グリーンピース・ジャパンは7月7日、全国の私立幼稚園を対象に、無農薬食材の給食に関するアンケート結果をまとめた冊子『ハッピーランチガイド』(関東地方版)を発表した。このガイドは、全国の私立幼稚園を対象にした、農農薬の安全な給食の導入に関するアンケートを取りまとめたもの。有機給食を実施しているエイビイシイ保育園(東京都新宿区)と、消費者参加型の有機農場・なないろ畑農場(神奈川県大和市)の事例も合わせて掲載している。グリーンピースは、幼稚園などで無農薬の食材を使った給食を導入することで、農薬リスクに弱い子どもたちに安全な食を提供するとともに、有機農業や自然農法などの農薬を使わない「生態系農業」を拡大につなげていきたいとしている。
グリーンピースは全国約8千の私立幼稚園に対して、子どもたちに提供している給食の安全安心性について、食材の放射能検査や素材の調達などの9項目について、今年て3月から4月にかけてアンケートを行い、1037件の有効回答を得たとしている。このうち関東地方の回答331件を分析し、結果をまとめ公表した。
アンケートのまとめによれば、給食の安全や安心について約8割の園が配慮していると回答。食物アレルギーに取り組んでいるのは、約75%の園。食材の放射能検査や食品添加物、遺伝子組み換え食品への配慮は約6割前後。国産や地元の食材を積極的に使っているのは約45%。無農薬食材をほぼ100%使っている園は13.6%の46園、一部導入を含めても約6割にとどまっている。約7割が将来的に無農薬食材を使いとしているが、費用面での懸念が、導入の壁になっていることをうかがわせる結果となっている。ガイドでは、ほぼ100%無農薬食材を使っている46園と、将来的に無農薬食材を使いたいとする230園のリストもまとめられている。グリーンピースは今後、関東地方以外でもエリア別に取りまとめ、各地で発表していきたいとしている。このリストを、幼稚園選びの参考や、子ども通う幼稚園の給食を考えるきっかけにしてほしいともしている。
記者会見では、エイビイシイ保育園の片野清美園長と片野仁志理事長が、素材から調味料まで有機食材を使った給食の取り組みを語った。この有機給食は、2002年にお米から始めたが、しばらくして、風邪を引く子どもが少なくなったことに気が付いたという。その後、徐々に有機の食材を増やし、現在では米、野菜、果物、肉、牛乳まで有機に切り替え、生産者から直接送ってもらっていて、魚も国産の天然ものを使っているという。その結果、子供の病気も少なくなり、健康な子供が多く、保護者にも好評だという。
片野理事長は、まず、生産者を訪ね、現場を見て、よく話を聞いてから決めるという。「産直」のように、生産者から直接納入してもらうことで、そんなにコストはかからないし、生産者にも利点がある。徐々に始めることと、トップの考え方が大事だと語った。
神奈川県大和市で有機農法によるCSA農場・なないろ畑農場を運営する片柳義春さんは、「地域支援型農業」といわれてきたCSAは、実は「消費者参加型農業」であるという。なないろ畑農場は、会員の消費者とともに、化学農薬を使わない「生態系農業」を実践している。大規模農業ではなく、なないろ畑農場のような消費者参加型のCSA農場が全国各地にあって、それぞれが有機的につながることが目標の一つだと語った。
有機生産者と直接つながるエイビイシイ保育園の取り組みは、幼稚園・保育園が無農薬食材の導入で懸念する、コストアップを抑える一つの方法であることを示している。
『ハッピーランチガイド』は、グリーンピースジャパンのサイトで閲覧、ダウンロードできる。
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