米国環境保護庁(EPA)は5月28日、ネオニコ系農薬を含む農薬76種について、商業的な契約ミツバチによる受粉時期に限定して農薬使用を地域的に規制する“農薬フリーゾーン”を提案した。パブリックコメントを経た後、実施は2016年春と見込まれている。早々に根本的な対応でないとの批判も出ている。
EPAの提案は、アセタミプリド、イミダクロプリド、チアメトキサムなどのネオニコ系農薬と、フィプロニル、エチプロールなどの浸透性農薬を含む76種類の農薬が対象だが、モンサントのラウンドアップの主成分であるグリホサートは含まれていない。
EPAの提案による規制は限定的だ。規制されるのは受粉期の葉面散布だけであり、長期的に影響の大きい種子処理や家庭での使用は除外されている。この規制が適用される農地は80万〜100万ヘクタールと見込まれている。
・EPA, 2015-5-28 ・EPA, 2015-5-29 ・AP, 2015-5-28 ・Reuters, 2015-5-28かねてよりネオニコ系農薬の規制強化を求めてきた食品安全センターは28日、EPAの提案からコーンや大豆の種子処理が除外されていることを指摘し、ネオニコ系農薬の問題を無視しているとする声明を発表した。授粉媒介生物(ポリネーター)を保護するインパクトのある規制を望むとした。
米国の環境保護団体の一つ生物多様性センターは声明を発表し、「重要な第一歩でよいニュースだ。米国の4000万ヘクタール以上の農地がミツバチを殺しているネオニコチノイド系の農薬で“びしょ濡れ”になっている。EPAは、すぐにネオニコチノイド系農薬を禁止する必要がある」としている。
一方、昆虫学者の中には、「理想的ではないとしても、この120年で最高のニュース。大きな政策転換」とする評価もでている。確かに、EPAが一時的とはいえネオニコ系農薬の使用を禁止するのは初めてのこと。しかし、EPAは昨年10月、大豆の種子をネオニコ系農薬で処理したとしても生産者の経済的利益はわずかほとんどないとする評価を明らかにしているが、今回の提案では大豆の種子処理には適用されないなど、中途半端な内容に終わっている。
・Center for Food Safety, 2015-5-28 ・Center for Biological Diversity, 2015-5-28米国大統領によるタスクフォースの対応策が発表されたのが5月19日。五月雨式にこうした対策が出てくるのは、表面的に取り繕っているようにも見える。とはいっても、規制強化とは逆に、ネオニコ系規制緩和に動いている日本からみれば「革命的」なものかもしれない。農水省は、ネオニコ系農薬が水稲栽培に必要として、その使用継続に必死になっている。
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