている。
グリーンピースはこの提案に、遺伝子組み換え作物の流通拡大に門戸を開くもの、とするコメントを明らかにした。
GM食品の安全審査や承認を、これまで通りEUが行うとはいうもの、GM作物・食品に関しては、加盟各国の政策の違いにより共通政策を維持できなくなったということだ。GM反対のフランスなどは、GM規制の障壁がなくなることになる。その一方で、EUの承認作業が進展すれば、GM推進の英国などはGM食品の流通を増やすことが可能になる。
・European Commission, 2015-4-22 ・Greenpeace, April 24, 2015 ・Reuters, 2015-4-22EU理事会は3月2日、1月のEU議会の議決を受けて、GM作物栽培の可否を加盟各国の裁量に任せるという新たなEU指令を決めている。モンサントは昨年、GM作物栽培の申請を取り下げたが、シンジェンタやパイオニアなどの申請は残っている。
このEU指令の改正により、各国政府に対し栽培許可を求めるGM企業の圧力が強まると見られている。EU域内でのGM作物栽培の拡大を危惧した欧州緑の党は、EU議会の議決で反対し、FoE(大地の友)は全てのEU加盟国でGM栽培禁止を要求していた。
・Council of the European Union, 2015-3-2 ・Friend of Earth, 2015-3-2EUはモンサントの遺伝子組み換えトウモロコシ1品種のみの栽培を承認し、スペインなどEU加盟5カ国の約15万ヘクタールで栽培されている。EUはまた、GM食品・飼料として58品種を承認している。2013年には、飼料用として3200万トンの大豆と大豆ミールを輸入し、その90%がGM品種だとしている。
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